naked heavy moon

双葉紫明

第1話

 今夜は月が重たい。わたしがそう感じるだけなのだろうか?スーパームーン。次は八月二十日。前に見たそれは、もう夜空から落ちてしまいそうに紅く重たく沈んでた。次にそんな月を見る時、わたしはどうなってるんだろう?

 

 あのひとと。それより、わたし自身。


 わたしたちは付き合っているんだろうか?まるで朔みたいな真っ黒な闇から、あのひとが半月になるまでわたしは反対側に居て、その面積をちいさく押しやられる。あのひとの望月に、わたしは月の裏側。次の朔から今度はわたしが少しずつ姿を現す時には、あのひとが反対側。

仕返しってわけじゃないのだけれど、同じ望月にはいつも居ない。

 それをあと何回か繰り返したら八月になる。


 あの重さは、紅さはいったいなあに?


 あれはひょっとしたらふたりもつれて燃え上がって、地上に落ちようとしてるんじゃないだろうか?前の重たい月の時、わたしたちふたり、そこに居た様な気がするんだ。


 思い出す。きっと月に狂ったふたり、めちゃめちゃに愛しあった。限られた時間。思いっきり貪られて、何度も果てて、わたしの上で重たくなるあのひと。わたしはその重さを心地良く受け止めて、眠りたかった。ずっと眠りたかった。

 あ、そんな気持ちがあったんだ。そうか、わたしじゃないんだ。どちらかというと、わたしはおひさま。月はあのひとだ。あのひとが起きてる間、わたしは眠ってる。

 それならあのひと、八月になったらまた重たくなって、わたしのとこまで落ちて重なるのだろうか?焼き尽くされるのも知らないで。

 もしかしたら、知ってて。知りながら。


 そんな事を考えた午前五時、思いつきであのひとにスタンプ送る。今、月はどんなだろう?

お布団の中、外は雨音。どうせ見えないわ。


 「好きだよ」


 どうする事も出来ない、そんな重みの無い返信。わたしは朝の支度にお布団から這い出る。

カーテンを明けると、空はもう白かった。

 曇り空、わたしもあのひとも居ない。


 おやすみ、またいつか。

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