第15話 北西ダンジョン攻略の目処
僕は2日後に体重を減らしたい人を紹介してもらうまでは、北西ダンジョンの探索、特に主の捜索をしようと思う。
翌日は北西ダンジョンに入る者が増えていた。当然いざこざも増える。2階層では魔物を先に見付けたのは俺だとか、横取りしやがって!など、高々銀貨2枚程度の魔核で揉めているのを見た。
僕が3階層で探査を開始するために階段を降りると、眼の前には血溜まりが広がっていた。
1人の冒険者が横たわっており、仲間が必死に回復しようとしていた。残念だけどその人もう死んでいるのに・・・首が半ば千切れていて、もう血すら出ていない・・・
その血溜まりを前に立ち尽くす僕。その光景は北西ダンジョンの残酷さを改めて思い知らされるものだった。
死んだ人物は先程まで生きていた冒険者の1人で、僕も顔には見覚えがある。しかし、ダンジョン内では命の重さが軽くなる。仲間の人が必死になっている横で、僕は何をすべきか考え込む。
「何か手伝うことはありますか?」
僕が尋ねると、死んだ人の仲間からは首を横に振られた。彼らの目は悲しみよりも、絶望に満ちていた。ダンジョンでは死は常に隣り合わせ。
それを改めて実感した。
僕は深く息を吸い込み、3階層の探索を続ける。このダンジョンにはただの危険だけではなく、何か大きな秘密が隠されているという噂があった。
主が危険なのは周知の通りだが、それを踏まえても、その像すらまともな目撃例が殆どないのは異質すぎる。
とにかく主の全体像が見えてこないと話にならない。
スライムだとか、アメーバー、透明になれるなど、憶測が飛び交っている。
すばしっこく、背後からのヒットアンドアウェイでその影を見るのがやっとだと噂されている。
僕もその話から警戒をしていたけど、1度背後から攻撃をされ、態勢を立て直して振り向いた時には既にその場にいなかった。尻尾すら見えなかった。もっとも尻尾が有るのか無いのかすら分からなかった。
さっきの人も、主が階段の出口辺りに張り付いていて、さあ3階層を進むぞ!と階段を降りきって周りを警戒し始めた時に後ろから首を斬られたんだと思う。
ただ、首を跳ね飛ばさなかったのは、例えば刃物を持っている、又は尻尾などが刃物の代わりになっていると仮定すると、長さ的に首を跳ね飛ばすのが無理なのか、長さ的には跳ね飛ばせるはずが力が足りなかったのだろうか?
今日の目的である主を探すことは、ただの探索を超えた何かを意味しているのかもしれない。
魔物の種類だけでも分かれば対策のしようがあるけど、姿を現さない相手は何をするにもきつい。
スキルを1つ取れるようポイントは残しているけど、同じ理由でスキルを取らずじまいなんだ。
この日、僕はいくつかのトラップを回避し、さまざまなモンスターと戦いながらダンジョンの深部へと進んでいく。
5階層に1度行ったけど、既に他の冒険者が魔物を狩り尽くしていて、軽い下見しか出来なかった。
比較的人の少ない3階層に戻り、今日はこの階層を虱潰しに探そうと決めた。
そしてついに3階層の奥に隠し扉を見つけた。
どう見ても袋小路のその場所にわざわざ足を踏み入れたんだ。
何か無いかなと、壁に違和感が無いかと探していたら、1番奥の目立たない所に小さな穴があり、そこに手を突っ込むとスイッチ?に触れたようで、すぐ横の壁が隠し扉になっているのか、少し開いた。
扉の中心に軸がある回転式で、扉の幅は丁度僕が両手を広げた大きさかな。
扉の横には謎めいた文字が刻まれており、それがこのダンジョンの秘密への鍵であることを直感する。
取り敢えず扉を開いて中に入ると、ガコンと音がし背後の扉が閉まり、驚いて扉を見た。
しかしその瞬間、背後から不穏な気配を感じた。
振り向くとそこには僕がこれまでに見たことのない、巨大な昆虫型のモンスターが立ちはだかっていた。
その目はまるで僕を見透かすようで、一瞬で僕の心の中まで読まれてしまったかのような恐ろしさを感じた。
「これが、北西ダンジョンの真の試練なのか?」
咄嗟に背後の扉に触れるも動く気配がなく、壁から眼の前にいる巨大な昆虫型の魔物の小型版、と言っても小型犬ほどの大きさはあるが、それらが湧き出てくるのが見えた。これはキラービー。
僕は剣を握りしめ、戦いに備える。この戦いを乗り越えなければ、ダンジョンの秘密も、主の存在も、何もかもが霧の中のように不明瞭のままだろうと確信した。
大型の魔物と目が合うと、戦いの火蓋が切って落とされた。
僕の冒険は、ここからが本当の始まりだ!と目の前の魔物との戦いに身を投じた。
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