第2話 日記20240429 指圧

 肩が凝ったので安物マッサージに行く。


 私の肩こりは小学生の頃からの筋金入りである。

 もし今暴漢に襲われて拳銃で撃たれても、凝った部分に命中すればそこで弾丸を止めて見せる自信がある。まさに筋金入りなのだ。


 肩こりは日本人特有の病である。本来は外国人には少ないのだが、彼らが日本に住んでいると発症する。

 原因は日本語である。日本語の学習と共に肩こりは発現する。

 日本語は他の言語とは違って非常に複雑なため、その使用には多くの脳領域を占有する。その結果として体の制御領域が侵食され肩こりという結果を生むのだ。



 今日の担当は男の人だ。ちょっとがっかりした。

 もちろん性的な意味はない。

 指圧においては男の施術者は力に任せて揉むことが多く、逆に効果は薄い。凝った筋肉は力任せに押しても意味はないのだ。

 筋肉と筋と経絡の揉み(押し)方はすべて異なる。凝りの原因もいくつかに分けられ、それらすべてで対処法が異なる。

 男の施術者はそれらを一律に力で揉むことが多く、ために下手くそが多いのだ。

 非力な女性の方が揉み方を工夫する。

 だからは私は指圧は女性に限ると思っている。たまに物凄く上手な男性もいるが、指名制がない店ではそれもできない。


「本日はどのようなところが特に気になりますか?」

 いつもの型通りの質問だ。この辺りはマニュアル化されている。

「背中と腰です」と答える。

「では始めます」


 ・・いつまでもこちらの首を揉んでいる。

 あの~背中と腰なんですが。頭の中で文句をつける。

 ・・いつまでもいつまでも首を揉んでいる。

 あの質問はいったい何だったのか?

 マニュアル人間ほど使えない存在はいない。

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