差し出されたのは歪な形状の盃だった。言われるまま酒を注ぐと何やら水面に映るものがある。見知らぬ男だ。注がれた酒の中からきりきりとこちらへ弓を引き絞っている。

「うわっ!?」

 刹那、小さな矢が水面から飛び出し頬を掠めた。そのまま耳飾りの鎖を千切り宝石がひとつ、盃の中へ。

「ははは、石を取られたな」

「おい何だ、今のは」

 慌てて探すが盃の中には酒しかない。

「この盃の持ち主よ。生前はよほど強欲な男だったと見える」

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