夏休み編(3)
赤点補修者の勉強会1日目。暑い中、汗をぬぐいながら学校にやってきた。
「おはよー。」
「今日も暑いね。」
たまたま昇降口で会ったきなこちゃんと一緒に勉強会の場所になっている会議室に向かう。会議室は空調が効いているらしいので早足で行く。
「生き返るー!」
「涼しい....」
会議室に入った私たちは冷たい風が出ている空調の前で涼んでいた。しばらくそうしているとどんどん人が集まってきた。適当に座って先生が来るのを待っていると私服姿の先生がやってきた。
「おーし。全員揃ってるか?では今から勉強会を始める。座席はこの紙の通りに座ってくれ。」
先生は前に置いてあるホワイトボードに名前が書かれた紙を貼った。私達はその通りに座ると先生は出席を取った。
「全員出席だ。すばらしい。では今から勉強会を始める。やることは夏休みの課題だけだ。分からないことがあったら横には学年10位以内の精鋭たちが座ってるからそっちに聞くように。夏休みの課題が終わった者から来なくていいぞ。一応15時までの予定だからよろしく。何か質問あるか?」
誰も手を挙げなかった。
「では私は作業してるからなにか聞きたいことがあったら声をかけてくれ。」
先生はパソコンを起動して作業を開始した。
それからしばらくしてペンの音が響くようになった。自分の課題を進めつつ横に座っている子の進捗状況を確認する。たまに質問されるので教科書を開いて教える。そんなことを繰り返していたら12時のチャイムがなった。
「疲れたー。」
部屋中からそんな声がする。机に突っ伏している人や椅子の背もたれに寄りかかってる人もいる。
「よし。一旦昼休みだな。昼食はここで食べるように。10位以内の人達はついて来てくれ。」
私たちは先生について行くと校長室の横の応接室に連れていかれた。この部屋も冷房が聞いてて涼しい。
「そこのダンボールに弁当が入ってるから好きなものをとってくれ。残ったものは今日いる教師たちで食べる。」
各々好きなおかずのお弁当を取っていく。私はうどんにした。
「唯ちゃんうどん?」
「冷たそうだからいいかなって。」
「私もそれにするわ。」
沙雪ちゃんもうどんを選んだ。
私たちはテーブルに座ってお弁当を食べた。
「美味しかった。」
「ね。そういえば再開っていつ頃って言ってたっけ。」
「さあ聞いてなかったかも。」
「昼休みは1時15分までって先生が言ってましたよ。」
私たちのそばでご飯を食べていた女の子がそう教えてくれた。
「ありがと!」
「いえいえ。」
「でもあと40分くらいあるのかぁ。」
「適当に時間潰すしかないね。」
適当に話でもしつつ時間を潰すことにした。
「あ、そういえばこの前の金曜日にすっごい美人さんにあったんだよね。」
「どんな人?」
「なんか、外国の人って感じの雰囲気の人だった。沙雪ちゃんより血は濃い感じだと思う。」
紗雪ちゃんはクォーターなので日本人感がだいぶあるがあのお姉さんは少なくともハーフだった。
「そんなに美人さんなんだ。写真とかないの?」
「あー流石にない。でも名刺貰った。」
「名刺?なんで?」
「家の前で熱中症で座り込んでたから家に上げたの。」
「えら。でその人のお名前は?」
「んーそれがねぇ多分ロシア語で書いてあって分からなかったんだよね。」
「ロシア語?」
沙雪ちゃんが反応した。
「ロシア語分かるの?」
「祖母がロシアの人だから。少し読むくらいは。」
「じゃあ今度持ってくるね。」
「さ、そろそろ昼休み終わるから戻ろっか。」
昼休みが終わってまた会議室に戻った。
「じゃあここからまた2時間集中して取り組もう!」
先生は元気に言うとまたパソコンで作業を始めた。教師って夏休みなのに大変だなぁ。
課題は少ないのでどんどん終わっていく。この調子だと明日には終わりそうだな。なんて考えていると肩をつつかれた。
「すいません。質問いいですか。」
「もちろんどこ?」
「えっと数学のこの問題なんですが....」
明日から暇になるのは回避したいので横の子にじっくりと教えていたら3時になった。
「お疲れ様。しっかり水分を取ってから帰るように。」
今日は解散になった。
