第51話 メイドな隊長、飲む
二階での話が終わり、レオナとサイカは
閉店後に、遅番の
参加者は、レオナ以下十一名――魔石
長テーブルを並べ、それを囲むようにして席に着く十一人が飲んで食っての状態なのだから、にぎやかなことこの上ない。
「もう酒がないじゃねぇか! とってくるけど、他に欲しいヤツはいるかーっ?」
「「「「「「「はーいっ」」」」」」」
「多いなっ――そこっ、注いだ
「料理も、もうない!」
「料理なら、
「じゃー、ボクがそれ取って来るよ」
「ついでに、なんか追加でてきとーに作ってきてー」
「無理無理。もう、店長がかまどの火を落としてるって」
「また火を起こしゃいいじゃねーか」
「やだよ。勝手にやったら、明日の朝、店長の拳でボクの頭が胴体にめり込むよ」
「大丈夫大丈夫。オレが代わりに怒られてやるっ」
「……なら、いいかな?」
「たぶん二人とも怒られると思う」
「二人で済めばいいんじゃがな」
「…………」
「………………」
「……やめとくか」
「うん」
そんな喧騒(?)の中で。
「隊長~。今日は
トポトポっと。
見てない隙にレオナのジョッキへエールを注ぐのは、サイカ。
レオナの隣の席とはいえ、距離が近い。
というか、ぴとっと密着していた。
「ダメれふよぅ……帰らにゃいと、アイシャにぃ……怒らりぇるから……」
だがレオナの方は、いつものようにそれを気にする余地がないほど、酔っている。
サイカの密着に照れて赤くなる以前に、すでに酒で真っ赤だ。
なにしろ、レオナとサイカの話が終わって合流してからけっこう時間が経過。
もうお開きも近づいてきているような時間だ。
その間、いくら飲んでも減らない(サイカが横からこっそり無限に継ぎ足す)酒を飲み続けているのだから、レオナが酔って当然ではあった。
正面に座るサリが二人の様子を見ながら、呆れた顔で自分のジョッキを傾ける。
「サイカがここまでからむほど酔うなんて、珍しーんじゃない?」
「酔ってるのは間違いねーけど、量はいつもと変わんねーって」
「じゃー、どうしてまた今日に限って、こんなになってんの?」
「マリアがいねーから、歯止めが利かなくなってんじゃねーの?」
「あー、なるほど」
カーラの言葉で納得するサリ。
部隊の副隊長であるマリアは、しばらく前から任務で不在なのだ。
隊員たちにしてみれば、『まーこーなるよな』という共通認識。
そして、マリアが帰ってきたらどうなるかというのも、隊員たちの共通認識としてある。
だけど、誰も止めない。(ヒドイ)
「隊長、うちに泊まりましょ~よ~。うちのベッド大きいから、ふたりで一緒に寝られますよ~♡」
「ダメれふよぅ……帰らにゃいと、アイシャにぃ……怒らりぇるから……」
「そんなこと言わずに~。うち、ふたりで入れる大きなお風呂あるんですよ~。一緒にお風呂入りましょ~♡」
テーブルに突っ伏しかけているレオナの上から、サイカが覆いかぶさるようにしなだれかかる。
さすがに見かねて、イルミナがサイカの背後に立った。
「サイカ、いい加減にしときな。遅番のサイカと違って、隊長は明日の朝も早いんだからさ」
「そうそう、そうなんですよ隊長~。遅番だから、明日の朝はベッドの中でゆっくりしましょ~ね~♡」
すりすり。
「いーかげんに――」
サイカをグイっと引き起こす。
そして、上から覆いかぶさるように右腕をサイカの首に回し、脇でガッチリ
「うきゅっ!」
イルミナの脇に顔を挟まれ、頬骨を締め付けられて変な声を出すサイカに、逃げる余地などない。
そのまま流れるように、上からイルミナの左腕がサイカの左わきへ突っ込まれ、背中へ回される。
そして。
「――しろっ!!」
仕上げに、イルミナの両腕に力がこもり、グワァッと引き絞られた。
「む~~~~っ~~~~~~っ!!」
椅子に座ったまま
「ほら、隊長から離れてっ」
イルミナは、そのままの体勢でサイカをレオナから引き離す。
サイカの返事は待たない。(そもそも返事できる状態ではない、ともいう)
「! っ~~~~~~~~…………」
ぱたり。
宙を泳いでいたサイカの右腕が、力なく落ちた。
サイカの右腕はダランと垂れ下がり、まったく動かなくなる。
「おまえはしばらく、こっちで寝てろ」
それでも
そして、テーブルに突っ伏した状態で、放置。
「いつもながら、イルミナは面倒見がいーな」
カーラがジョッキを口につけたまま、感心したようにつぶやく。
「面倒見る方法が、実力行使
機嫌良さそうに酔っているエイルが、ケラケラと笑った。
「……いや、笑いごとじゃないよ。イルミナの実力行使は、シャレにならないんだから」
クピっと軽くジョッキの中身を干したサリが、ジョッキをテーブルに置いてからプルプルと小さく首を振る。
「この前、ここの床で寝てたときなんか、腹にあいつの両ひざが落ちてきたんだから」
「「……は?」」
腹に膝?
前半の『ここの床で寝てたとき』の部分で、「店の床で寝るなよッ」とツッコもうとしたのだが、後半に持って行かれてしまったカーラとエイル。
サリの言葉に、二人が驚いて聞き返す。
「両ひざって……どういうことー?」
「状況が見えねーぞ、おい」
だが、その場にいた全員が、驚いたわけではない。
サリの話をうんうんとうなずきながら聞いていたのは、ダークエルフのリルダ。
「そうそう。しかもふつうにお腹へ落としたんじゃなくて、側転して落としてたよね。
――って、『頑丈』で済ませていいのか?
そんな空気が流れるが。
「イルミナは、大丈夫な相手に大丈夫な技しか掛けませんよ」
続いたカナンの言葉は、フォローのつもりなのだろうか?
「……(ふるふる)」
――まあ少なくとも、隣で胸元を押さえながら涙目で首を振るアルテアには、まったくフォローになっていないようだった。
その後、カナンとサリとアルテアとリルダが、「あれは、正確に言うと膝が突き刺さったわけではなくて(長々と蘊蓄が続くため以下略)」とか、「どっちにしてもシャレになってない」とか、「(うんうんっ)」とか、「良い子はマネしないようにね」「おまえ、どっち向いて喋ってんだよ」とか話し続ける。
だが、もう他のみんなは誰も聞いていなかった。
別の方に気を取られてしまっている。
「……しょろしょろ、帰んにゃいと」
レオナが突然、ふらりと立ち上がったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます