18話 先輩の実力

先輩と俺は闘技場に移動する。


「じゃあ、始めようか」


そう言って先輩はその場所に座り込んだ。


「戦ってくれないんですか?」


先輩は全く戦う気があるようには見えない。


「戦うよ。

ノアくんのタイミングで始めてくれ」


無抵抗の相手を攻撃するのは気が引けるが、先輩がいいと言うならしょうがない。


「いきますよ!いいんですね?」


「うん、いいよ」


地面を蹴り思いっきり先輩に殴りかかる。

しかし既にその場所には先輩はいなかった。

後ろに気配を感じ、振り返ると先輩が立っていた。


「速いだけじゃ僕を捉えることは出来ないよ」


それから何度も殴りかかるが全部避けられる。

全く戦いにならない。

先輩の方は俺に攻撃してこない。


「なんで攻撃してこないんですか?」


「攻撃しなくても負けないからね。

ノアくんもスキルを使ったらどうだい?」


確かに俺はまだスキルを使っていない。

でも正直いってスキルを使っても勝てる気がしない。


「先輩も全然本気出してないじゃないですか!」


「ノアくんがだしたらだすよ」


それを聞いて俺もスキルを発動する。

スキルによりスピードが上がった俺の攻撃を先輩は避けずに受け止めた。


「驚いた、避けきれなかったよ」


避けきれなかっただけで強化された俺の攻撃を平然と受け止めるとは、やっぱり半端ない強さをしている。


さらに俺は魔法も使う。


「ファイヤーストーム!」


炎の竜巻を先輩に向かって放つ。

ファイヤーストームは先輩の魔力放出によって相殺された。

だが続けて追撃をを放つ。


「ファイヤランス!」


炎の槍。

この技は最近覚えたものだ。


「グラビティ!」


とうとう先輩のスキルを引き出せた。

魔法は、炎、水、風、土、雷、光、闇、治癒だけだ。

つまり今先輩が使った技は確実にスキルだ。

現在わかっている先輩のスキルは俺の後ろに回り込んだり、攻撃を避けたりするために使っていた瞬間移動のようなものと、今使ったものの2つだ。

おそらく先輩のスキルはこれ以上はないだろう。

スキルは2つ持っていたら多い方で、3つ持っている人はかなり珍しい。


攻撃を防ぎ、先輩は俺の前にワープしてくる。

咄嗟に俺が殴り飛ばそうとする前に、ファイヤランスに使ったスキルと同じものを使われた。

地面に叩きつけられた俺の顔を先輩は覗き込んでくる。


「俺の負けです....」


俺の敗北宣言を聞いた先輩は満足そうな顔だ。

勝利したのが嬉しいようだ。


「僕が思っていたよりもノアくんは強かったよ。

特にあの炎の槍。

スキルを使わざるを得なかったよ。」


「先輩こそ全然本気出してなかったじゃないですか」


ちょっと不貞腐れながら言った。


「そんなに不貞腐れなくてもいいよ。

強かったのはほんとだからね。」


先輩は俺の事を慰めてくれた。

それにしても本当に強かった。

四天王最強は伊達じゃない。








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