第6話 深海と共鳴
深い深い海に沈むと、まるでさっきまで見ていた外の世界は嘘だったんじゃないかと思える。
ラメールが作ったカプセルの効果は抜群で、私は地上にいる時のように普通に呼吸が出来た。潜水のための装備は貸し出しがあったので、尾ひれのようなものが付いた慣れない靴を履いて、なんとか皆に遅れないように潜る。
深く潜りすぎると何も見えなくなるということで、一日目となる今日は比較的浅い場所を探索する運びとなった。ダースと私とクレア、フィリップとフランがチームを組んで二手に分かれる。
「ローズ、すごいわ。普通に話せるみたい!」
「まぁ…!本当ね」
「三時間経ったら死んじまうなんて嘘みたいだな。薬の効果が切れるんだっけ?」
「らしいわよ。ラメールをここまで連れて来れないし、みんな、自分の時計をよく確認しましょう」
クレアの声掛けに私とダースは頷く。
海水は冷たいけれど、重たい酸素ボンベを背負わずに海の中をこうして泳げるのは有難い。プラムが知ったら「わたしもわたしも!」と羨ましがりそうだ。
それにしても、大魚はどこに潜んでいるのか?
あまり明るい時間に動くように思えない。
「ねぇ、ローズ。今日こそ飲みに行ける~?」
「仕事が終わってから考えるわ」
「つれないわねぇ。今日はチームの皆で夕食を食べに行きたいと思ってるの。遠征だし、皆のことを知っておくに越したことはないから」
「もう俺に戦いは挑むなよ!」
「はいはい、分かってるってばー」
その時、睨み合うクレアとダースの後ろを大きな影が横切った気がした。
「………あれ?」
「どうしたの、ローズ?」
「今何かが動かなかった?」
「待って待って、それって魔物の大魚?クジラよりも大きいって聞くけど、動きは速かった?」
「よく見えなかったけれど影が……」
慌てて岩の後ろを覗き込むも、そこには何も居ない。
見間違いだったのだろうかと首を傾げた。
少し離れた場所まで確認しに行ったダースも「何も見えない」と戻ってくる。私は二人に誤解だったかもしれない、と伝えて頭を下げた。
「良いの良いの!討伐なんてこんなことしょっちゅうよ。悪魔が棲んでるって言われて向かったら、屋根裏から黒猫が出て来たこともあったし」
「ナハハッ!お前にゃうってつけの仕事だな!」
「ちょっとどういう意味~?」
「喧嘩っ早い猫みたいな騎士だから、同類に呼ばれたんだろうさ」
「この大男…… そういえば、魔物同士は共鳴するなんて言うわよね。どこかの班が以前捕まえた赤鳥の魔物の羽を抜いて持って来たって言ってたけど」
クレアが思い出すように眉間に手を当てる。
「共鳴?」
「ローズは知らない?魔物は魔物を呼ぶの。家族だと思うのかしらねぇ。現場は見たことがないけど有名な説よ」
「そうなんだ………」
私は頷いて顔を上げる。
フィリップたちはどうしているだろう。
結局、最初の三時間は何も見つけることが出来ず、私たちは昼休憩を取って空腹を満たすために食堂へ向かった。
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