第18話 Code《Apocalypse》
「あれは……」
転移ゲートを使うこともなく、突然ダンジョンの外に転移させられた俺が見たのは、視界を奪うように降る激しい雨の中、そんな暗黒の夜空を照らす異常なまでの光景。
森を抜けた先、遠く街の上空に浮かぶ太陽のような眩しい光源だった。
『対象名【
他にも三体ほどの下位天使のエネルギー反応もあります』
女の声が頭の中に聞こえてくる。
『ああ、こちらでは「
これは紛らわしいですね』
「紛らわしくさせたお前が言うなよ」
天使たちを悪魔と名付けて広めたのはお前だろうに。
『否定はいたしません。私もまさか天使と悪魔、両方の知識のある方に出会うとは考えていませんでしたので』
「それよりあれは大丈夫なのか?一日で国を亡ぼせるような奴だって話が本当なら、街に張られている魔法障壁だってそんなにもたないんじゃないのか?」
大規模な魔族の侵攻に備えて各街に施されている魔法障壁。その強度は相当なものらしく、前回の天使が現れた際に王都が亡ばなかったのは、あの障壁のお陰だと言われていた。
『そうですね。すでに街の魔法障壁は破壊されているようです。天使三体に【力天使】ですから、あの程度の障壁は簡単に破壊されてしまうのは仕方ないでしょう』
「おい!!」
仕方ないじゃすまねーよ!
『しかし破壊されて間もないようですので、街の被害もそれほど出ていないようです』
「……それほど、とは?」
『現時点で三分の一程度が焦土となっているようです』
「馬鹿か!!」
俺は反射的に走り出す。
大惨事じゃねーか!!
『走って行っても間に合いませんよ?』
「じゃあどうしろと?飛んで行けとでも言うのか?」
足元は全力で走るのが困難なほど雨でぬかるんでいた上、森に足を踏み入れると視界は完全に闇に包まれてしまった。
『この暗闇の中を走っても無事に辿り着くことは出来そうにありませんし、空から飛んで行くしか間に合う方法は無いと思います』
「飛べる……のか?」
俺が?空を?俺はそう聞いて走るのを止めた。
ファンタジーでは魔法で空を飛ぶなんて普通かもしれないが、この世界に飛行魔法があるという話は聞いたことがない。
『可能です。その為には「魔ギア」を発動させる必要がありますが』
「先に言えよ!どのみち天使と戦うのに必要なんだったら、今すぐそいつを発動させて飛んで行く!」
『説明する前に突然走り出したのはあなたですけどね。では「Magic amplifier Gia」のインストールを開始します』
「インストール?そいつはすでに俺の中にあるんじゃ――」
『適合者アベルの魔力パターンを登録します。
登録しました。
Magiブースターへの魔力の循環を開始します』
「うっ!うえぇぇぇ!」
突然、体の中の何かが激流のように流れ出すのを感じ、猛烈に込み上げてきた吐き気に耐えきれずに嘔吐する。
何だ!?俺の中で何が起こっている!?
『適合パターン青。
Magiブースターの正常な稼働を確認しました。
適合率100%。
正式にアベルを「Magic amplifier Gia」の適合者と認めます』
「はぁ、はぁ……正式に?おい!まさか本当に適合出来るかどうかを今確かめ――」
『次に「Magic amplifier Gia」の使用マニュアルのインストールを開始します』
「――があああっ!!」
頭が破裂したのかと思う程の激しい痛みに襲われ、そのまま地面をのたうち回る。
痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
それがどれくらいの時間だったのかも分からない。
『インストールが完了しました』
その声が聞こえると、痛みはすうっと消えていった。
『これで「魔ギア」の一通りの使い方は理解出来たと思います』
地獄の苦しみから解放された俺だったが、雨の中でぬかるみの上を転げ回ったおかげで、全身が酷い有様になっていた。
それにも関わらず、右手首に付けていた銀色のブレスレットだけが、泥の被害を微塵も受けずに艶々と輝いている。
「……こいつを壊したらどうなる?」
俺はそのブレスレットを睨みつけながら呟く。
『研究施設でいくらでも複製出来ますので問題ありませんが、今回の戦闘において私のサポートが無くなると、勝利の確率が格段に下がりますので、今破壊することはお勧めいたしません』
……ちっ!
このブレスレットによって、あのAIとリンクすることが出来ているらしい。
そうすることによって、「魔ギア」による実戦経験の無い俺の戦闘をサポートしてくれるとのこと。
使いこなせるようになったら絶対にぶち壊してやる!
『それよりも急いだほうが良いのではないですか?私個人としては、天使さえ全滅させることが出来れば、この世界の人類が滅んだところで構いはしないのですが』
「……
『ギアコード入力準備完了しました』
「
『Code《Apocalypse》発動します』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます