おかしな座り心地のソファーなお店
「足がだるいし喉乾いたからどっかにお茶しよ~」
「秘密の隠れ家的お店に連れて行ってあげるね」
「え?」
「看板でてないんだよ。知ってる人からの紹介で知る人が多いかな。
趣味でやってるみたいな感じだけど、居心地がいいよ」
鎌倉と中華街を散策して疲れて足がパンパンになったから、どっかお茶したいなとその時友人に教えてもらったお店だ。
雑多な下町みたいな路地にある普通の民家で、2階へ続く細いまっすぐな階段を上がるとお店になっている。確かに普通の喫茶店みたいな看板はない。壁に手書きでお茶出来ますとかかいてあるだけ。相続した家を売るのは忍びないし、お茶の場でも暇つぶしに提供しようかなってところだろうか?
革張りのソファーにテーブルがそこここにあって、中は思ったより広く、かなり繁盛していた。手作りのふわふわのシフォンケーキも人気で、大きくたっぷりとしたケーキに甘さ控えめな生クリームをそえてジャムでお皿に蔦模様に描いてくれて出してくれた。カフェオレを頼んだら、カフェボールで出してくれた。はじめてカフェボールで飲んだのがこのお店だ。
ソファーは、ちょっと年季が入っていてスプリングが変なかんじでお尻をささえてくれるのがちょっと可笑しかった。でもそれがいい味をだしていてこのお店の魅力の一つだった。このお店を思い出すときはなぜかソファーが真っ先に思い浮かぶ。
2階だけの店なのかと思ったら、3階もあってそちらは和室もあった。友達4,5人連れて行ったときに、3階に案内された。
「なんかおばあちゃんちにきたみたいな雰囲気だねぇ」
「居心地よくて長居しちゃいそう」
「お茶もたっぷりでてくるし、手作りのケーキもおおきくたっぷりだしてくれるし、甘さ控えめでおかあさんかおばあちゃんからだしてもらってる気分になるよ」
「こんなにお茶もケーキもたっぷりなのに安いよね」
「学生の懐に優しいわ」
再開発がすすんであの路地裏への道がわからなくなった。多分あの店はもうないだろう。
たまに茶店をさがして彷徨う夢を見る。
わたしはあの店をさがしているのだろうか?
それともまた新たな店をさがしているのだろうか?
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