第7話 世界を把握

Side:フロー


 俺は、この世界が何なのかプログラム魔法で、調べてみようと思う。

 実行したのは以下のプログラム魔法。


#include <stdio.h> /*お約束という奴。色々な定義がしてある*/

#include <stdlib.h> /*お約束という奴。色々な定義がしてある*/


void main(void)

{

 system("dir"); /*情報を獲得*/

}


 『/*』と『*/』はコメントで、説明書きだ。


 実行して分かったのは


 ドライブ C のボリューム ラベルは シークピア です

 ボリューム シリアル番号は 3150-B3CA です


 C:\Users\彼に聴く嘉 のディレクトリ


4649/04/18 09:38  <DIR>     .

4649/04/18 09:38  <DIR>     ..

4649/04/18 09:38       1,024,999 magic.cgi

4649/04/18 09:38        512,256 彼に聴く嘉.body

4649/04/18 09:38         65,335 彼に聴く嘉.soul

    3 個のファイル    1,602,590 バイト

    2 個のディレクトリ     ∞ バイトの空き領域


 うん、プログラマでない人には分からないと思う。

 ここで重要なのは俺に割り当てられたディレクトリが『彼に聴く嘉かにきくか』だってこと。

 そして、『.body』体と『.soul』魂に分かれていることだ。


 そして、俺は世界の大元である『C:』まで辿ってみた。

 色々な地名がある。

 ここ、スライダー王国の名前があったので覗く。

 さらに王都があり、アノードの家があったので、俺がいる部屋を覗いてみた。

 色々なファイルがあったが、『彼に聴く嘉.lnk』ファイルがあったので、やっぱり俺の真名は『彼に聴く嘉』らしい。

 『.lnk』ファイルは、ファイルを繋がらせる。

 要するに『彼に聴く嘉.lnk』は『C:\Users\彼に聴く嘉』と同じ事だ。

 アノードの真名は『知魅ら思惟ちみらしい』らしい。


 死んだ魂の行き場所も見つけた『RecycleBinFolder』だ。

 ここには数えきれないほどの『.soul』ファイルがあった。

 いずれここから転生するのだろうな。


 『RecycleBinFolder』はプログラム魔法ではそう見えているが、実際は天国か地獄だろう。

 それとも時間も凍結された空間か。

 俺のリンクをそこに飛ばせば転移できると思うがやりたくない。

 このシステムだと世界がひとつで閉じているから、すくなくともプログラム魔法で異世界転移は無理だと判る。

 ネットみたいに繋がっていればまた違うと思うが。


 恐らく神の権限がないと駄目だろう。

 普段はオフラインでこのシステムは運用されているのかな。

 外敵からの侵入防止でそうしているのならちょっと恐ろしい。


 かなり世界システムが把握できたので、色々と作ってみたい。

 最初のはこれだ。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>


void main(int argc,char *argv[])

{

 char scom[200]; /*コマンド命令を入れる*/

 strcpy(scom,"move "); /*文字列に『move 』を入れる*/

 strcat(scom,argv[1]); /*文字列移動元を連結*/

 strcat(scom,"\\彼に聴く嘉.lnk "); /*文字列に俺のファイルを連結*/

 strcat(scom,argv[2]); /*文字列に移動先を連結*/

 system(scom); /*転移*/

}


 転移魔法。

 定番だからね。

 ゲームだとこれを覚えると、移動が楽になる。


 実行したら無事、隣の部屋に行けた。

 行けたが家具と重なって現れたら、弾かれた。

 地味に痛い。

 転移事故は起こらないようだ。

 怪我の功名だな。


 この魔法は売るつもりはない。

 戦争なんか起こしたくないからね。

 一瞬で兵士が移動できたら、それだけで戦いに勝てるぐらい有利だ。

 野心を持たせるようなことをしたくない。


 次はこれ。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>

void main(void)

{

 system("copy 彼に聴く嘉.body 彼に聴く嘉.bbak"); /*体のバックアップを取る*/

}


 実行してみたが異変はない。

 針で指を突いてと。


「痛っ」


 この魔法を実行した。


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>

void main(void)

{

 system("copy 彼に聴く嘉.bbak 彼に聴く嘉.body"); /*体を治す*/

}


 指の血が止まって痛みが嘘の様に消えた。

 この魔法って不老不死なのか。

 そう言えば記憶は戻ってないな。

 記憶の管轄かんかつたましいということみたいだけど、脳は何の為にあるんだ。

 脳の上位の存在として魂があるのかも知れない。

 仕様に文句を言っても仕方ない。


 魂のバックアップを取ってみよう。

 うん、普通に出来たな。


 逆をやると何も変わらない。


 色々と試してみて、不老不死はどうやら駄目な事が判明した。

 なぜなら体と魂の日付と時間が何もしなくても進んでいるからだ。

 もちろんバックアップもだ。

 日付と時間を変更してみても良いが、無駄な気がする。

 これも仕様なんだろう。

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