(二)-15

 大声でそう言う丈の態度は、カナコとレイカにとってはいつものことらしい。大声で笑うジョーをよそ目に、カナコが「拓弥君、何かあったの」と拓弥の顔を覗き込んできた。

「そうよ、さっきから暗いよね」

 レイカも顔を覗き込んでくる。

「コイツはもともとそういうヤツなんだよ。特に今日はな」

 丈の含みのある言葉に「エー、何かあったの?」と拓弥の左側のカナコが尋ねる。続けて右側のレイカは「ヤなことがあったなら、私が癒してあげる」と拓弥の腕に自分の体を密着させて顔を覗き込む。

「俺も癒してくれよ」

 ジョーが両手の平を上に上げて見せるが、「丈さんにはアイコちゃんがいるでしょ!」とカナコとレイカにハモられていた。

 それでも拓弥の顔に笑顔は戻ってこなかった。


(続く)

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