Life.1 嵐の転校生(13)《ゼノヴィア先輩の直後輩!?》

「「「ただ遊びに来ただけ!?」」」


 私たち三人の声が重なった。


「面白い後輩たちがいると聞いて興味が湧いたんだ」

「でもオカ剣の素行調査とか、絶花ちゃんの修羅っぷりがどうって……」

「本当に恐ろしい連中ならば、私たちなどでなく高等部の生徒会も動いているだろうさ」


 凜とした表情で語るゼノヴィア先輩、それを紫藤先輩がコツンと叩く。


「えらそうに言わないの。やりすぎたこと、反省したのゼノヴィア?」

「熱くなってしまったのは私の落ち度だったよ。本当にすまなかった」


 それからアーシア先輩が、アヴィ先輩に向かって補足する。


「実はソーナ会長からも、アヴィさんの様子を見てきてほしいとお願いされてまして」

「ソーナさんが!?」

「随分と、気にされていましたよ?」

「……そ、そっか……」


 アヴィ先輩がどこか嬉しそうな表情を見せる。

 意外にも高等部の生徒会長と親しいつながりがあったらしい。


「ちなみに、うちのリアス部長からは絶花のことを頼まれたよ」

「え、私ですか!?」

「中等部で色々と誤解されて困っているのではと心配していた」

「やっぱり女神様……っ!」

「リアス部長は悪魔だぞ?」


 余計なことは言わなくていいんですゼノヴィア先輩。


「み、宮本さん、リアス・グレモリーさんと知り合いだったんすか?」


 リアス先輩の名前を出され、驚いたのはシュベルトさんも同じだった。


「あちゃー、うちの会長も流石に予想してなかっただろうなぁ……」


 また面倒事になりそうだとシュベルトさんはぼやいていた。


「──ほらほら! いつまで喋ってる! 片付けないと帰れないよ!」


 ここで顧問……堕天使であるベネムネ先生の檄が飛ぶ。

 ちなみに最後の勝負は引き分け。部屋どころか学園が壊れかねないと止められてしまう。

 オカ剣とオカ研の交流は、旧武道棟の掃除という形で終えようとしていた。


「なんで僕まで掃除を……服が汚れるっす……」

「一緒に散らかしたんだから、一緒に片付けるのは当然でしょ」


 気怠そうなシュベルトさんを、紫藤先輩がしっかりやりなさいと叱咤する。


「はぁ、シドーぱいせんは雑巾がけが似合って羨ましいっすよ」

「どういう意味よそれ!? やっぱり私にだけ生意気になってない!?」

「いやいやリスペクトしかないですー。天界のエースが相手で上手く喋れないん

ですー」

「え? 私がすごくて緊張しちゃうってこと? ならしょうがないけどさぁ」

「……チョロいなぁ」


 仲が良さそうで羨ましい。シュベルトさんってやっぱりコミュ力高いんだと感じる。


「お、重たいですぅ……」

「手伝いますよアーシア先輩!」

「アヴィさん……ありがとうございます……」

「えへへ」


 アヴィ先輩とアーシア先輩も片付け真っ最中。とても良い雰囲気である。

 いいなぁ、アーシア先輩と一緒にできて……私なんて……。


「絶花! 手が止まっているぞ!」

「は、はいっ」

「私の直後輩になったんだ。不真面目では困るぞ」

「そんな直弟子みたいに言われても……」


 私はゼノヴィア先輩と、床に転がった刀剣を拾い集めていた。


「今度一緒にトレーニングもしよう。絶花の剣術や戦術は勉強になる」

「そ、そうですか?」

「私はどうにも思慮が足りないらしいからな」

「これ以上トレーニングするともっと脳筋になってしまう気が……」

「なにか言ったかい?」


 何も言ってません。私は真面目に仕事をしています。


「できれば、絶花のように剣の気持ちが理解できるようになりたいものだ」


 ゼノヴィア先輩が、拾った武器を見つめて言う。


「私にもそんな感覚に覚えがあるが、絶花ほどの精度はないと思えてしまう」

「そんなに褒められることでは……」

「謙遜するな。エクス・デュランダルのことも一目で見破ったんだ」

「あれは強すぎて分かりやすいです。それを使いこなせる先輩の方がすごい気が……」


 聞けば彼女の聖剣は、エクスカリバーとデュランダルが合体したものだという。

 どちらも伝説の聖剣だが、まさか実在していて、しかも学園で目撃することになるとは。


「デュランダルは、荒っぽいけど、とても真っ直ぐな子でしたね」

「なるほど、ではエクスカリバーはどうだった?」

「あの子からはたくさんの声が聞こえたので、一つの性格で言い表すのは難しいです」

「何太刀か交えただけで、エクスカリバーのことがそこまで理解るのか……?」


 何かおかしなことを言ったかと困惑する私に、先輩はどこか遠くを見て呟く。


「剣に愛された人間、か」


 そして彼女は私を見て、力強い笑みを浮かべた。


「──どうやら私には、とんでもなく面白い後輩ができたらしい」

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