「教えてくれてありがとうございました!」
「どういたしまして〜。じゃ、またあしたね。」
「はい!」
学校終わりにどこかに遊びに行こうかと考えていたが外に出た瞬間汗が滝のように流れてきたので家に直行してシャワーを浴びて、クーラーの効いた部屋で過ごした。
2日目学校に行くと沙雪ちゃんから連絡があった。体調不良で休むそうだ。お大事にと連絡しておく。
「九条さん大丈夫かな。」
「明日もダメそうだったらお見舞い行こうかな。」
「そうだねー。」
「そういえば唯ちゃん名刺持ってきた?」
「あ、うん一応。」
ファイルから取り出して見せる
「ほんとにロシア語だー。なんかかっこいい。」
「翻訳機かけてみようよ」
「おーけー。」
カメラに読み込ませてみる。すると表示されたのは「クヨ キヨミ」だった。
「なにこれ。くぜみたいな名前が翻訳されたのかな。」
「さあ?ロシア語の翻訳がおかしいのかも。」
「人名は翻訳が難しいからね。」
3日目は沙雪ちゃんが戻ってきた。
「おはよ!調子はどう?」
「大丈夫よ。昨日もそこまで悪くなかったけど。母が家に来てて休めって言われたから。」
「なるほどね。それなら良かったよ。」
3日目になると私たち宿題が少ない組は課題が終わっていたのでまだ終わってない人たちをサポートした。
「みんな進捗はどうだ?」
「明日には多分みんな終わると思います。」
「そうか、なら明日はプールを空けておくから入りたい人は水着を持ってきてくれ。」
歓声が上がった。そこからはさらに集中して明日の午前中には余裕で終わるくらいの量まで宿題をみんな終わらせた。
そして4日目
「よし!みんなプール目指して今日も頑張ってくれ!」
「先生俺終わりました。」
「私も終わりました。」
「私も!」「僕も」
「え、昨日はまだ終わってなかったのに?」
「家で終わらせてきました。早くプール開けてください!」
「そうか!すばらしい!!動機がなんであれ自発的にやるのはいい事だ。よし瀬名!プールの鍵を渡すから開けてくれ。私は少ししたら向かう。」
「承りましたー!」
更衣室を開けてからプールへのドアを開ける。
「やったプールだ!」
「みんな考えることは一緒だね。」
着替えながらみんな大はしゃぎだ。
「沙雪ちゃんも泳ぐの?」
「足だけね。暑いから。」
着替えると先生がプールサイドにいた。
「軽く体操はしておけよ。」
それぞれで屈伸やストレッチをしてから水にはいる。
「気持ちいいー!」
「最高!」
プールに飛び込んで行った人が声を上げる。私はプールサイドに腰を下ろして足だけ水につけている沙雪ちゃんの近くで仰向けになって水に浮く。
「あー最高。」
「足だけじゃ暑いわね。」
沙雪ちゃんは手で自分を扇ぎながら言う。
「入っちゃえば?」
「そうするわ。」
沙雪ちゃんはプールサイドに捕まりながらプールに入った。
「泳げるの?」
「無理ね。瀬名さんに捕まるわ。」
沙雪ちゃんは私の肩に抱きつくように捕まった。
「じゃあ軽く泳ぐよ?」
「ええ、大変だったら見捨ててもらって構わないわ。」
「構うよ!?」
人を背負っていると言えど水の中なのでスイスイと泳いでいく。
「どう?」
「泳ぐのは気持ちがいいわね。今からでも練習しようかしら。」
「私が教えてあげる!ビート板使おう!」
1度プールから上がってビート板を持ってくる。
「これに捕まりながらバタ足で進んでね。」
沙雪ちゃんの横に行って同じペースで泳いでいく。徐々にコツを掴んでビート板ありなら進めるようになった。
「疲れたわ。」
「そろそろ帰ろっか。」
先生のところに行って帰っていいか聞く。
「先生帰っていいですか?」
「ああ、お疲れ様。会議室に冷えた飲み物があるから持って帰ってくれ。」
「わーい!ありがとうございます!」
着替えたあと会議室でジュースを1本貰ってそれを飲みながら帰る。帰っている途中で私たちを追い越して行った車が急に止まって中からサングラスをかけたお姉さんが出て来て言った。
「沙雪じゃない!」
「....母さん。」
次回。遭遇
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