プロローグ 《一般人》の

 私たちが存在したころは、まだこの世界はありませんでした。

 


 神と呼ばれる存在は、この世界の前の世界にだけ存在していました。

 ある時それは終わりを告げて、またその瞬間に《この世界》という始まりが現れました。

 

 

 そこで本物の《神話》というものは失われてしまったのです。



 だからこれから語るのは《神話》などではなく・・・・・・、ただ一個人の少年のお話です。

 

 

 そうだよね。

 


 この時の私は、これから何が起こるのかよく知りもせずにもう何度も見た・・・・・リスタートを行うのでした。


 



 裏切り者は、私なんだよ。

 進。


 



 気が付かないかもしれないけど、そう。

 



 今度こそ、あなたを殺すためだけに仕上げてきた世界で、あがいてね。





《行間》



 

 この世界においてただ一言、《神》といわれると人々がまず初めに思い浮かべるのは紛れもない《原初の四神》であろう。


 

 そもそもの《名》も伝わってはおらず、それぞれが実在したとされる・・・だけの《最高神》たち。


 

 そんな神々の伝わるはずであった世界の名は『地球』。

 

 正式名称『人間世界第一番惑星オリジン』。

 



 今君たちの住む第二番セカンドとは似ても似つかない、そんな世界だ。

 世界に永遠の平和など存在せず、争いや戦いがたびたび起こる世界。

 

 あるいは、平和な日常の中に《死》を迎える可能性が含まれている、そんな世界。


 


 そんな中でも、黒髪黒目のあの少年。言野原 進ことのはらしんの生きた時代はその後の歴史を大きく動かしただろう。




《行間》




「なぁなぁ、進さんよぉ。昨日公開された劇場版ヒーロー戦線見た? 俺は見たぜ!」


「見てないな、つか、昨日って木曜だろうが。お前が学校来てなかったのはそのためかよ。サボり魔」



 とある日の午後のお話。

 高校生の腹が減る時間だった。

 


 進は話かけてきたクラスメートとの対話と弁当を楽しんでいた。

 ちなみに高校一年生の彼にとって、花より団子、話と飯は両立である。



「サボり魔ってなんだよ、ネタ晴らししてやろうか?。お前こういうの苦手だろ、ほれほれ~」


「クソッ、っと普通なら言うところだ。がしかし!」



「しかし?」


「お前は一つ見逃している。あれはアニメの番外編的な書下ろし小説をもとにつくられている! つまりだ、このアニオタ、ラノベオタ、ゲーム依存の俺がチェックしていないわけがないだろう?」



「いや、……アニオタ、ラノベオタに紛れてあってはいけないものまであったぞ、こら」


「サボり魔に言われたかねぇよ」


「んだと? やんのか?」

 


 こういうバカ騒ぎも学生生活にはもちろんついてくる。

 なくてはいけないものだ、と少なくとも彼はそう思っている。



「……っくそぉ、そうかよ。……でもまぁ、戦闘シーンの作画とか神がかっていたし、映画はあれ絶対に見たほうがいいね。間違いなく今季上位に入ってくる作画と、ストーリーだったからな」


「……何が言いたい、結局」

 


 漫画のように目をキラキラさせている友人にもおいっきりジトーとした目を進は向ける。

 ジトーとした目を。



「相変わらず、人が何か隠しているのを見破るのはえぇな。超能力かよ」


「……超能力、ねぇ。そんなもの本当に使えたら便利だけどな。あいにくそんなものは使えねぇよ。お前のはただ前置きが長いだけだ。あと、話した過ぎてうずうずしてる」

 



 超能力という単語に苦笑する進。


 おそらく男子が一回は使ってみたいと思う単語の一つだろうと思った。



 ちなみに、使ってみたいランキング一位は不動の魔法、魔術。二位は、銃、三位が超能力。

 進の勝手に考えたものだが。

 


 現代人はだいたいそういう異能と呼ばれるものに興味を惹かれる性質があるからな、と進は思う。




「つーわけで明日、それ見に行かねぇ? 俺は早速二週目に行きたくなってしまったのです!」


「それが言いたかったのかよ、えー明日ねぇ。明日。家の用事は入ってなかったとは思うんだけどな……」


「お、じゃぁ?」

 

