襲撃
声がした方向へと僕はほぼ反射的に視線を向ける。
「……ぁ」
そんな、僕の視界の中に入ってきたのはハルとよく似た、だが、それでもハルとは決定的に違う一人の機械生命体であった。
明らかな知性をのぞかせ、不良品としての様相も見せていない機械生命体が、こちらに視線を送りながら戦闘態勢へと入っていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああっ!?」
それを見た僕はほぼ反射的に地面を蹴って悲鳴を上げながら逃走を開始する。
「対象の逃亡を確認。武力による制圧へと移行します」
だが、人間ごときが少し逃げたところで何の意味がある。
「あぁっ!?」
ほんの数十メートル進んだところで僕は足に何か激痛を感じて地面へと崩れ落ちる。
「……ぁ、あっ……あぁ」
何故、自分が転んだか。
それは一目瞭然であった。
「……あ、足が」
僕の右足は膝のところで完全に分かたれ、少し離れたところに自分の右足だけがゴミのように転がっていた。
生暖かい僕の血がどんどんと地面に広がっていく。
「は、はは……」
そんな様を見ながら、自分の方へと近づいてくる何かの足音を聞きながら、僕は恐怖に引きつった笑みを漏らし……少し、前のことを思い出す。
「ふ、ふふふ……あっはっはっはっはっはっ!」
あぁ……つい、最近まで死んでもいいとか思っていたのに、いざ目の前に死が迫ってくればこんなにも怖いのかよ……っ!
は、はは……笑わずには、これが笑わずにいられるか。
「……うぅ、嫌だ。死にたくない……死にたくない」
僕は右足がない状態ながらも片足と両腕だけで立ち上がり、この場から逃走しようと歩き出そうとする。
そして、何とか一歩目だけは踏み出してみせた。
「制圧を完了」
「あぅあっ!?」
だが、そんな僕のあがきも空しく、冷たい手の感触を頭に感じるとすぐに自分の舌が土の味を感じ取る。
一瞬にして僕は自分の頭を機械生命体に捕まれてそのまま地面にまでたたきつけられたのだ。
「抵抗の停止を確認」
そんな僕は自分の上から聞こえてくる機械生命体の言葉に絶望を感じるのだった。
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