chapter2 進む決断
「ぐ、ガァァァ。」
エクシスタンスとなった亮は咆哮をあげる。
「おっ、おい亮。」
冬弥は未だ自身の目の前で起きたことに脳が追いついていない。
「亮!!亮。」
もう既に亮ではないものに対して必死によびかける。
かつて亮だったエクシスタンスそんな呼び掛けに反応するはずもな右手のく鋭い爪を冬弥に向けた思いっきり振りかざした。
ガンッ。
冬弥は足を滑らせたことによって、すんでのところで爪を避けることに成功した。
「おい。亮、俺だよ。冬弥だよ。小さい頃からの友達だろ。」
亮だったエクシスタンスは冬弥の呼び掛けを無視しして、今度は左の鋭い爪を大きく真上に上げる。
「昔から友達だった冬弥だよ。小さい頃いつも2人でイタズラばっかしてただろ。思い出してくれよ。」
悲鳴にもにた懇願をする冬弥だったが、亮だったエクシスタンスはそんなことお構い無しに爪を冬弥目掛けて振り下ろす。
「お願いだよ。亮。思い出してくれよ。」
目を瞑り、祈るかのように言葉を発する。
目前に迫った爪に体を貫かれる瞬間に後ろから誰かに引っ張られるような感触が冬弥を襲った。
目を開けてみると、そこには知らない2人の男性と1人の女性が立っていた。
「あんたばっかじゃないの。なんで逃げないのよ。」
ツインテールの女性が冬弥に向かって怒鳴る。
「しょうがないだろ。あんなの見てすぐ逃げられる方がおかしい。」
若い男性が反論する。
「はぁ?気合いで逃げなさいよ。」
男の反論にさらにツインテールの女性が反論で返した。
「気合いでどうにかなったら苦労しないだろ。」
若い男性とツインテールの女性が互いに睨み合う。
「やめなさい。」
中年位の歳の男性が2人に注意すると、2人はしょんぼりしながらも喧嘩みたいなものは終わった。
「そんなことよりもエクシスタンスをどうにかする。」
「「了解。」」
中年の合図にその2人が返事をし、それぞれ、腰や背中にマウントしてあった武器を手に持つ。
ツインテールの女性は機械的なハンマーを、若い男性はゴツイ二丁拳銃を、中年の男性はサイバーパンクな刀みたいなものをそれぞれ手に持った。
そして、目の前にいるエクシスタンスに向かって行こうとした時、冬弥が大きな声で言葉を発する。
「ま、待ってくれ。」
その言葉にツインテールの女性も若い男性が振り向く。
「なに?」
ツインテールの女性が聞いてくる。
「親友なんだ。殺さないでくれ。」
「はぁ?どう見たってあれは化け物でしょ。」
呆れながらエクシスタンスとなった亮を指さしてツインテールの女性が言った。
「違う。化け物じゃない。亮だ。人間なんだ。」
本当は冬弥も心の中ではわかっている。だけど、認めたくない。親友であった亮があんな姿となって殺されることなど認めたくない。
「殺さないでくれ。亮なんだ。」
必死に説得する。どんなに惨めな姿をしていたとしても、頭を地面に擦り付け、懇願する。
「君達にはエクシスタンスの足止めを任せる。」
「「了解。」」
そこに中年の男性がやってくる。
「あれは、君の親友だったのか。」
「そうです。唯一の親友なんです。だから、殺さないでくれ。頼む。」
中年の男性は何お思ったのか一瞬のあいだ目を瞑る。
「それは出来ない。君だってわかっているはずだ。あれが既に君の親友では無いことを。あれを野放しにしておけば多くの命を奪ってしまう。君はそんなことを望んでいるのか?」
「んっ。」
冬弥はその言葉に口をつむんでしまう。
「辛いのはわかる。親友を失うのは誰だって辛いさ。だけどな、それを乗り越えないといけない。君はあのエクシスタンスを親友だと言ったね。」
「そうです。親友なんです。」
「君は親友を人殺しにしたいのか?」
その問いに冬弥は答えられなかった。
「親友が人々を殺していく姿を君はみたいのか?」
諭すかのような優しい口調で冬弥に問う。
「……、たくない。」
冬弥の脳裏に亮のことが浮かぶ。初めて会った時のこと、一緒にイタズラをして笑いあったこと、弟と三人でご飯を食べた時のこと。様々な思い出が次々と浮かんでくる。
「見たくない。」
冬弥の眼から大粒の涙が次から次へと流れ落ちる。
「見たくない。」
中年の男性は冬弥の肩を軽く叩くとエクシスタンスの元に歩みを進める。
「
「「了解。」」
その掛け声と同時に加代と呼ばれた女性が持っていたハンマーにはいっていたラインがキーンという音をたてて光り、空崎と呼ばれた男の二丁拳銃も音をたててラインがひかった。
目の前にいるエクシスタンスに向けて光っているハンマーを腕目掛けて思いっ切り叩き込むと、エクシスタンスの右腕が後ろに吹っ飛んでいった。
「ガァァァギァァァァ。」
エクシスタンスが叫び声を上げ、隙をさらす。
その隙を今度は後方で二丁拳銃を構えている空崎が頭部に向けて弾丸を放つ。
バンバン。
音ともに弾丸がエクシスタンスの頭部を貫いた。
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