第19話 転職可能の職業は?

 意外に【さちここばやし】のスキルが良かったので意気揚々と俺達はボスフィールドを出た。


「このポータルを使うと一階のロビーに飛べますよ」

「おお、それは便利だねえ」

「十階から下は半グレが少ないし、ぐっと冒険しやすくなるのよ」

「いいねえ」


 半グレがあまり居なかったら敵は魔物だけで、狩りで大もうけだね。


 ミキちゃんがポータル石碑にタッチして消えた。

 おおっ。

 ヒカリちゃんも、ヤヤちゃんも、ケインさんも消えて行った。


「さあ、ヒデオさんも」

「ありがとうございます、じゃあお先に」


 山下さんはしんがりで飛ぶんだな。

 俺はポータル石碑にタッチした。

 一瞬で視界が歪んで気が付くとポータル石碑が並ぶコーナーにいた。


「ね、簡単でしょ」

「ああ、もう一階か、これは早いねえ」

「次に冒険に出る時は、このポータルを触ると十階に出れるんですよ」

「便利だねえ」


 山下さんが飛んで来て、全員が揃った。


 ケインさんがモジモジしながら話しかけて来た。


「あの、ヒデオ、さん、また今度護衛に付いてくれないだろうか、僕は四十階以上じゃないと、なかなかレベルが上がらなくてさ」

「だめでーす、ヒデオは『サザンフルーツ』専属ですよ、ケインさん」

「ええ、僕もゴリラさんたちに守られて狩りをしたいよ」

「まだ四十階までは遠い感じですよ、その階層まで来たら一緒に行きましょうよ」

「んもうっ、ヒデオは甘いんだからっ」

「ケインさんもフロアボスを倒して行かないと」


 山下さんがたしなめるように言った。


「ケインさんはどうやってレベル上げたんですか?」

「え、ああ、僕は、その、護衛の人と一緒に五十階ぐらいで養殖上げをしたんだよ」

「養殖?」


 ブリとかだろうか。


「ヒデオ、誰かに魔物を倒して貰って経験値の霧だけ貰ってレベル上げする事を養殖って言うのよ」

「おお、そうなの、ヒカリちゃん」

「だから、レベルは高いだけど、戦い方は下手っぴなんだよ」

「そうですなあ、せめて剣はちゃんと使えるようになると良いですね」

「あ、やっぱり【剣術】スキルを持って無いの、解る?」

「ええ、なんとなく」


 というか、俺も何のスキルも……。。

 あ、スキル【ゴリラ】が付いていたな。

 どんなスキルかはわかんないけどね。


「とりあえず、魔石を換金して、終了処理をしましょう。ヒデオさん、終了処理は護衛の仕事でもあるから、覚えてくださいね」

「解りましたよ」

「ヒデオってそういうの苦手そう」

「私とか、ヤヤちゃんの方が得意かもね」

「いやあ、スタッフの仕事をタレントにやらせるのはいきませんよ」


 なるほど、俺は護衛スタッフ、『サザンフルーツ』やケインさんはタレントなんだな。


 とりあえず山下さんに終了処理のやり方を聞いた。

 魔石や戦利品を売って、今回の狩りの収支報告書を会社に出すらしい。

 会社はその報告書で、サラリーに色を付けたりするっぽいね。

 なかなか大変だなあ。


 山下さんと一緒に、一通りの処理をして見た。

 魔石を売って、お金を『リーディングプロモーション』の口座に振り込む。

 今回はあまり装備は出なかったので、装備売りは無し。

 ドロップしたレアスキル【さちここばやし】はミキちゃんが取ったので、それを会社に知らせないといけないらしい。


「まあ、ルーティーンだから一度覚えてしまえば簡単だよ」

「そうですな」


 まあ、倉庫の荷運びでも作業伝票は出していたしね。

 なんとかなるでしょう。


「ヒデオはクラスチェンジの診断をして貰うべき」

「べき」

「べきですねえ」

「診断って?」

「悪魔神殿ではクラスチェンジが出来るかどうか見て貰う事ができるのよ」

「ああ、戦士になれるかもしれないね」

「いこういこう」


 皆でロビーの端にある悪魔神殿へと向かった。

 ドアを開けるともの凄い美人の髪の毛がヘビの女の人が笑いかけてきた。


「あれ、でっかい目玉の人は?」

「日によって悪魔神父さんは違うのよ、今日はゴーゴン様ね」

「こ、こんにちは」


 おお、髪のヘビがクネクネ動いているね。


「今日は何の御用かしら」

「ヒデオがジョブチェンジ出来るか見て欲しいの」

「では、こちらにいらっしゃい」

「は、はい」

「デレデレしないのっ」


 ヒカリちゃんにお尻をつねられたぞ。

 痛い。


 ゴーゴンさまは俺の体をまさぐった。

 なんだか、甘いような良い匂いがするね。


「ふむ、『戦士ウォーリア』をやるなら、もう五レベルぐらいかしら。『魔物使いモンスターテイマー』をやるなら、あと二レベルぐらいかな」

「「「「え?」」」」


『うおおっ! 新職業!! 『魔物使いモンスターテイマー』きたーっ!!』

『ゴリラ使役の関係か? どんな職業ジョブだ? 後衛? 中衛?』

『転職条件はステータスだけじゃあ無さそうだな、従魔が居るか居ないかか?』


 リスナーさんたちが騒いでいるな。


「『魔物使いモンスターテイマー』ってなんですか?」

「魔物を使役して戦う職業ジョブね。『魔物使いモンスターテイマー』になると迷宮の魔物もテイムして使役できるわよ」

「すごい強力そうな職業ジョブね、ヒデオ!」

「わあ、世界初の『魔物使いモンスターテイマー』」

「あとちょっとでなれるんですか?」

「ええ、あと二レベルぐらいね、頑張って」


 『魔物使いモンスターテイマー』になればゴリ達も強くなるかもしれないな。

 よし、二レベルアップしたらテイマーになろうっと。


 俺達は悪魔神殿を後にして迷宮を出る事にした。


「今日は一緒に晩ご飯を食べましょうよ、ヒデオ」

「そうそう、奢るよ、ヒデオさん」


 ヒカリちゃんとケインさんが食事に誘ってきた。

 まあ、狩りの後だと業務の内かもね。


「山下さんもご一緒ですか」

「そうだね、みんなでレストランでも行こうか」

「行きましょう行きましょう」


 今日は洋食かあ。

 ステーキでも食べようかな。



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