二桁等級の成り上がり。僕だけステータス操作(体重)出来る件

鍵弓

プロローグ

 この世界は魔物が跋扈しており、人類は壁に囲まれた狭いエリアに住んでいる。冒険者は、魔物を倒し、魔物から得られる魔核や素材、ダンジョンの場合ドロップアイテムを売って生計を立てている。主人公のバンスロットもまた、日々魔物の脅威に恐怖しながらも何とか生き延びていた。


 バンスロットは、サニタルという小さな町で育った孤児だった。両親を幼い頃に亡くし、孤児院で過ごした彼の日々は、決して楽ではなかった。それでも、彼は決して挫けることはなかった。14歳の誕生日を迎え、孤児院を出る前夜、彼は月明かりの下で一人誓った。


「絶対に強くなって世の中を見返してやる!」


 その誓いを胸に、彼はサニタルの町を後にし、近隣で最も大きなシャラックの町へと向かった。彼の夢は、冒険者として名を上げることだった。しかし、現実は厳しかった。頼りにしていた孤児院出身者は既に亡くなっており、頼る者もいなく孤独な彼の冒険者としてのスタートは、最底辺の10級からで、稼ぎは悪く、毎日の生活は苦しかった。


 15歳の誕生日を迎えた数日後、バンスロットの運命は一変する。薬草採取をしていると、突如として2体のゴブリンが現れ、周りにいた女性や若年者が逃げ出す中、彼は彼らが逃げる時間を稼ぐために、逃げずに立ち向かうことを決意した。『男に生まれたからには、守るべきものがある』そう心に誓いながら。


 魔物との戦闘経験のない彼にとって、それは自殺行為だった。


 ゴブリンを単独で撃破できるのは9級以上と言われており、しかも2体を1人で相手にするなど、今のバンスロットには荷が重い、いや、命を捨てているとしか言えないほど無謀な行為だった。


 しかし、彼は気づかぬうちに得ていたギフト【ステータス操作(体重)】、スキル【見切り】を得ており、【見切り】が発動した。


 護身用の小さなナイフを手に構え、無謀な戦いに身を投じる。ガチガチと震えながらも不思議と動きが見切れ、

 1体目のゴブリンが棍棒を振ってきたが、バンスロットは紙一重で躱し、隙だらけの喉にナイフを突き入れた。やばかった!と焦るも、攻撃が入った感触が手に伝わる。肉を切り裂く嫌な感じだ。


 しかし、戦闘に適さないナイフは無常にも折れてしまった。唖然となるも相手は待ってくれない。もう1体が叫びながら突っ込んできたが、彼はヒラリと躱し、足を引っ掛けて転がした。そして落ちていた石を掴むと、地面に顔を打ち付けて悶絶しているゴブリンが立ち上がる前に、力いっぱいにその頭を砕いた。


 息を乱しつつなんとかゴブリンを倒すと、『やったぞ!』と心の中で叫んだ。初めて魔物を倒した興奮もあったが、血の匂いから魔物が寄ってくることに気づき、急いでその場を去る必要があった。


 魔核を握りしめ、血塗れの手を洗いながら、彼は思った。『これが、僕にとっての転機だ!絶対に強くなる!』。新たな決意を胸に街に戻る。これが、孤児から英雄へと成り上がるバンスロットの物語の始まりである。

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