⭐︎〝家出したオモイデ〟【アイドル】

家出したオモイデをさがしに

旅にでた

吹きさらしのバス停

草いきれのにおいが

ひろがった青空に

まけないくらいあつく

たのしげに飛んでいた


暑さをうらやむアブラゼミの声が

とまってしまった時間のなかから

ハーモニカのように聞こえていた

汗にまみれたバス停

くちずさむ

ジリジリとした夏が

遠雷のように笑っていた


家出したオモイデを探しに

旅にでた

吹きさらしの青空

だれかを探している

ふらついた飛行機雲が

まっすぐな線をえがいて

悲しそうに飛んでいた


さびしさを歌うヒグラシの声が

動きだしたバスのなかで

夕暮れのように沁みていた

遠く離れたバス停

ふりかえる

いなくなったオモイデが

さよならを告げていた


家出したオモイデを探しに

旅にでた

吹きさらしのバス停

夜空を落ちる

ナミダのような星が

輝いているしたで

いなくなったオモイデが

くすくすと

うれしげに笑っていた


家出した

クチブエの音が

進んでいくバスのなかに

響いていた

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