P5
「仲、良いんだね」
「そりゃあ、ナエとはずっと一緒だからね。もちろんサキともだけど……」そこまで口に出して、わたしはサキを見る「って、知ってるでしょ?」
不思議なことを尋ねられて、わたしは苦笑した。
「どうした? 誰か居る?」
理由を考えようとしたところで、ナエが口を挟んできたので、思考がそっちに向けられる。
「ああ、うん。ちょっとね。サキ……」
「で、こんな朝早くに何の用よ? まさか、声が聞きたかっただけとか言わないでしょうね」
「あはは、そんなはず無いよー。ところでさ、小さい頃、雪の日に遊んだ友達がいたこと覚えてる? コユキちゃんっていうんだけど……」
「は?」
そこで、わたしは思い出せる限りの情報を話した。ナエはまだ眠たいらしく、時折欠伸をしつつも、なんとか最後まで話を聞いてくれた。
「誰それ? そんな子いた?」
「居たよ。居たはず。……居たよね?」
「わたしに聞くな。ああ、でも雪の日でしょ。なんかあったような……」
思い出そうとしてくれているのか、電話越しにううんと唸る声が聞こえてきた。腕を組みながら頭を捻っている様子が浮かんできたので、わたしが「がんばれ。がんばれ」と応援すると「うるさい」と一蹴されてしまった。寒いのはその素っ気ない態度のせいか、冷たい風が吹いているせいか分からなかった。
体温が下がってきて凍えそうになり、その場で足踏みをしていると、電話の向こうからナエの動く音と、何かが滑る音、恐らく、カーテンが開かれる音が聞こえた。
「おー、ほんとに積もってるねえ」
ナエが感嘆の声を上げるが、家を出た時のわたしほど楽しそうには聞こえなかった。元々、ナエは大人っぽいところのある子だからか。それとも、わたしが歳の割にはしゃぎすぎたのか?
「あっ」
「何か思い出した?」
「ああ、いや、でも、楽しい思い出だったんでしょ?」
「うん。それは間違いないよ」
「なら違うか……」
ナエはそれきり黙ってしまった。何かを隠しているようなどこか煮えきらない口調。思わせぶりに言ったくせに。
「もう、気になるから言ってよ」
口籠るナエに苛立ったのか、それとも寒さに耐えきれなくなりつつあるのか、自分でも分からかなかったけど、口から出た言葉はどこか棘ばっていた。
「……分かった」
躊躇したように間をおいてから、ナエは重々しく口を開いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます