幕間① とある女の日記、あるいは過去の栄光


《とある日記より引用》



遂に、辿り着いた。

10年掛けて、辿り着いた。

あの子の隣に居られる、ステージまで。



私の人生は、きっと彼女の為にあって。

私の人生は、彼女をもう一度立ち上がらせることで意味付けられる。





見てろよ、ゴミカスな世界。


見てろよ、クソッタレな一般庶民。


見てろよ、あの子を潰したオタク共。


見てろよ、あの子を壊したカス業界。




私は、世界を変えるためにここに来た。

あの子を認めさせる為にここに来た。




ステージの上でカリスマを演じ、人々を泣くほどに熱狂させ。

それでいて、ステージの下で誰よりも泣いていたあの子を。




テレビで、ネットで、100万人に愛を叫んで。

それていて、1人の孤独に苦しんで、悲しみを叫びたかっただろう彼女を。





今度こそ。

貴女は何も間違ってないって、手を引く。

貴女の人生は何も間違いじゃないって、共に進む。

あの子の闇を、黎明のように照らすために。





ナイフじゃない。マイクを握れ。

私の大腿じゃなく、視聴者の心に。

切り傷じゃなく、思い出を刻むんだ。










―――絶対に、貴女の闇を融かす。





待っててね、かおり。












…………それはそれとして今日の時子のアレなに?撫で撫でするのは私の権利じゃない?首絞めるのも私の権利じゃない?普通にイラつくんですけど?同期じゃなかったらマジでぶっ殺してたよ?炎上させるよ?一応言っとくけど私もやられた側だから炎上のやり方とか心得てますけど?かおり………ってか今は愛璃か、あの子のことなーーーんにも知らないくせに何してんの?私は10年見てきてますが??んー??だいたいね、私ああいう清楚ぶってる性欲の塊が嫌いで――――



(字が崩れながらも、文書はこれ以降も続いている)






















《以下、ネット記事『突然引退したネットの人気者7選!』より引用》



(前略)



麗火うららかかおり


麗火かおりさんは、東北地方にある水森市出身のアイドルです。

20XX年にデビューし、最初は清純派アイドルとして人気を博していましたが、活動途中から『闇の炎に灼かれたカリスマ』のキャッチフレーズのもと、ライブでの過激なパフォーマンスや中二病全開の言動、見る者全てを惑わせる瞳などでカルト的な熱狂を作り出しました。

しかし、その熱狂が絶頂に達するなか、彼女は突然引退を発表しました。理由としては、他のアイドルのファンによる誹謗中傷や、彼女自身が全てにストイック過ぎたことがあると言われています。 



(中略)



愛本あいもときら


愛本きらさんは、コメント機能付き動画サイトのスマイル動画で活動していた踊り手・歌い手です。

20XY年の初投稿時はなんと10歳。元気いっぱいのダンスや、その深いオタク文化への造詣から、瞬く間に人気を博しました。踊ってみたをメインに活動していましたが、活動時期の後半には歌ってみたや描いてみたも投稿しています。デビュー後2年ほどで一度オワコン扱いされたものの、輝きを取り戻し、人気は絶頂でした。

しかし、彼女が投稿した歌って踊ってみた動画が炎上し、とあるコメントを投稿したと同時に引退を発表しました。

なお、引退後もつぶやいったーアカウントは残っており、前述した麗火かおりさんのファンアカウントとなっていたそうです。






いかがでしたか?今回は、人気絶頂で突然引退した………



(以下略)

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