第11話
「遂に来たぞ風俗街! もう眺めるだけの俺とは違う! 今の俺はここで好きなだけ遊べるんだああああっ!」
どこか歌舞伎町を思わせるでかくてギラギラした門を通り、俺はチート村の風俗街へとやって来た。
だが、ハイテンションの俺とは裏腹に風俗街はガランとしていた。客引きをしている者もほとんどいない。
それもそのはず、現在の時刻はお昼の2時である。
風俗街の本番は夜なので開いてる店は少ない。
いくらチート成金が多いとはいえ、昼間から遊ぶやつは中々いないからな。
「そんな……俺のこの溢れるリビドーはどこにぶつけたらいいんだ……」
落ち込んでトボトボ歩いていると、俺の視界に人混みが映り込む。
なんだ、しっかり賑わってるじゃん。
虚しくなるからあんまり来ないようにしてたし、メイン通りを間違えてたのかもしれんな。
「はい、こちらの超絶美少女! 彼女の──が、一晩好き放題! 金貨10枚からスタートです!」
近づくと、司会が調子のいい声で集まった人を煽っていた。
これは……オークションか?
なるほど、確か昔の遊郭でも人気の高い嬢は一晩の値段を競りで決めていたという。ここは異世界だし、珍しいことじゃないのかもしれない。
よーし!おじさんも参加しちゃおっかな。金なら山ほどあるしネ。
なんて、パパ活おじさんみたいなゲスいことを考えながら俺はオークションのステージを見た。
——次の瞬間。
「ひゃ、100枚! 金貨100枚ッ!!!」
俺は頭に雷が落ちたみたいな衝撃が走り、気付けばオークションに参加していた。
ステージの上にいたのは、薄手のドレスを着て恥ずかしそうに俯く色白貧乳金髪ツインテの超絶美少女だった。
古いオタクである俺にとって、好みどストライク最高の子である。
「金貨100枚出ました! 誰かいませんか……? お、150枚! 200枚! いいですね〜! こんな美少女はそうはいませんよ! さあ200枚より上はいませんか?」
「300枚ッ!!!!」
気付けば俺はなりふり構わず叫んでいた。
あの照れた表情、本物のお姫様みたいに気品のある佇まい……かわいすぎる。きっと物凄い売れっ子に違いない。俺のエロセンサーが異世界風俗の初めてを飾るのに相応しいのはあの娘しかいないと叫んでいる。
やがて入札者は減り、明らかにどこかのお偉いさんっぽいハゲジジイと俺の一騎打ちとなった。そして、
「金貨700枚出ました! 他にいませんか? それでは、金貨700枚で落札です!!!」
俺は遂にあの美少女を落札する事に成功した。
金貨700枚……獄炎竜の試練での稼ぎを殆ど使う形になったが、後悔はない。
今の俺には力がある。金なんてこの後稼げばいいのだ。
というか金を貯めて安定した生活を送るよりも、酒と風俗に全てを費やして俺は散りたい。
「落札された方は、奥でお支払いをお願いします」
俺はオークション会場の奥の料亭みたいな超高級娼館に通され、そこで受付の老婆に金貨700枚耳を揃えて支払つた。
「あの娘は既に上で待たせてあるでさ。今から明日の朝まであの娘はあんたのもんだ。……ま、なるべく優しくしてやってくれ」
顔の小さい湯バーバみたいな老婆にそう言われ階段を上がる。
2階にあったのは内風呂付きの豪華な部屋だった。畳はないが和風っぽい部屋は薄暗くいい香りが漂っている。
「お、お待ちしておりました……」
部屋の入り口で俺の買った金髪ツインテの美少女がドレスの端を持ち上げ優雅にお辞儀をする。素人目にもわかる洗練された仕草だ。
「改めまして。ソフィアと申します。本日はワタクシの初めてを買っていただきありがとうございます。あれ程の高額を出していただけるとは……さぞ高名な冒険者様なのでしょうね」
うっとりとした目で見つめられ俺は思わず照れてしまい……え待ってなんか今変な事言わなかった?
「あの……初めてというのはどういう……?」
「……? 先ほどのオークションでワタクシの処女を競り落とされたのは、冒険者様ではありませんか」
「え……あれってそういうことだったの!? 俺はてっきり売れっ子はああやって値段を決めるものなのだと……」
手持ちが増えすぎて浮かれていたが、冷静に考えると金貨700枚は高すぎる。
というか処女オークションってどんな倫理観だよ。いやまあ奴隷制度のある世界だしおかしくはないのか……?
「あの……もしかして存じてなかったのですか?」
「……存じてなかったです」
俺とソフィアさんの間に気まずい空気が流れる。
どうしよう俺別に処女厨じゃないんだけど。なんなら気を遣って疲れるからちょっと苦手なくらいだ。いやまあこの子は物凄くタイプだし? そんな子の初めてに興味がないわけじゃないんだけど……異世界で最初の風俗は、出来れば売れっ子嬢とがよかったというのが本音である。
「あの、因みにキャンセルとかって……」
「そ、それはダメ!!! 君がキャンセルしたらあのハゲに買われちゃうんだよ!? それにボクは強い冒険者の人に買ってもらわないと……」
俺がそう口走ると、ソフィアさんは慌てた様子で詰め寄って来た。
というか口調がめっちゃ変わっている。こっちが素なのだろうか。
「あ、その……すみません。ワタクシとしたことが取り乱してしまい……」
ソフィアさんは顔を赤くして俺から離れ、丁寧な口調に戻る。
「いや、俺も悪かった。知らなかったとはいえ買ったのは俺なわけだしな、キャンセルはしないよ」
まあナンバーワンの子でもこの子よりタイプだとは思えないし。これだけの美少女の初めてを貰えるというのは悪い経験ではないだろう。
そうして俺たちは早速行為をするため、部屋の内風呂に入ることになった。
「……服を、脱がせますね。そうした方がいいとあのおば様に習いましたので」
おば様というのは多分受付の老婆の事だろう。
ソフィアさんは俺の背後に回り、ゆっくりと服を脱がせていく。だがその手がズボンに差し掛かったところで急に止まった。
……彼女の手は、震えて物凄く冷たくなっていた。
「ソフィアさん……?」
「も、申し訳ございません。緊張してしまいまして……」
俺が声を掛けると彼女はそう気丈に謝るが、その後も一向に手は動きそうにない。
よく見れば顔も真っ青になっている。
「俺みたいなおっさんが初めてはやっぱり嫌か? それなら別に辞めてもいいんだぞ?」
「——っ、嫌なんかじゃない! ボクは国の為に、どうしても強い冒険者の人に抱かれないといけないんだ! その為ならボク自身はどうなろうが――」
ソフィアさんはまた素に戻って必死に震える手でズボンを脱がそうとする。
俺はそんな彼女を見て……どうしようもなく怒りがこみあげて来た。
「……ふざっけんじゃねえ!!! あんたにどんな事情があるかは知らんが、行為中にそれを持ち出すのは風俗として一番ダメだろ。おしちょっとそこ座れそんでそのよく分からん事情を全部話してみろ!」
「え、話していいのダメなのどっち!?」
そうして俺は有り余るステータスに任せ、彼女を強引にベッドの上に座らせたのだった。
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