第23話 黄金宮殿のウサギ

「なんだこれは…………?」


 アルファイドは地下牢で絶句した。


 牢の中にいたのは、オークランドからさらってきた少女ではなく、奴隷の着る粗末な貫頭衣にくるまって眠る、1匹の白ウサギだった。


「……なぜ、ウサギが牢にいるのだ……? ふざけているのか!?」


 アルファイドは兵士に牢を開けさせると、中に入った。

 無造作にウサギの耳を掴んで持ち上げると、眠りから覚めたウサギが、ぴーっ、ぴーっと悲鳴を上げて暴れた。


「黙れ」


 ドスの効いた声で脅すと、なぜかウサギはぴたりと鳴き止んだ。


「?」


(なんだ、まるでこちらの言葉がわかるようだな)


 思わずアルファイドはじっとウサギを睨みつけた。


(なぜ、ウサギが牢の中に……)


 その時、アルファイドはウサギの耳に嵌められた、小さな赤い宝石を目に留めた。

 ……見覚えがある。


「お前は何者だ」


 アルファイドが言うと、ウサギはわざとらしく言葉がわからないふりをして(アルファイドにはそう見えた)、後ろ足をぶらんぶらんとさせている。


「その態度、いつまで続くかな」


 アルファイドはイラッとすると、ウサギを貫頭衣でめちゃくちゃにくるみ、まるで荷物のように小脇に抱えて牢から連れ出した。


 ぴきーっ! とまるで抗議するかのように鳴くウサギにの様子に、アルファイドは楽しそうに笑った。


 自分の部屋に向かう途中、行き合った男を掴まえた。

 その若い男は書記だったらしい。

 国王に直接声を掛けられて、目を白黒させていた。

 目が泳いで、布の中から覗く、ウサギの白い耳と国王の顎の辺りを行ったり来たりする。


「後宮に使いを。ザハラを呼べ。私の部屋へ来いと。大至急だ」

「はっ……!!」


「これは面白くなったな、ウサギ? 私は本当に、ドレイクの大切なものを手に入れたのかもしれん」

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