救国の女神が世界を救うまで。
第40話 救国の女神は半魔半人を人に戻す。
ナイヤルトコを抜けてアルデバイトを目指すと、国境付近では戦闘になっていた。
だがそこにザイコンの姿はない。
あっても飛行能力を持たない半魔半人と、おびただしい数の魔物達だった。
明らかな物量差、そしてナイヤルトコ軍は魔物も含めた混成部隊。
アルデバイトには奇跡でも起きなければ勝ち目はない。
「皆を守らなきゃ!」と言ったメーライトは、アイの身体でも問題なく救済のペンを取り出して、「アルーナさん!アジマーさん!お願い!」と喚びつけて、「魔物は倒して!兵士さんと半魔半人さんは殺さないで!」と言う。
アルーナとアジマーは現れるなり、「全殺しなら早いのに!」と言うアジマーに、アルーナが「泣き言を言うなアジマー!」と言うと、メーライトに「神様!アーシルとアナーシャも喚んでくれ!アタシとアジマーじゃこの内容相手だと手が足りねぇ!」と言った。
地表に現れたアルーナとアジマーの声を聞きながらメーライトは、「ううん。やれるよ」と答えると、「アーテル…お姉ちゃん、私の身体を抱きながら、魔物からアルデバイトの人達を守って」と横を飛ぶアーテルに言うと、アーテルはニコリと笑って「任せなさいアイ」と優しく答えると、「アイスウォール!」と唱えてナイヤルトコとアルデバイト間に氷の壁を作る。
氷の壁で敵味方が分断されて困惑しているタイミングを逃さずに、「アルーナさん、半魔半人の人達を人に戻します。魔物から守ってください」と言った。
「神様!?そんな事」
「やれるよ。やるの。それが司書様の願い。私が頑張るの。体内の宝具…、力を貸して。光の範囲を拡大。【切除】」
メーライトが、天から光の帯を半魔半人達に向けて放つ。
光の帯が当たると皆うずくまった。
ここまではメーライトの想定通りだったが、違っていたのは半魔半人のコアの部分、最初に魔物と融合させられた足や腕が切断されてしまい、人に戻ると同時に、切断個所から出血していた。
「魔物の部分が切り落とされると、そこが本当に切られるの!?アーテル!お姉ちゃん!アノーレさんを喚ぶから私と一緒に抱き抱えて!」
「わかったわ!呼びなさいアイ!」
メーライトがすぐにアノーレを喚ぶと、アノーレはアーテルの腕に抱かれながら、「命が助かっただけでも感謝しなさい!広域治癒魔法!」と唱えて、半魔半人達の出血を止める。
その間にメーライトが、「部隊長さん!ナイヤルトコの人達も保護してください!この戦争は人が死ぬことが目的の儀式なんです!私と私の家族が魔物を倒しますから!人は必ず保護してください!」と言いに行くと、部隊長もヤヅマーミ砦で暮らしていた人間で、アノーレもアジマーも見た事があったので素直に従う。
今もアルーナとアジマーが魔物の群れをコレでもかと倒していて、「これで!アルデバイトを守ればアタシ達と神様の勝ちだろ!」、「そうね!範囲氷結をさせるから、倒してしまいなよアルーナ」と言っている。
出血が止まって歩けるようになった、左腕を失った元半魔半人が、アルデバイトの兵士に保護をされてくると、「女神…様?ザイコン様とシムホノンが言っていた?」と弱々しく聞いてくる。
メーライトが「はい。儀式の事は聞きました。私が儀式を止めます」と言うと、元半魔半人兵は「でしたらすぐにアルデバイトの城と砦に…、別働隊がいます」と伝える。
「ザイコン様は城…、半魔半人部隊は砦です」
「わかりました。ありがとうございます」
メーライトは元半魔半人兵に礼を言うと、そのまま「アノーレさんは一度戻って、アルーナさん、アジマーさん、お城と砦が狙われてるから行くね。維持が辛くなったら消すから限界まで頼んで良い?」と確認をする。
「おうよ!任せろ!城と砦は任せた!」
「ふふ。神様、競争よ。神様が私たちを消す前に、私達がここの魔物を殺せていたら私たちの勝ちよ!」
メーライトはその言葉に頷くと、もう一度「動ける人はナイヤルトコの人達の保護を!皆はもう戦わないでいいの!魔物を倒すのに、怪我をした人達を守る為に力を貸して!」と言うとアーテルと飛び立つと、そのままアルティに声をかける。
「アルティ!ザイコンさんが城に向かってる!外で備えて!」
「了解!アルは頑張るよ!メーライトはどこに居るの!?」
「今飛んでる!段々とアルデバイトが近づいてる!今も兵士さんを助けた事を王子殿下に伝えて!」
「了解」
少しして、「おい!敵が来る!中にはザイコンも居るらしい。アルが前に出てやるから、お前達は人々を避難させろ!」とアルティの声が聞こえてくる。
メーライトはアルティの声に頼もしさを感じて飛ぶと、さっさとアルデバイトを目指す。
「お姉ちゃん、アルティだけではキツいの、私を抱えながら私を守って、本気の速度を出して欲しいの」
「やれるよ。風魔法でこの身体を守るよ」
さらに加速したメーライトとアーテルは、あっという間にアルデバイトの城へとついた。
離れた平原で、アルティがザイコンの足止めをしていて、残りの兵士が魔物を引き連れて城に突入している。
あのアルデバイト陥落の再現。
メーライトは状況の把握を済ませると「アルティ!あと2分耐えて!」と言う。
「へへっ、それくらいならやれるよ。後でお風呂!」
「背中洗ってあげるよ!」
メーライトの返事に嬉しそうに「約束だよ!」と言う声を聞きながら、一直線に城を目指し…その最中、復興した門の前に「アーシルさん、お願い。アルーナさん、アジマーさん、もう一度ごめんなさい」と言って喚び、「今の私ならやれる。アナーシャさんを城のバルコニーに…。アーセスさんも。アナーシャさん、アーセスさん、来て」と指示をすると離れた場所でもアナーシャとアーセスを喚べた。
「神様!お任せください!」
「火事の対応と、逃げる人のことは任せて!」
アーシル達も門を塞ぎ、「あの日の再現!」「でも今度は違う!」「完勝するよ!」と言った。
アーテルを連れたメーライトがバルコニーから城に入ると、神官達が「お待ちしておりました」とメーライトを迎えに来て「神々しいお姿。夢枕に立たれた神様からの神託通りでございます。どうぞそのお力で、この世界をお救いください」と言う。
メーライトは「やってみます」とだけ言うと、老騎士とハサンドムを呼んで「この身体を守ってください。今は魂がないと思ってください。食事や睡眠、トイレなんかは勝手に行きます」と言い、「アーセワさん。お願い」と喚ぶと、アーセワが「お任せください。何のご心配も要りません」と言う。
メーライトはアーセワに身体を任せると、バルコニーからアナーシャ達に手を振ってアルティの元を目指した。
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