お祭りの日のゆい~2通目の手紙

神様へ 

「ゆいが行方不明になったのって、お祭りの後かな?」

 ゆいの話をしていると、僕は、ふとそう思いました。

 これがわかれば、ゆいにまた会えますか?


 僕たち4人は、商店街に向かった。

「お兄ちゃん、タイミング良すぎない?」

「確かに。でも、それで怪しむのは無理があるだろう」


 湊斗は、唯花にそう言った後、僕の横に来た。

「昨日から、誰かにつけられているような気がする」


 スーツを着た男の人が電柱に隠れているのが、カーブミラー越しに見えた。

「どうする?」

「僕は最短の道で、颯太はあの電柱から愛の家の所へ行こう」


 僕たちは全力で走った。


 愛の家は行き止まりになっていて、そこにその男の人を追い込んだ。

「え! 清水先生じゃん」


 僕たちを追いかけてきた彰の声が、後ろから聞こえた。

「なんでつけていたんですか?」

「みんなが、いつもどういう所で遊んでるのかなって」

「そんな事でついて来たの?」

「そうなんだよ。そういう仕事なんだ」

「いつもは、あそこの公園とか森とか! あとは、この辺で遊んでるよ」

「森?」

「あ、でも、森は一回しか行った事ないよ! その時危ないって言われたから」

「そうか。ありがとう。あんまりおそくならないようにね」

 その後、清水先生はついて来ていないみたいだった。

「誰がつけてるのか怖かったけど、清水先生だったし大丈夫だね」

「ああ、そうだな」


「太鼓の時、うちのお団子買いに来てくれたよ」

「小学生、雨宮さんとこの子は一緒じゃないのか?」

「本屋さん、ゆいちゃんの事を探してるのかい?」

「お祭りの時に配ったお菓子を取りに来てないみたいなんです。いたら渡そうと思っているのですが……」

「ゆいだったら、絶対もらいに来るよね?」

 僕たちは、団子屋さんのショーケースの前でしゃがんで言った。

「お菓子配ったのって何時ですか?」

「予定通り八時に配ったのを確認したよ」

「でも、急にお祭りの日にゆいを見たかなんて、どうしたんだい?」

「お祭りの時、ゆいとはぐれちゃったんだ」

「太鼓の時は、ずっと裏方の仕事手伝ってくれてたんじゃよ」

 団子屋さんにいた町会長がそう言った。

「だって、だから見つけられなかったのかね」

「テントにいたから、見えなかったんじゃろう」

「やっぱり、見えにくかったんだねえ。うちもあんまり売り上げが伸びなかったねえ」

「あとは?」

「? そう言えば、湊斗君のお母さんとこと話しているのを見たねえ。確か、7時になる前くらいだったのかね。でもその後、すぐ走って行って」

「走って行った?」

「うん。追いかけっこでもしてたのかねえ。その後にも何人か走ってたんよ。はっぴを着てたから。ありゃあ、中学生かね?」

「中学生?」

「そうなんじゃよ! 太鼓の時間になっても、遊んでた中学生たちを呼んできてくれたんじゃよ」

「なんや、その後見かけなかったから、こけたりしてないか心配してたんよ」

 一瞬、本屋さんと目が合って気まずくなった。

「太鼓って結局何分くらい早まったんでしたっけ?」

「二十分くらいじゃったよ」

「ありゃ、そうだったの! 全然気が付かなかったねえ。もうこんな時間かね。みんな気を付けて帰るんだよ」


「それより、もうあの子の代の子たちは来年からは、高校生なんだねえ」

「やっぱりあれは呪いじゃ」

 お店を出た時、そう話しているのが聞こえた。


 商店街からの帰り道、もう外は暗くなりそうになっていた。

「え! 悠希、なんでいんの?」

「今日はたまたま」

「へえ、そっかー。バイバイ!」

 悠希の家は、僕たちと学校から反対方向だった。



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