妖刀使いと妖怪ハーレム~魔を引き寄せる妖刀のせいで妖怪少女達に結婚を迫られまくっている~

シャロ山

序章 妖刀使いになった日

第1話 妖刀を手にした日

 俺、鏑木灯架かぶらぎとうかは父方の爺さんが代々デカい会社をやってること以外は全て平均的な高校二年生である。友達の数は程々、彼女はいない。いつも波風立たずとも日々是平穏という悪くない人生を送ってきた……だけど、そんな平穏の終わりは、自分の手によってもたらされるなんて、思いもしなかった。


 それは盆の時のこと。俺は普段はアパート住みで家族とは別居しているが、盆と正月には合流して、一週間ほどはその爺さんの実家で過ごすのである。


 そして、その三日目に事件は起こった。その日は朝から実家にいる男手総出での蔵掃除に駆り出されていた。爺さんは代々会社をやってると言ったが、祖父の家系は先祖代々から地域を牛耳ってきた豪農の家系で、家の敷地内に蔵が何個もあるのだ。俺は父さんや叔父さんと共に、その蔵の一つを掃除していたのである。


 全く埃臭いところだ、なんて思いながら掃除をしていた。そこは定期的に掃除されていた他の蔵とは違って、なぜか何十年も手付かずだったらしい。


 こうなったのは爺さんがさらにその爺さんにあることを教えられていて、そのせいで立ち入ってはならないとされていたのだが、今年の親戚総出の家族会議で、だからといって何か駄目なものが入っていたら不味いというか、爺さんの会社の心象的に良くないから、とついにその禁が破られたのである。

 

 しかし中にあるものは少々面白い。

 良くわからない古文書だったり浮世絵だったり、旧紙幣の山に小判。蔵と言うよりかは宝物庫のようだった。歴史は好きな方ではないが、こういうのはかなりワクワクする質だから、ぐんぐんと突き進んでいった。そして、蔵の一番奥にたどり着いた。そこには、おびただしい数のお札のようなものが張られた細長い箱があった。


 お札は容易く破れた。余程古いものであったらしい。開けると、その中には、その箱とはそぐわないような、真新しい刀があった。


「え? これ刀? マジで!?」


 思わずテンションが上がって手に取ってしまった。艶のある白の鞘に金色の鍔。細部に獣か妖怪のような意匠があしらわれている黒い柄。もしかして、と思い刀を抜こうとするとあっさりと抜けて、ギラギラの白銀の刀身が現れる。


 テンションが上がっていた俺の声を聞き付けて、父と叔父もやってくる。

「え、それ本当に刀なのかい、真剣? すごいなあ」

「いや、すごいなあ、ではないだろう。その刀、多分申告とかされてないだろ?」

「そっか、じゃあ親父呼ばなきゃだね。少し待っててね、灯架」

 そう言って父さんは爺さんを呼んできた。すると、刀を持った俺を見るなり、爺さんは血相を変えてこちらに駆け寄ってくる。


「お、おめぇ、その刀抜いたんか!?」

「う、うん、でも少しだけ」

「何が少しじゃ、刀抜くのに少しもクソもないわ!え、えらいこっちゃあ……大変なことになるぞ!」

「ええ?」

 まるで山奥の触れちゃいけない祠を壊した時みたいな反応をされて、そんなに? とおもったが、爺さんはこう説明した。


 その刀は『婚白夜くながいびゃくや』という銘を持つ刀で、爺さんはそれを魔を引き寄せる妖刀として伝えられていたらしい。刀を抜いてしまったが最後、持ち主として認定され、絶大な力を与える代わりに魔を引き寄せ、持ち主を呪うらしい。また、一度手放しても持ち主の行く先々に現れ、持ち主を死ぬまで呪い続けるのだとか。


「いや、でも。そんなの噂でしょ」

 けれども爺さん以外は俺を含めてその噂を信じなかった。そしてその後、叔父さんが警察にその刀を提出しに言った。実際、その後も何か起こることはなく、平和に盆が終わって、俺は家族と別れてアパートに帰った。


「ただいま~……」

 誰もいない部屋に呼び掛ける。帰った時にはもう夜だった。部屋の電気を付ける。すると、テーブルに何か長いもののようなものがあるのに気付く。


「? なんだろ」

 出掛ける前にあそこに何か置いた記憶はないんだが、と近寄って見ている。

 それは、白い鞘に金色の鍔。黒い柄には金色でレリーフがあしらわれている……


「え」

 え?

 嘘?

「う、う……」

「うわぁぁぁぁあああ!?!?!?!?」

 呪われたぁぁあーーーーーッ!!!!!!!


 妖刀の言い伝えは、本当だったのであった。

 

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