圭介

「圭介」eight

 テスト週間だ。だるい。あまりに面倒である。生徒の気持ちなどではなく、教師側の気持ちである。

 計四つのテストを作らなければならないし、それも踏まえて授業の準備もしなければいけない。授業が疎かになれば、生徒のテストの点数が低かった場合、

「いや、あいつの授業マジつまんねえからさ」

 などと抜かされる危険性がある。想像すると、それはただただ腹が立った。ア段率が高いな。嬉しい。

 ふと、友達とア段バトルをしたことを思い出す。高校時代の話である。彼は今、何をしているのだろうか。シンガポールで鉄道建設でもしていたら面白いな。


「圭介」nine

 メッセージを遡ると、彼とア段バトルをした一部が見つかった。

「様々な肩幅」

「だからあなたはバラバラだった」

「鞘から刀ならば肩からタラバ。片側からはまさかカタカナ、さらば花」

「戦わなかった魚は酒場、はたまた肴?

狭間は儚さ。ままならなかったばらばらな体は畠中か長坂。ははは、あなたはただ戦わなかった方だ笑」

 ちなみにア段バトルを辿っていくと、その彼に送った

「あからさま,または高らかな花は暖かな刀,はたまた鞘がなかなか空回らなかった様がただただ速かったから,和歌山や神奈川はわざわざ測らなかったw」

が原初であった。今見ると彼の作品は短い代わりに促音便を一度も使っておらず、なかなか美しい。

 その後のやりとりを見ると、二人でイ段で構成された文の作成に知恵を総動員していた。

 テスト週間が終わったらもう一度そんな遊びに精を出すのも良いかもしれない。また青春に絆されて、やる気が出てきた。


「圭介」ten

 テストの魔物はテスト週間のみにあらず、ということをひどく思い知らされた。そう、それは丸つけである。

 テストは確かに4種類作れば良かった。しかし、一種類を3クラスに使い回しているわけだ。

 丸つけとなればもっと多くの数、さらにミスすると、やはり生徒たちにとやかく言われてしまう。

 母親かよ。いつもありがとう。

 そう唱えながら丸つけを続ける。中にはバツつけと言っていいほどバツが多い生徒もいた。授業でここは教えたはずなのに。

 この学校ではエアコンの設置を生徒の教室に優先しているので、職員室にエアコンはない。

 常夏の島でももっとマシだ。ぐらぐらと蒸し暑い空気が全身を包む。まさに、あからさまなあたたかさ、である。

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