激突
一応部屋から出られないように一人、護衛を聖女たちの部屋の前に配置しておく。
それとは別に交代要員も一人用意するように伝えたうえで俺はルーウェルの下へとやってきた。
王国側の城壁の上。
ルーウェルは鋭い視線を向けている。
「何があった!?」
「実は聖女たちはおとりだったようです」
ルーウェルの視線の先には大軍が並んでいた。
「アルムガルドの軍勢か?」
「……いえ、どうやら違うようです」
確かにアルムガルドにしては人族以外の種族が多数見受けられる。
当然ながらその中には魔族の姿も……。
「リフィル、リッカを呼んできてくれるか?」
「わかりました。すぐに向かいますね」
リッカは慌ててリッカを呼びに向かう。
「あの軍勢の数、もしかして帝国を滅ぼした軍勢かもしれないな」
「私も同様のことを考えておりました」
「……勝てると思うか?」
「……」
ルーウェルの沈黙が全てを物語っているようだった。
「そうなると戦えない領民は王都へと非難させた方が良さそうだな」
「……かしこまりました。ただ、私はここに残らせていただきますよ」
「勝手にしろ」
各個撃破するくらいなら今の俺たちでもできるだろうが。さすがに兵力差は覆せない。
相手は強国である帝国すらも滅ぼすほどの戦力を持っているのだ。
「この城壁もどこまで持ちこたえるか……」
一応城壁にも付与魔法を使っておく。
更に投擲用にリュリュの
当然ながらこれだけで足りるとは思っていない。
ただ魔族に対してはリンガイアの結界で事足りる。
リッカを襲った魔族、という相手は襲撃してこないだろう。
「なかなか爽快な景色じゃないか。襲われているのか?」
なぜかまだ残っていた魔王サタンが楽しそうに笑っている。
「おそらくそのつもりだろうな。そうでもない限りあんなところに陣を構える必要はないだろう?」
「ところであやつらが帝国を襲ったというのは本当か?」
笑っていたはずの魔王が鋭い視線を向けてくる。
その姿に先ほどまでの飄々とした態度はない。
むしろ復讐の相手かのように睨みつけていた。
「確証はない。だが、今のアルムガルドにあれだけの勢力があると思うか?」
「……なるほどな。お前の言わんとすることはわかった」
魔王は笑いながら改めて俺の方を向く。
「此度の戦、我はお前に付くぞ!」
魔王の援軍は確かに戦力的には魅力的である。
しかし、ことリンガイアにおいては結界があることもあり、おそらくはろくに戦うことができないのではないかと思う。
「大丈夫なのか?」
「我が敵である可能性があるのなら当然手を貸すに決まっているだろう?」
「いや、そういうことを言いたいんじゃなくて……」
「見よ、我が軍勢を!」
魔王が指を鳴らすと召喚陣が現れて大量の魔物が姿を現す。
ただその瞬間に結界が作動して、魔物の姿が消え、魔石だけが空から降ってくる。
「……」
「いや、だから大丈夫か、と聞いたんだ」
「そういえば我に影響がないから気にしていなかったが、ここは対魔の結界が張ってあるんだったな」
せっせと魔石だけは回収する。
これはリュリュに渡せば爆弾に作り替えてくれるだろう。
「仕方ない。ここは我一人力を貸してやることに……」
「……来た」
魔王が眉を潜ませているとリッカが城壁の上までやってきていた。
「ちょうどよかった。リッカを襲った相手ってあの中にいるか?」
「……んっ? ちょっとわからない」
さすがに距離が遠すぎたのだろう。
確かに言われてみると俺も誰がいるのか全く判断がつかない。
その時、軍勢の方から巨大な火の玉が飛んでくる。
「……
隣でリッカが防御魔法を使う。
火の玉を防ぐように巨大な水の壁が現れて、衝突した瞬間にその二つは消えていた。
ほぼ拮抗した魔法。
それを見た瞬間にリッカは口を噛みしめる。
「……いる」
「くっくっくっ、確定だな。向こうもやる気のようだし我もやってやろう」
魔王が手を空に上げると巨大な漆黒の玉が現れる。
作中最強である魔王の最強の魔法。
守らなければほぼ即死するほどに強大なダメージを与える究極闇魔法。
それが今魔王の手によって作られている。
さすがに威力が強すぎることもあり、貯めが必要な魔法ではあるので、ゲーム中は防御をすることができたのだが、実際に見るとその圧倒的な魔力を前に怯んでしまう。
――おっと、せっかくだし魔王にも支援魔法を使っておくか。
こっそりと俺も魔法を使う。
当然ながらリッカは己の敵を必死に探している様子だ。
意識を集中し、魔族の気配を探しているのだろう。
そして、魔王の魔法が完成する。
「
あまりにも巨大すぎる黒玉は空をも覆い隠し、日の光すら遮ってしまう。その球体は徐々に大きさを広げていき、瞬く間に相手の陣を飲み込んでしまう。
それを防げたものはいないようで、魔王の魔法が止むとそこに立っているものはおろか、草木一つなく死の大地が広がっているのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます