幼馴染が僕に勇気をくれた
北條院 雫玖
第1話 僕が学校に行きたくない理由
ん、何だか音が……聞こえる。まぁ、いっか。
………………
…………
……
まだ……聞こえる。何だろう……。
………………
…………
……あぁ。この音……目覚ましの音か。まだ……寝ていたい。
ふわぁ。眠い。でも、起きなきゃ。早くこの音、消さないと。えい。あれ、確かいつも枕元に置いてあるんだけど、あれ、手に触れた……感じがない。よっ、よっ。あ、あった。……やっと鳴り止んだ。今何時だろう。暗くて……よく見えない。だけど、ここのスイッチを押せば光る。あぁ、六時か。まだ、眠いけど起きなきゃ。遅刻する。寒いけど、布団からでよう。
よいしょっと。
……まだ、ねむい。それに、布団からでると、余計に寒く感じる。ふわぁ。部屋の電気点けなきゃ……薄暗くてあんまりよく見えないや。この辺りにあるんだけど……あ、あった。
ちょっと眩しい。それにまだ、頭がぼーっとする。下に行って、目覚まそう。
あ、廊下もちょっと暗い。電気つけなきゃ。……やっぱいいや、うっすらと見えるし、ゆっくり降りよう……まだ寒いななぁ。もう春だって言うのに。
あれ、リビングの電気がついてる。もう父さんと母さん、起きてるのか。……相変わらず、早起きだな二人とも。顔洗ってから、リビングにいこ。
うぅ、水……冷たい。でも、おかげてちょっとは目が覚めた。ついでに、歯も磨こう。……はぁ、今日もまた学校か。……行きたくないな。いつまでも、春休みが続いて欲しかった。早く、夏休みこないかなぁ。いや、いっそこのまま卒業したい。でも、やっぱり行かないとダメだよね。父さんと母さんが心配するし。……ふぅ。よし、ばっちり。気持ち、切り替えよ。
……リビンング、いこう。
「父さん、母さん、おはよう。あれ、父さんがいない。てっきりいると思ってた」
「あら、俊介。おはよう。お父さんなら、もう仕事に行ったわよ」
「えぇ。まだ、朝の六時だよ」
「お父さん勘違いしてたみたいで、今日は四時出勤だったみたい。だから、慌てて出ていったわよ。あんたも、学校遅刻しないようにね」
「わかってるよ。けど、父さんでも、勘違いすることってあるんだ」
「お父さんね。しっかり者に見えるけど、ああ見えて、おっちょこちょいな部分があるから。ほら、俊介も早く朝ごはん食べちゃいなさい。遅刻するよ」
「うん。いただきまーす」
今日の朝ご飯は、お米とお味噌汁、鮭と目玉焼きか。ちょっと量が多いかも。だけど、美味しい。……今何時だろう。まだ、六時三十分。学校まで、ここから自転車で約三十分かかるから、七時三十分に出れば間に合う。
「ごちそうさまでした。食器、持っていくね」
「ありがとう。流しに置いといて」
「はーい」
さてと、自分の部屋に戻って支度しよう。
教科書、筆記用具、ノート、スマホ、お財布。……お財布、置いていくか。いやでも、コンビニで何も買えなくなるのは困る。だけど……いや、やっぱり持っていこう。これで、忘れ物はない。後は、制服に着替えれば身支度はお終いだ。えっと、時間は七時ぐらいか。……はぁ。正直言って、学校には行きたくない。いっそのこと、早く卒業して早く大学に行ってみたい。けど、あと一年もあるのか……長い。そのためにも、まずは勉強を頑張らないと。学校……行きたくないけど、行くしかないよね。
「母さん。学校行ってくる」
「うん。いってらっしゃい。車に気をつけなさいね。あと。はい、これ、お弁当作ったから持っていきなさい」
「あ、ありがとう」
お弁当、カバンにいれなきゃ。それと、鍵とヘルメット。被らないと先生に注意されちゃう。
「いってきまーす」
今日はいい天気だな。だけど、まだ寒い。それに、自転車漕いでるから、風が余計に冷たく感じる。でも、足を動かしている分、身体は暖かい。この道は、もう数えきれないほど通ってるけど景色は変わらない。入学したての頃は、よくこの周辺を寄り道してたっけ。
あれから、もう一年ぐらい経つのか。時間の流れって、意外と早いんだな。……今は、とてつもなく長く感じるけど。寄り道しながら暇つぶしで、家の外観と表札を見ていたら、いつの間にか覚えてしまった。
