雪女の末裔、凍る。

ピピ

学園

第1話 王道学園もとい妖怪学校

 此処は妖怪学校。由緒正しい(?)学園だ。


 通っている生徒達は当然妖怪。もしくは末裔で、妖怪の血が薄い者も居る。割合としては末裔が圧倒的に多いが。


 生粋の人間も居るには居るが、数は少ない。居たとすれば、親しい友人などに妖怪が居る場合などの、身近な存在が妖怪だという者が多い。要するに妖怪関係者という訳だ。


 そんな此処では、妖怪の血が濃いほど上の立場になる事が多い。


 例えば一部の人は知っている、王道学園。それで言う生徒会や風紀といった人の上に立ち、集団をまとめあげる役割になることが多い。


 学園の外では妖怪の血を引く者は、お世辞にも良いとは言えない扱いを受けることが多い。勿論そんな事が無い場所もあるが、全体的に見れば数は少ない。


 しかしこの場所は妖怪至上主義、とまではいかずとも妖怪の血を引く者達がのびのびと過ごせる場所である。…外に比べて、という注釈が付くが。


 おまけに妖怪学校という特殊な環境に加え、此処は男子校だ。正確には学園の敷地内に二つの校舎があり女子校もあるのだが、そこまで離すかと言うほどに距離が離れているため男子校で差し支えない。関わりも殆ど無いのだから。


 そして寮暮らしの為、閉鎖的空間が出来上がり。むさ苦しい空間の完成だ。


 他の学校に行くよりかは天国と地獄ほど違うため、わざわざ外の学校へ行く妖怪はほぼいない。当然オレもこの学園へと入った。


 この学園の内情を知るまでなんて妖怪に優しい学園なんだと思っていたが、現実は残酷だった。


 此処は恋愛が蔓延っていたのだ。しかも男女関係無く、だ。


 最近では同性愛も普通になったことは知っているが、普通ここまで偏るだろうか?


 オレはその事実を知ったとき恐れおののいた。オレは恋愛事が少し苦手であり、こんなにもあからさまに恋愛恋愛されると身が引ける。見守るのは好きなのだが…。


――しかし気づくのが遅かった。


 オレはその時には血筋が血筋な為、上に担ぎ上げられ生徒会という役職にいつの間にか就いていた。仕事大変。


 影でオレがワンコと呼ばれているのを聞いた事があった。

 妙に気になり耳をそばだてれば都合よくペラペラと話しているのが聞こえた。曰わくこの学園を王道学園やら非王道学園と言っていた。


 その単語で調べてみれば小説や漫画が出てきたためなんとなしに読んでみれば何となくだが状況が分かった気がした。

 

 つまりは貞操の危機、と。


 雪女の末裔だからかは分からないが顔は整っていることは自覚している。というか家族がみんな似たような感じだし。


 しかしワンコとはこれいかに。


 オレの顔は冷たい印象を与える無表情だし、違くないか?温かみとは程遠い気がする。オレの家系、雪女だし。


 うーむ。確かに周りの人間(妖怪含む)とはよそよそしく、関わるのは老若男女関係無く苦手だ。目を合わせるのも苦手だし、前髪は自然と長くなり、目を覆う程だ。まぁ白髪で目は見えるんだけど。


 ポケットに携帯を仕舞い込み、書類を捲る。

 今は生徒会の仕事中だ。


 いい加減仕事に取りかからなければ副会長に怒られそうだ。あの人雪女の末裔じゃないのに怒ると背後に吹雪が見えるんだよな…。


 オレは怒られたこと無いけど庶務の二人と会計が怒られているのを見たことがある。


 あれは怖い。

 今日もお仕事頑張らねば。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る