燃える
自分の前に倒れている機械生命体。
それを前に僕は何をするのが正解だったのだろうか?
「……ぁ」
それは未来となってもわからない。
ただ、この時の僕は先ほど抱いた恐怖のままにその場から逃げ出したのだ。
「えっ……?」
訳もわからず一目散にその場から逃げて、逃げて、逃げて。
どれだけ遠く離れたかもわからなくなった場所で、僕は足を止める。
「村が、燃えている……?」
どれだけ走ったかわからないような、そんな状況下でようやく僕は自分が身を寄せていた村が燃えていることに気づいたのだ。
「……うわぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああっ!?」
フラッシュバックする。
過去の自分が。
村が燃えるさまを、お世話になった人が、両親が、幼馴染が。
それぞれが死ぬ様を何も出来ずに見ていた日のことを。
「ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああっ!?」
また、僕は訳もわからず走った。
また走って、また走って、また走った。
「……ぁ」
そして、僕はたどり着いた。
燃え盛る村に。
自分がお世話になっていた村が燃えている様が織りなす惨状の前に。
「どう、して……?」
この村には今、しっかりとした一小隊が。
本来であれば人間なんていう矮小な存在に構わず、魔法生命体と戦闘を行っているはずの機械生命体の一小隊がこの村を襲っていたのだ。
どうして?どうして?どうして?
疑問は尽きない……だが、目の前の光景は現実だった。
村が燃え、その地面には炭となった人間の死体が幾つも転がっていた。
「は、はは……」
最初は低位の魔法生命体に自分の村を滅ぼされた。
次は、一小隊の機械生命帝に奪われるのか、ようやく自分の村であり、故郷であると思い出していたここを……心の中でもやもやを抱えながらも現実を受け入れようとしていた僕から───またぁっ!?
「あ、あぁ……」
頬に、熱いものが流れる。
「あぁぁぁぁぁ」
体から力が抜けていく。
何処までも、何処までも、僕は奪われるのか……常に、僕は奪われ続けるのか。
そうか……そうなの、か。僕はぁ……。
「こっちに来るんじゃないよっ!」
体から力が抜け、絶望が僕を覆う。
「……おばちゃん?」
そんな中で、僕の耳へと。
「しっかり、しっ!しっかりしっ!ダメよっ!?まだ死んじゃ……あの人が、あの人が来ればきっと!」
「えぇい!ここで男たちのように私たちも死ぬんだよ!少しでも……、未来をっ!」
数々の作業を共にし、同じ村で生きてきたおばちゃんたちの声が届いてきたのだった。
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