模索中

戸森

第1話

枯れた一輪の花。真っ暗な空間の中、ぼうっとその花だけが浮かび上がっている。

地面はよく見えないけど、雑草がまばらに生えていそうだ。


真っ黒い空間の中、割れたガラスが飛び散って、破片が痛々しく輝いている。

それを見てるだけで、血が想像されて、私は肘をさすった。


校舎の出来事。私は教室の窓際に立っていた。


物心ついた頃から、私は緩やかな悪魔と一緒に育っていった。

私の半歩後を、トロトロ付いてくる。

時たま目の前を通り過ぎるので掴もうとしても、スライムの様にするりと抜けられる。その小さな怪物は実体がない。

だから例えば、空気のように、私の心にゆっくりと毒素を送り込んで、慣れさせるのだ。


当たり前にその悪魔と一緒に住むと、何も気づかないものだ。

彼の事さえ、私は気づかなかった。


ミルフィーユは、何段もの層でできている。

それを時間軸にしてもいいし、折り重なった感情にしてもいい。

身体がミルフィーユになった私の眼に映る景色は、美味しそうだった。

しかし層が重なるごとに、私自身はどんどん重たくなっていった。

自分の味気なさを感じずにはいられなかった。

罪な甘さ、それに憧れずにはいられなかった。


悪魔が浸食していった私の内面は、周りと切り離されてしまって、だけど一緒にいたかった。圧倒的にズレている予感はしていたけど、気づかなかった。


花が咲いた。花は柔らかくて、はかなくて、可愛らしいものだ。

だけど、悪魔は怖がった。私は怖がった。

憧れていたものが自分と同じ空間に咲いている時、自分の暴力性とのギャップがとても恐ろしい。触れたらいけない、錆てしまうから。


だけど、触れずに怖がっていても、毒素の瘴気ですぐにしぼんで枯れてしまう。





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