 

 何かが引っ掛かった彼は手をあごの下まで持っていった。

 よくある、考えるポーズというやつだろう。



「あ、そうだ。明日ゲームのアプデじゃん。ヒーロー戦線コラボっすよ。一万円までつぎ込む予定だったわ。イベントキャラ全部当てたいから明日はちょっと無理だ、すまん。家に引きこもります!!」



 進がそういうと、相手もあ、そうか。と言って引き下がる。



(さすが友人A。こうなったらもう俺は家の外で何が起ころうが出てこないことをよくわかっていらっしゃる)



 進が家から出てこないというのは、なんの比喩でもない。

 本当に。

 

 玄関のチャイムが鳴っても出ないし、おそらく家の前で事故が起こったとしても出てこないだろう。


 進からすれば前例がありすぎるのだがここで語っていたらきりがないのでいったん置いておくことにする。



「前はそんなんじゃなかったんだけどな……。やっぱりこの一年間、人との付き合い避けてるよな。親父のあの死に方が気に入らなかったか? やっぱ」


「……あぁ。そうだな。」


 

 進の父親は一年前に亡くなっている。

 何故かははからない。


 

 犯人も分からない。

 他殺の線が濃厚である、と進はその時思ったのだがそれよりも不可解なことがあったのでそちらに気を取られた。



「さすがに意味が分からねぇ。体中の骨が、あり得ない方向に歪んでいたんだぞ? あんなに元気だった親父が」

 


 四十二歳で、まだこれからの人生がありあまっていたはずなのに……。

 と、しかし、その時の進も、今の進も抱いている思いは悲しみより困惑のほうが強い。

 

 死に方が、死に方だったからだろう。



「ま、それのことを俺はそんなに引きずっちゃいないよ。おまえもしってるだろ?」

「まぁな」


「明日は、いけない。……それになんか明日は嫌な予感がする。こういう時は引きこもっておいたほうがいい」

「……予感、ねぇ」


「……あぁ。俺の予感ってのはほんとに当たることが多いからなぁ、はぁ、本当に」



「あぁ、例の神隠し事件ってやつだろう?」

「……」



「まだ見つかってないのかよ。天智見広のやつはよ。つーか、それもお前が?」


「忠告はしたんだけどなぁ。でもほらあいつって全くそういうの聞かない人間だったし」


「あぁ、なんか分かるわぁ」


「俺は、親父の事件よりもそっちのほうを引きずってるなぁ。どうも腑に落ちないんだ」

 


 進はグッと背伸びをした。

 そして時計を見て固まった。



「……やべぇ、もう三分前だ」

 


 友人のほうも時計を見る。

 

 次の授業の準備をしてから移動教室を移動したら絶対に遅れてしまう時間だということにお互い気が付いてしまった。

 時計の針は進む。



「次の授業って、何?」

「……よりにもよって、現国でーす。あのバカ怖い先生でーす。はい、俺ら終わりましたー」


「分かってんのなら急げよ進! ハリー、ハリー、ハリアップ!。マジで急がねぇと殺されるって! 急げぇ!」

「だが、断る」


「俺は知らないからな、後悔するぞ!」

 


 進は一人だけ残ってしまった。

 時計は一分前を指していた。


 絶対に間に合わないことを静かに覚って彼はため息をついた。



(いそがないと、か。何だろうそういわれるともうなんだか急がなくていいような気がしてきた)


 

 これを俗には「開き直った」、というのだろうか。

 

 そんなことを考えるくらいなら走っていってもいいのではないか、という平凡な考えを進が持つことはなかった。

 だったらもういっそのこと遅れまくってやろうと思い進は苦笑した。



(ハハッ、もうどうでもいいや。どうにかなってしまうだろ。こんな平和な世界なんだから)


 

 若干の死亡フラグだった。

 

 その授業中は不思議と眠気が襲ってこなかったと進は語る。

 その代わり、前から猛獣ににらまれていたという証言も。


 寒気はしたらしかった。





『あぁ、問題はないよ。そんなに早く殺しても面白味がないだろう?』




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改訂版の方が読みやすい……はず。

これからも随時いじっていく方向性で、投稿していくぜ!


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