第19夜【解説者】ほか
【解説者】
ずいぶん前にね、みんなでラジオ番組みたいなノリで話をして、それを録音して聞き直すまでがセット、みたいな集まりをしていたことがあって……あれは何なんですかね。聞いてみたら他の人もあるんだ、ラジオ番組もどきにハマる時期が。
大学院生の時に聞いたんですけど、同級生が忘れられない録音があるっていう。それは、仲間の一人が司会役を務めて、他のみんなが一つずつ怖い話をするという企画で。ぶっちゃけ、司会してるやつは、怪談の持ちネタが無いんで司会という役職に逃げたってだけだったらしいんですけどね。
録音した時はベロベロに酔っていたんで、後日、集まって聞き直してみたら、司会のそいつ、怖い話が一つ終わるたびに「人間の純粋な思いが歪んだ方向に進んだ時の怖さってありますよね」っていう、全く同じコメントしかしない。録音した当時は、みんな酒が入っていたんで司会が何かブツブツ言ってんな、くらいで彼のコメントをちゃんと聞いてなかったんですね。それにしてもいい加減というかね。
みんなで聞き直して笑っていたら、司会者のコメントが不自然に連続したんですって。つまりは、「……怖さってありますよね」って言った直後にまた、そいつが「人間の純粋な思いが……」って話を始める。もう人数分の話は終わってるのに。 ループしてるんじゃない証拠に、さっきは聞こえなかった咳払いとか聞こえるんだて。さらに続けて「人間の……」って来たんで、流石に気持ち悪くなって消しちゃったんだって。でも、それって、聞き続けたらどうなってたんですかね。
【笑う女】
今の話をしていて思い出したんだけど、昔ね、稲川淳二さんの代表作でもある「ゆきちゃん」ってあるじゃないですか、あれが大好きでカバーっていうのかな、ちゃんと稲川さんの話だって明言した上で、身内の集まりで披露していた時期があって。
ある時、そんなに馴染みのないサークルの連中も来てる集まりで、あれやってよ、ってリクエストされて「ゆきちゃん」をやったんです。
そうしたらね、この話ってクライマックスに精神的に追い詰められた主人公が念仏を唱えるくだりがあるんですよ。その辺りを話していたら、「男性が怯えた女性を演じてる」のがどうやら笑いのツボにハマったらしくて、一人の女の子が笑い出しちゃったんです。結構な大笑いでね。それでもう、怖くも何とも無くなっちゃって、何かみんな冷めちゃって、その会合はお開きになりました。
後日、わざわざ、その女の子を連れてきた奴に謝られちゃってね。「いやいや、そもそも俺が素人なんだから仕方ないよ」と言いましたけれども。
それから何年も経ってね、そのサークルにたまたま寄る機会があったら、壁に「鍵の管理はキチンとしよう」とか書いてあるんですよ。ちゃんとしてるねって言ったら、「違うんです。前の代らしいんですけど、夜中に部室に侵入して大笑いしてる女性が居たらしくて、近隣から注意されるレベルの問題になったんですよ」って言われてね。それは何か凄く気持ちが悪かったですね。時系列的に合うもんだから、余計にね。責任の一端が俺にあるような気がして。
【出典】
……あ、また、思い出した。これは、そんな話をしていたら九州の某大学で当時、院生だった奴が「そういうの、あるよな!」って言いだして、教えてくれたんだけど。
彼が言うには、大学2年生の夏休み、部室で怪談会をしてた。持ちネタの無い奴は、携帯電話で検索して、自分の順番が来るまでに適度に怖い怪談を見つけろ!みたいなノリだったんですって。
その時に、基本的にテンパりやすい後輩が、もうすぐ自分の番だって焦って、色々と探した挙句に、検索で出てきた何かのスレッドに投稿された話を、そのまま朗読したんですが、それが本当にヘンテコな筋書きだった。
なんでも、とあるキャンプ場の湧き水近くで死んでいた男性が、夜中になると徘徊してきて、コテージの扉を決まった回数ノックしては、妙な質問をしてくる、みたいな内容で、その質問が奇抜過ぎて、全然怖くなかったらしいんですよ。
お前、結構時間があったというのに、変な話を探してくるんじゃないよ、ってみんなで笑って、その場は収まったらしいんですけど、彼、翌日から次第にサークルに来なくなって、そのまま2学期になったら辞めちゃった。
そんなに激しく責めたつもりは無かったけど、あいつとしては厭だったのかなぁとか反省していたら、秋の文化祭で、普通にそのサークルがやってる出店にやってきて、明るく同級生たちと接してるんですって。
で……何か良く由来の分からない「天然の水」を詰めたペットボトルを2つ置いて行っちゃって、怪談会をしていた人は全員ゾッとしたっていう。そんな話です。
【よくない】
そう言えば、これは未解決のままで終わる話なんですが、10数年前に、とある集まりで、確か参加者の一人に請われて「かしまさん」の話をしたんですよ。一番ベタなパターンのやつを。
その時に「その話は絶対に良くない!」「やめて下さい!」って強硬に主張する女の子が居て。ま、立場的に後輩だったらしくて「かぁなっきさんは、気にしないで続けて下さい」ってなっちゃったんですね。
どうしようかな……と思いつつ話していたら、それが、話が進むうちに、どんどん元気になっていくんですよね、彼女。
あれ? って思っていたら、ちょっとして休憩になった時に、その子に「すいません、家族が全員死ぬパターンじゃなかったんですね、失礼しました」って小声で囁かれてね。いやいや、そんな「かしまさん」、聞いたことないよ!って、ゾクッとしたんですけど、未だに出会いませんね、そのパターンには。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます