33 次への移動計画
訓練終了後。
ストレはいつものように市場に寄って、惣菜類を買って家に帰る。
それから30
○ ビーフステーキ
○ フィッシュフライ
○ 黒米とエビと野菜のサラダ(ブラックライスサラダ)
○ 鶏肉とキノコのスープ
○
といった惣菜類を囲んで夕食中だ。
「……という感じで、3人ともほぼ中級魔法使いレベルにはなったし、必要な知識も伝えたわ。明後日から3回くらい、護身関係やこれからの勉強方法を教え込めば、最低限の内容は終わりね」
ストレの報告に、マイナが頷く。
「大分早いペース。お疲れ」
「今回は3人だけだし、素材も良かったわ。素質があったし、そこそこ分別もあったから。それなりの年齢だからか、選ばれたからかは、わからないけれど」
ストレとマイナの会話には、ヴィクター王国騎士団の養成課程に1年以上かけているという前提がある。
もちろんこれには、生活習慣を身につけさせる期間があるし、文字の読み書き、簡単な計算、国内や周辺国の歴史と地理、諸情勢等を教える期間も含まれている。
だから今回の3ヶ月に比べて、一概に長いとは言い切れないのだろうけれども。
「あとは溶解炉の仕事だけれど、これは辞める1週間前に連絡すればいいという形になっているわ。次回に辞めると申し出るつもり。上級魔法学校の合格発表があったから、そっちの関係だと勝手に思って納得してくれると思う。
ルクスに提出する力の魔法についてのレポートも、一通りは出したわ。義理は果たしたってところね。
私についてはそんな感じ。マイナの方はどう?」
「仕事の方は問題ない。後継ぎもいるし、その気になれば1週間で辞められる。
あとルイタ島、スチュアート国、ガスコイン国、カーラウィーラ国、更にはそれ以外の大陸の国の情報も、一通り揃った。書籍と地図を揃えたし、来訪中の者の知識で最新情報を確認済み」
どうやらマイナの方も、準備は出来ているようだ。
そうストレは理解する。
「なら、あと2週間くらいで移動かしら」
そのストレの声のトーンが少し沈み気味に聞こえたので、マイナは尋ねた。
「出発を延ばす?」
ストレは首を横に振る。
「確かにここは良い街だし、やり足りない事が無い訳ではないわ。でもその程度の理由で残ることにしたら、きっと何時までも旅立てないと思うのよ。だから私としては、最低限のことが一通り終わったら、此処を発つべきだと思うわ」
「了解。なら早い方がいい。エリアとアニスの様子が、ここ数日おかしい」
エリアとアニスは、ストレとマイナの捜索と抹殺という王命を受けている。
カンバランドで動いているとストレは以前、マイナから聞いて知っていた。
「おかしいって、どういう状況かしら?」
「思考が読めなくなった。また時々、行方不明になる」
『生の魔女』マイナの魔法は強力だ。
知っている者の思考なら、通常は20
「マイナの魔法でも思考が読めないって、そんなのエリアやアニスに可能なの?」
エリアは『空の中級魔法使い』、アニスは『闇の中級魔法使い』。
マイナの思考読解関連の魔法に抗し得る魔法は、持っていないし使えない筈だ。
「無理。なお思考関連は把握不能でも、身体の位置や状態は把握可能。他の魔法使いに操作されている可能性が高い」
他の魔法使いで、2人を操作する必然性がある者と言うと……
ストレが思いつくのは、1人しかいない。
「ドミナかしら」
「動機的には理解。ただ、そこまでの魔力は無い筈」
「そうよねえ」
ドミナはヴィクター王国の永年顧問で、国王側の立場だ。
だから国王の意に沿うよう動く可能性はある。
しかしヴィクター王国の王城からカンバランドまで、700
そしてドミナはあくまで、『秩序の上級魔法使い』。
それだけ遠方にいる中級魔法使い2人を操る程の魔法が使えるとは、ストレには思えない。
現在ヴィクター王国にいる魔法使いで、それだけの距離を届かせる事が可能な魔法使いは、1人だけ。
空間を操り、ある程度の距離は無効化可能な『空の上級魔法使い』ニラメルのみ。
「ニラメルがそういう方法を採るとは思えないわ。国外の上級魔法使いでも雇ったのかしら」
「可能性はある。確定は出来ない。注意が必要」
「その通りね。なら注意しつつ、出来るだけ早く此処から出るのが無難かしらね」
「同意」
ストレの意見に、マイナは頷いた。
「なら次は、何処に行こうかしら? マイナのお勧めは何処?」
「ルイタ島のサリバーン」
そう言ってマイナはテーブルの端を片付ける。
そこに広げたのは、大陸の地図だ。
「カンバランドからサリバーンまで、定期船が出ている。所要3日で、運賃は2人部屋で2人で20,000
サリバーンの次にはカーラウィーラ国のダンダーニャを回り、北上してスチュワート国のトッドへ向かう。そこから西のガスコイン国インガルダへ向かえば、魔女巡礼ひととおり」
ストレは地図で、マイナが言ったルートを確認する。
確かにこのルートは、効率がいいだろう。
サリバーン、ダンダーニャとヴィクター王国の南側をぐるりと迂回しているのは、現在の情勢を考えれば当然だ。
ヴィクター王国とルイタ島、ヴィクター王国とカーラウィーラ国は国交が無いというか、ほぼ敵対関係だから。
ただそれ以外にも、マイナには何か意図があるようだと、ストレは感じる。
ある程度の期間は、ヴィクター王国からそう遠くない場所にいた方がいい、そんな意図が。
ただマイナがそう考えたとしたら、そこにはそれなりの理由があるのだろう。
だからストレは、頷いて肯定の言葉を口にする。
「確かにそれが良さそうね。ヴィクター王国時代ならともかく、ルレセン国の国民証を持っていれば、警戒されることは無いと思うし。なら私の方も準備を始めるわ」
「了承」
マイナは頷いた。
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