婚約破棄された公爵令嬢に娶られることになりました

 雨が降っていた。しとしとと弱い雨が煙るように降っていた。なので買い込んだ食料を抱えて頭から外套を被り、小走りで家へと向かっていた。

 そんな中で近道をするか迷って足を止めて路地裏を覗き込んだら、暗がりになるかならないかのところで獣がいた。ヒグマくらいの大きさでオオカミにライオンの鬣を着けたような、元の色が分からないくらいにまで雨と泥で汚れた獣が倒れていた。


 こんな弱い雨で、泥の少ない街中で、あんなに汚れて息も絶え絶えな程に弱っている。


──ああ、誰かの共命獣か。


 この世界では人間と命を共にする獣の姿をした存在が信じられている。つまりあの倒れている獣は誰かの命そのもので、要するに誰かが死にかけている。そしてその命が見えない人と見える人とがいて、大抵の人は見ることが出来ず、少ない見える人は獣の持つ特殊な力を借りることが出来る。俺も一応はその見える方の人間、要するにあの倒れている誰かの命を助ける力がある、ということだった。


──……面倒事の気配がする


 あれほどまでに大きな獣だ、さぞや影響力か生命力、あるいは権力や財力、とにかく何かしらの力が強い誰かの命に他ならない。そしてそんな力を持つ何者かが倒れ伏すような事態が起きているということであり、それに手を貸すことは巻き込まれる可能性が高いということでもある。


──それでも


「我が手に力を」


 それでも俺に見捨てる、という選択は出来ないのだった。






─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─*─


 この後に助けた軍閥の公爵令嬢(っょぃ)に惚れられて求婚されて囲われる♀×♂。

 政争の気配しかないのに筆者が政争ネタを思いつかず序盤でネタが尽きたのでこちらへ格納。

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