第93話 ペット


 ナーガ君、ティガさん、レウスとの一泊二日のミリエラ鉱山ダンジョンは、10階に到達したとこで、ボスには挑戦せずに、帰還した。

 焦って攻略する必要もないのと、全員揃ってからの方が良いという結論。

 ボスと戦うにしても、ナーガ君に頼り切りになるよりは、「強くなってからがいい」とレウスが言い出したのもある。


 ナーガ君とシマオウがいれば、最悪、ティガさんの盾の後ろに隠れているだけで、なんとかなりそうな気はするけど……それでは、楽しくないのだろう。レウスは、そういうところが素直だ。



 鉱山から帰ってきてからは、ティガさんがアルス君と話に行ったらしい。

 どんな話をしたのか、全く聞いていない。その後は、ナーガ君とレウスとアルス君の3人を引率して、西の丘や緑の沼などに採取に出かけている。


 そして、ここで発覚したのが、ナーガ君が新しく〈テイム〉でペットにした大きなウサギ二匹。


 どちらのウサギも灰色だが、口元と耳の部分が濃い灰色になっている方がキャロ。首周りだけ色が濃くなっているのがロット。

 兄さんからも飼っていることは聞いていたけど、直接会うのは初めてだった。


 しかし!! 

 こいつら、私の百々草を食べてしまう! 


 町の外で私が採取をしていると、ナーガ君達が西の丘に行く前だった。ウサギに乗っていた状態で声をかけてきたのだけど……採取していた百々草をウサギがもしゃっと食べ始めた。


「あ~!!」

「……す、すまん、キャロ、ロット、ダメだ」


 二匹で私が採取して、山にしていた百々草を平らげてしまったのだ。

 ぷぅぷぅと可愛く鳴いているけど、私の百々草が……。


 そこら辺に生えている草に見向きもせずに、私の百々草の先を咥え、少し振って土を落としてから食べている……。草と根の丁度狭間の部分に魔力貯まるからね……そこが美味しいのだろう、きっと。


 だが、私が苦労して掘り出しているのに……。


「ナーガ君。そのウサギ、要らないんじゃないかな」

「……移動に便利だ。餌代もかからない……」

「別にモモ達も餌代はかかってないよ。大きいからギルドに預けるのにお金がかかってるよ」


 ペットの世話は自己責任でしてもらう。モモも基本は自分で餌を狩ってる。

 テイマーギルドで預かってもらう費用をナーガ君が出していたから、文句は言わなかったけど……仕事の邪魔をするなら、話は別だ。

 シマオウについては、私にも責任があるから預け費用を出しているけど……。


「ちゃんと言い聞かせる……」


 いや、ナーガ君の話を聞かずに、もしゃもしゃ食べてるじゃん!

 しかも……そのウサギ、大きすぎない? 人が乗れるサイズ……なんだろ、モン○ンで見たことあるな……意外と素早いウサギ。爪とかは長くないから、凶悪では無さそうだけど……。


 鞍を付けていても嫌がっていないし、多分、4人で乗っていくつもりなんだろうけど……その前に餌休憩ってこと?


「……これ以上は増やさないでね?」

「……許可とってからにする」


 増やさないと約束はしないのか!

 ティガさんは聞いてないふりしてる。絶対聞こえてるよね? レウスは「ほら」と言って、新しく百々草を掘り出してあげてるし……私が欲しいのに、なんで餌としてあげてるのかな?



「えっと、手伝った方がいいかな? 掘り出すの?」


 アルス君が戸惑いながら、私に確認を取ってきた。

 うん、ありがたいけど手伝ってもらっても、そのままこのウサギが食べてしまうから、さっさとこの場から立ち去って欲しい。


「いや、いいよ……また必要な分を採取するから。いってらっしゃい」


 もう、そのウサギが近くにいると採取出来ないから、さっさと目的地に向かえとナーガ君に視線を送る。

 私の大切な百々草が……モモも勝手にヤコッコを狩って食べ始めてるし……餌の時間じゃないのに。


「……すまん。行ってくる……こいつに〈採取〉と〈解体〉覚えてもらう予定だ」


 まずはアルス君に〈採取〉、〈解体〉などが出来るようになるようにする予定らしい。ティガさんもまだ覚えていないけど……まあ、そのうち覚えるってことかな。まずは、やり方を教えるということだろう。


