第6話 Dアイドルって言っても大変そうで
「なるほどねえ、迷宮の運営側がダンジョンでのアイドル活動を規制しはじめたから、昔のように気楽にアイドルを迷宮に入れてうたって踊らせるという商売が出来なくなったのか」
「そうなんだよ、ちょっと前まではお金を払ったら割と楽に撮影とかライブとかが出来たんだけど、
歌を歌って冒険する
「迷宮には動画配信のシステムが揃ってましたし、舞台としてもエキゾチックで良かったのですが、ちゃんと冒険するパーティ以外はお断りと言われましてね。我が社のDアイドルパーティも路線変更を余儀なくされている訳なのですよ」
「とにかく、十階を超えないと、半グレがいっぱいで、きちんとした配信にならないので、喫緊の目標は、十階のフロアボスを倒してE級パーティになることなんです」
なるほどねえ、それで山下さんとか、野末さんたちと一緒に迷宮に潜っていた訳なんだね。
「で、誰かが『サザンフルーツ』を狙って妨害をしていると、いう事だね」
「そうね……」
「余所から来たグループの奴だよ、きっと」
「ヒカリちゃん、駄目よ、憶測で物を言っては」
「だってえ、ミキ」
「余所から来た?」
「ちょっと前に最大手の芸能事務所がつぶれまして、そこに所属していたアイドルグループを沢山移籍させたんですよ。移籍してきたので、前の事務所に居た頃の手厚い対応が出来なくなっているパーティもありまして、不満も高まっている感じですね」
「『サザンフルーツ』は、昔からリーディングプロモーションだったの?」
「去年のスカウトキャラバンで見つけてもらったんだ~」
「三人で組んで、デビューしたんです。わりと良い感じに知名度が上がってますよ」
「リーディングプロモーションの秘蔵っ子なんだね」
「いやあ、そこまででも」
「チョリ先輩とか、みのりんとか居ますからあ」
「他にも何グループもいるから競争が激しいのよ。だからお願いっ、ゴリちゃんで私たちを守って、ヒデオ」
さあて、どうしようかなあ。
迷宮で狩りをすれば結構稼げるのは解ったけど、やっぱり俺はおじさんだからなあ、ゴリたちが居るからといってあまり見てくれるものではないだろうなあ。
『サザンフルーツ』の護衛をすれば固定給だし、寮は入れるし、待遇は凄くいいね。
でも、リーディングプロモーションさんに雇われる形かあ。
おじさん、自慢じゃあ無いけど自由が好きなんだよね。
気にくわない事があったらふらっとやめて他の都市の港湾に行って荷物運びをする、そんな風来坊な生活をずっと続けていたんだ。
『サザンフルーツ』さんの護衛をするというのは、そんな生活を捨てるという事で……。
「よし、『サザンフルーツ』に悪さを仕掛けている連中が暴かれるまで、護衛してあげよう」
「ずっと護衛してくれるんじゃないの?」
「うーん、あまりリーディングプロモーションさんに迷惑を掛けるのは気が進まないんだよね。だから傭兵みたいな感じで一つ」
高橋社長はふんわりと笑った。
「ヒデオさんのお気持ち、なんとなく解ります。渡っていく風のような自由を手放したく無いのですね。バックバンドの職人プレイヤーにも良くいるタイプですよ」
「ああ、居そうだねえ」
バンドマンとか、自由業っぽい雇用の人は芸能界には多そうだね。
「ヒデオは推理とか出来るの?」
「な、何を言っているのよヒカリちゃん、俺は推理とかできないよ」
「じゃあ、どうやって悪者をあぶり出すの?」
「『サザンフルーツ』さんを護衛して攻撃を跳ね返していたら、きっと暴きだせるよ。世界はそういう風になってるんだ」
ミキちゃんがふわっと笑った。
「ヒデオさんらしいですね」
「推理するって言い出したら追い出す所だったよ」
「出たとこ勝負ですけど、たぶんそれが一番正しいですね」
悪さをする人間は動きが変になるから、解るんだよね。
焦れば焦るほど動きは雑になるからね。
こっちのやる事は簡単だ、普通に実直にしておく、それだけでいい。
悪い奴って弱いから、それだけで効果があるんだよ。
「『サザンフルーツ』は、リーディングプロモーションでは、売れっ子の方ですか?」
「三番目ぐらい~」
「チョリ先輩が手堅くて実力派だよ、あとみのりんが凄くブレイクしているよ、『サザン』その後ろだね」
「リーディングプロモーションの所属するアイドルバンドはどれくらいですか?」
「五十……、ぐらいかな。売れているパーティ、売れて無いパーティ色々だね」
「全部に均等に力を入れている訳では無いんですな」
「もちろん、売れそうな目があるパーティには敏腕マネージャーを付けたり、良い仕事を振ったりするよ」
ああ、そうすると、つぶれた余所の事務所から入ったパーティの子とかは焦るだろうなあ。
半グレの組織に、目障りなパーティを潰して下さい、と依頼するぐらいに焦るのだろう。
「とりあえず、今日はヒデオさんの歓迎会で、美味しい物でも食べに行こうか、おごるよ」
「わあ、社長、ふとっぱら」
「たのしみ、雪園に行きましょうよ」
「ミキちゃんは雪園好きよねえ」
「だって、美味しいものっ」
雪園ってどこだろうか。
おじさんはあまり高いお店の事はしらないからなあ。
富士そばとか、太陽軒とかは良く行くんだけどね。
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