睡眠するだけで異世界無双《固有スキル:睡眠強化。1分寝るごとに全ステータスが3000上昇。なお、ステータス上昇効果は一生永続されるものとする。追記:睡眠は神》

うめ生徒

第1章 寝るだけで異世界最強

page1,睡眠オタク、異世界転移する。

第1話 起きたら異世界

 高校の昼休みは、僕からしてみれば、睡眠すいみんの時間と同義どうぎである。


 幼少期ようしょうきころから、睡眠の魅力みりょくかれてきた僕は、睡眠が主題しゅだいである本を、数十冊読み込むほどの睡眠オタクであった。

 そんな僕は、昼寝ひるねの大切さを、クラスメイトの誰よりも理解していた。


 昼寝をし過ぎるのも良くないが、しかし、目を閉じずに午後の授業にのぞむのも、のうのパフォーマンスに影響えいきょうあたえる。


 だから僕は、昼休みの時間を、睡眠の時間として設定している。


「おやすみ」


 とひとごとをつぶやいて、僕はつくえ木製もくせい表面ひょうめんに顔をうずめた。


 ――そして目がめると、視界しかいうつったのは、教室とことなるものだった。


「どこだ、ここ?」


 困惑こんわくする。


 何せ、僕の目がとらえた景色けしきは、現実げんじつとはかけはなれたものだったからだ。


 まず、教室の机の上に顔をくっつけていたはずが、外の地面上じめんじょう仰向あおむけでたおれていた。


 周囲しゅういは、夜闇よやみつつまれ、雨がぽたぽたとわたっている。

 石造いしづくりの地面は雨水あまみずれており、半袖はんそでの制服からつきだすうでには、ひんやりとしたつめたさが感じられた。

 周りにつ家は、レンガ調ちょうのものがほとんどであり、現代げんだい日本にほん建築物けんちくぶつとはとても思えない。

 街灯がいとうが暗い夜道よみちらし、上を見上みあげればあおみどりの2種類の色でいろどられた夜空が広がっている。

 まるで、オーロラのようであった。


綺麗きれいだな……」


 感動が口からこぼれるほどの、絶景ぜっけいである。

 しかし、それでいてだ。

 ここはどこだ? となおさらの疑問ぎもんが走る。


 身体からだ全体ぜんたいが、容赦ようしゃなく雨にたれながら、僕は考えた。


街並まちなみは、昔のロンドンを彷彿ほうふつさせられるな」


 何だろう?

 過去のロンドンへ、タイムスリップしたかのような感覚だ。

 もしくは……。


「オーロラみたいな空は、昔のロンドンには当てはまらない要素ようそだな」


 もしくは、だが。

 まるで、異世界いせかい転移てんいしたかのようでもあった。


「……いや、そんなわけは無いか」


 僕は、この現実的でない場所を――


「夢か何かに決まっているな」


 睡眠の副産物ふくさんぶつであると考えた。


 それは、そうだ。

 昼寝をして、目覚めて、これだ。

 本当の意味では目覚めていないとしか、考えられない。


「でも……だ」


 感覚が、現実のものと非常にていることが、引っかかるポイントであった。

 雨に打たれた感覚も、濡れた地面にれた感覚も、現実の実体で感じるものと酷似こくじしている。

 意識も、やけにはっきりとしていた。

 何といえばいいか、だ。


「夢のわりには、精度せいどが良すぎるな」


 もしかしたら、現実の可能性もあるのではないか――?

 という、バカげた思考しこうが生まれ始めた時だった。


「――大丈夫ですか?」


 そんな言葉とともに、僕に降りかかる雨が少なくなっていることに気がついた。


 地面に寝そべる僕を見下ろした、一人の女性が立っていた。

 その女性が、僕の上にかさを差し出している。


 薄桃色うすももいろの、肩下かたしたまで伸びた髪。

 顔つきが整っており、可愛いと美しいの両方を持ち合わせたような人だ。

 えりつきのブラウンのシャツに、ベルトつきの膝上ひざうえまですそが伸びるスカートを着用している。何かの仕事の制服のようにも見えた。

 彼女は、微笑ほほえんで、僕に質問をした。


「あなた、めずらしい服装ふくそうていますね」

「珍しい服装って、僕の着ているこれのことですか?」

「はい」

「これは、ただの高校の制服ですけど」

「こうこう……?」


 その単語たんご復唱ふくしょうした女性は、わずかに目を見開みひらいた。


「もしかしてですけど、あなた――」


 そして、このように言われたのだった。


「――異世界いせかいじんですか?」

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