 一応、冒険者のスタンダードでは覚えていない人が多いと伝えた。でも、私との関係では必須項目という認識らしい。ナーガ君の主張に反対がなかったので、まずは覚えるためにやってみるということになったらしい。


 別に、強制するつもりではなかったけど……それについては、ごめんなさい。



 夜、帰ってきた4人に採取した物は適正価格で買い取ると言ったところ、薬やポーションを作って、渡すことになり、お金のやり取りは基本しないことになった。

 兄さん達が帰ってくるまでは、このまま採取と討伐をしてみるらしい。


 近場に行くというので、緑の沼だけ、沼にいる魔物が危険な可能性があることだけ伝えておいた。

 冒険者ギルドに問い合わせをしたが、レオニスさんには首を傾げられた。そんな危険な魔物はいないとのこと……う~ん。絶対に何かいると思うのだけど……。



「みんなの分の薬とポーション作るね」

「……駄目だ」


 沢山作っておこうとしたが、ナーガ君に22時以降の作業禁止が言い渡された。破ると、兄さんとティガさんに言い付け、叱ってもらうと言われたので、その日の作業は早めに切り上げることになった。


 ナーガ君も、私が調合とか錬金する間は、クラフトすることも多く、結局、会話は少ない。まあ、居心地が悪いとかではないので、問題はないのだけど。



 ナーガ君が他のメンバーと出掛けている間は、私の方は〈調合〉と〈錬金〉しつつ、あとは片っ端から本を読んで知識を習得中。

 特に魔法知識……。私の場合、魔法適正は高く、どの属性も使えるので、体系としてどんな魔法があるかだけでも覚えておくのが良いと考え、属性魔法について調べる。


 冒険者ギルドの2階にある図書館で調べるんだけど……あまり、資料がない。結局、魔法使いの先輩冒険者達にお酒を奢ったりして、情報を得ようとして……ティガさんに見つかって叱られた。

 子どもが酒場に入るなと……いや、見た目は子どもだけど、この世界ではお酒飲んでいいことになっている。さらに、中身はいい大人……まあ、ダメと頑なに認めないと言われてしまった。


 諦めて、女性冒険者がよく使ってる宿に行き、そちらで情報交換。この後、スタンピードが起きた時に準備不足にはならないようにということで、丁寧に教えてもらえました。魔法についての情報はなかなか集まらなかったけどね。



 そして、3日後に兄さんとクロウが戻ってきて、ティガさんが数日間のアルス君のことを報告して、正式に7人パーティーになった。アルス君の方は戸惑っているが、概ね反対はなかった。


 とりあえず、男6人、一泊二日で腕試しをしてくる出掛けて行った。私も誘われたけど、兄さん達が帰ってきたのなら、師匠も帰ってきている。

 色々と気になっている部分もあるので、教えてもらいたいので、兄さんのお誘いはお断りした。


 ちなみに、移動についてもシマオウとウサギ2匹で、長距離でも問題がなく、国境山脈へと行っていたらしい。

 そこで、レウスが「7人だから、もう一匹移動用が必要!」と言い出したのを、ティガさんが叱ってくれたことには感謝しかない。ペット問題は結構深刻な気がする。


 兄さんも「動物とは触れ合えなかった」とか言って、ナーガ君のことを本気で止めようとしない。

モモを肩に乗せるの結構好きみたいで、「来るかい?」と言って、モモを肩に乗せてることが多い。

 ウサギ二匹とシマオウは、テイマーギルドで預かってくれるけど、タダじゃないからね。移動に便利でも、増やすのは良くないのだけど……。


 まあ、ペット問題は今後の課題。モモだって、拾った頃より大きくなってきたので……考えないといけない。


 そんなこんなで、6人が出掛けていくのを見送り、家で師匠たちが来るのを待っていたわけだが……客が来てしまった。


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