お嬢様の将来について ※老執事視点
「アデーレの教育は、かなり順調のようだな」
「左様でございます」
クラウス様が、娘のアデーレ様に関する報告を聞いて喜んでおられる。ご自身の子の優秀さを確認できて、嬉しいのだろう。しかし次の瞬間、少しだけ表情を暗くする。
「あの子はまだ、ダンジョンに入りたいと言っているのか?」
「はい。出来ることなら、何度でも入りたいと申しております」
「困ったものだ。あんな恐ろしい場所に、何度も入らなくても良いだろうに……」
「どうやら、最奥に何があるのか知りたいという。好奇心旺盛なようでして」
「そうか……、できれば危険なことはさせたくないが」
残念そうなお顔をされる。勉強に励めば、ダンジョンに入る許可をすると約束してしまった。そのせいで、強く止めることも出来ないと悩んでおられた。
「せめて男の子であれば、良かったんだがな」
「それは……、仕方ありません。息女でも、優秀な子はいますから」
「そうだな」
アデーレ様がご子息であれば。クラウス様も私と同じような意見を持たれたようだ。けれど、それは考えても仕方ない。性別は変えられない。
「優秀であるのなら、それなりに使い道もある。エレドナッハ家の繁栄のためにも、あの子には頑張ってもらわないと」
「えぇ」
あごに手を当てて、考え込むクラウス様。彼女の使い道について考えているようだ。
「王太子が、アデーレと同じ年ごろだったな。なんとかして、縁談をお願いできないか」
「難しいですが、可能性はありますね」
殿下とアデーレ様の婚約が成立すれば、エレドナッハ家の未来も明るいものになるはずだ。しかし、他にも狙っている貴族家は多くある。そう簡単に上手くいかないだろう。
「アデーレには、王家に嫁ぐための準備も始めさせるように。教育内容の見直しと、礼儀作法の再教育が必要だな」
「承知しました」
私は頷きながら、頭の中でスケジュールを組み立てる。今すぐ予定の調整も必要。これから、アデーレ様も忙しくなるだろう。しかし、それを余裕でクリアしていく彼女の姿が目に浮かんだ。
***
「クラウス様の指示で、課題の量が増えます」
「えぇー、これ以上増えると大変でしょ」
「アデーレ様なら問題なくこなせると信じております
「まぁ、まだ余裕はあるけど……」
課題の量が増えたと聞いて、不満顔のアデーレ様。だけど、無理とは言わない。本当に問題なさそうだ。
「でも普通の子は、この量をこなすのは無理でしょ」
「アデーレ様は普通じゃありませんし、優秀なので大丈夫でしょう」
「そんな真正面から面と向かって普通じゃないのは、どうなの?」
「事実なので」
「あらそう」
私が言い返すと、彼女は楽しそうに笑った。それからすぐに表情を戻す。また何か考えている様子。
「じゃあ、この課題も早く終わらせて、ダンジョンに入る許可を貰いましょう」
「また、ダンジョンに入るんですか?」
「もちろん」
やはり、アデーレ様はダンジョンに入りたいらしい。危険だから止めてほしいと伝えているけれど、それでも行きたいと言う。
最近は慣れてきたのか、同行する私も危険を感じにくくなってきた。護衛の戦士も強くなったのか、襲ってくるモンスターを淡々と処理してくれた。
だからこそ、不安だ。アデーレ様にもしものことがないように、注意を払う必要がある。
なるべくダンジョンに行く余裕をなくせるように、礼儀作法の課題などをどんどん増やしていくことにする。
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