ここは斎藤さん。こっちは田中さん。ここの空き地は、いつもフェンスが張ってあるから中に入れない。この先には小さな公園があって、その隣は空き家。……あれ、違う。
つい、気になって止まってしまった。よく見ると、表札がある。へぇ、瀬戸内さんって言うのか。新しく引っ越してきたんだ。いつ引っ越してきたんだろう。しかも、隣が公園だから覚えやすい。けど、これ覚えて意味があるのだろうか。うん、多分ない。学校へ行こう。今、何時だろう。えっと、まだ七時四十分か。正門まで、八時三十分までに行けばいいから、ゆっくりのんびり進もう。まだ時間、あるし。
もうすぐ正門だ。今日は、どの先生が立っているんだろう。よく見えない。けど、この辺りから降りなきゃ注意されちゃう。あ、見えてきた。今日は佐久間先生だ。
「佐久間先生、おはようございます」
「おう。
「ありがとうございます」
佐久間先生、朝から元気だなぁ。ああやって、先生たちが変わりばんこで正門に立ってるんだよなぁ。大変だよね、きっと。さてと、自転車を置きに行こう。……岸野君と三上君が、いなければいいけど。でも、怖くて何も言えないし……。
いないことを祈ろう。
「おはよう。
……祈りは通じなかった。この世に神様なんている訳ないよね。……まだ救いかも。岸野君だけだった。
「え、う、うん。そうだね。お、おはよう。岸野君」
「どうしたの、楠木君。元気ないねー。それと、自転車、駐輪所に置かないとダメだよ」
「ちょ、ちょっと」
肩を思いっきり押されてた……痛い。
「こらぁ、ダメでしょう。つまずいて、バランス崩しちゃ。転んじゃったじゃん」
「そ、それは岸野君が」
「へぇ。俺が……どうかしたのか、な」
「いたっ」
今度は転んだまま、頭を殴られた。ヘルメット被ってるけど、それでも痛い。
「あ、やべ。そろそろ予鈴鳴っちまう。じゃあ、またね。
はぁ、駐輪場に来るといっつもこうだ。でも、怖くて何も言えない。これがあと一年も続くと思うと。……だから来たくなかったんだよなぁ、学校。ちっとも楽しくない。けどよかった。今日は、お金のこと言われなかった。だけど、制服が砂だらけになっちゃった。とりあえず、自転車を空いてるスペースに入れて、砂を落とさないと。
うん。これだけ落とせば大丈夫だ。
僕も、教室に行こう。佐久間先生から注意されちゃう。
予鈴鳴っちゃったけど、佐久間先生はまだ来ていない。良かった。
でも、何でだろう。僕が教室に入ったら、みんな一斉にこっちを見た。ま、いっか。とりあえず席に座ろう。僕の席は、一番後ろの窓際。あれ、隣に机がある。誰の机かな。僕が最後だったのに。
「はーい、みんな席に着けー。って、もう座ってるな」
「せんせーい。新しい机があるのは何でですかー」
「そんなの、新しい生徒が来るからに決まってるだろう。というか、三上。三上がいの一番で、先生のとこ聞きに来ただろう」
へぇ。そうなんだ。だから、あの時、岸野君だけだったんだ。それに、転入生が来るのか。じゃあ、僕の隣に机があるのはその人の分か。それにみんな、大騒ぎしてる。……それもそうか、転入生なんてそう来るもんじゃないもんなぁ。
「じゃあ、みんなに紹介するぞ。入ってきなさい」
どんな人が来るんだろう。優しい人がいいなぁ。
「みなさん、初めまして。岡山県から来ました
「じゃあ、瀬戸内は一番後ろに新しい机と椅子用意してあるからそこへ座ってな」
「分かりました」
……僕の隣。なんか、みんなからじーっと見られてる。って、そんな訳ないよね。見てるのは、転入生の人。……うわ、岸野君と三上君にすごい睨まれてるような。こっち見ないでよ。あ、隣に座った。この子、近くで見ると、可愛い。
「ねね」
……三上君と岸野君、まだこっち見てる。
「ねね、ねぇってば」
え、もしかして、僕に話しかけてるの。
「は、はい」
「私、
「あ、はい。よろしくお願いします」
「うん。よろしくね。君の名前、教えて欲しいな」
「あ、う、うん。
はぁ、女の人と話すの苦手なんだよなぁ。しかも、まだこっち睨んでる。早く、授業して先生。
「こら、三上と岸野。いつまでも瀬戸内を見てるんじゃない。これから授業始めるから前を向けー」
……助かった。授業の準備しよ。
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