【1/21より三章連投開始】天衣無縫の勝負師は異世界と現実世界を駆け抜ける 〜珈琲とギャルブルをこよなく愛する狂人さんはクラス召喚に巻き込まれてしまったようです〜
新米鬼斬達と陰陽師、地底人と戦うヒーロー戦隊が異星人と混沌闇鍋パーティを組んで異世界の迷宮に挑戦するようです……。
新米鬼斬達と陰陽師、地底人と戦うヒーロー戦隊が異星人と混沌闇鍋パーティを組んで異世界の迷宮に挑戦するようです……。
――そして、遂に三つ目の迷宮であるレイゼン大迷宮に挑む日がやってきた。
ラーシュガルド帝国で活動を続けていた無縫はフィーネリア、エアリス、ミゼルカの三人にその場を任せ、地球へと帰還する。
その目的はレイゼン大迷宮に挑む面々を異世界ジェッソに転移させるためだ。
朝十時、約束の場所――日比谷公園のベンチに向かうと、既に先客の姿があった。
ゴーゴーと高鼾をかいているその人物は異形の姿をしていた。それも、メディアなどで人類と敵対していることが報道されているロードガオンの幹部級怪人である。
当然、その恐怖は公園利用者達にも伝わっており、警察に連絡を入れようとする者、恐怖で震える者、公園の管理者に報告しようとする者、子供を守ろうと盾になる母親――まさに、カオスと呼ぶべき状況が繰り広げられている。
「……公園を約束の場所に指定するのミスったなぁ。……私有地とかにすれば面倒を避けられたのに」
「あの……貴方が内務省の方ですか?」
これだけ騒ぎになっているにも拘らずマイペースに寝ているドルグエスに呆れていると、一人の男性が声を掛けてきた。
「ええっと……貴方は」
「申し遅れました、公園を管理している東京都公園協会の者です」
「お疲れ様です。はい、確かに俺が内務省所属の庚澤です。……もしかしなくても、ドルグエスがご迷惑をおかけしていますね。本当に申し訳ない。暴れたりしていたら後できっちりしばいておきますので」
「昨夜は他のスタッフの担当でしたが、特にそのようなことは無かったようですよ。怪人は恐ろしい存在だと思っていましたが、至って紳士的で。……ただ、個性的な方ではありますね。今日の約束に遅れる訳にはいかないからと、早めに現地入りしてベンチで朝を迎えられるとは」
「……まさかとは思いましたが、本当に昨晩から来ていたんですね。ご迷惑をお掛けしました。……本当にこいつはどういう思考回路になっているのか。お手数ですが、警察の方に連絡を入れている方もいらっしゃるみたいなので、安全が確保できていることだけお伝え頂けないでしょうか?」
その後、東京都公園協会の職員が公園利用者達に説明をして、騒ぎは一応の収束を迎えた。
……まあ、事情を知ったことで恐怖に震えていた利用者達はあまりにも非常識的な行動を取っているドルグエスに白い目を向けるようになったのだが。同族のように見られた無縫はいかにも不愉快という顔をしている。
そうこうしているうちに、六人の男女の集団が無縫達の方へとやってきた。
いずれもスーツ姿で、キャリーケースを引いている。恐らく、その中に所属している組織の正装が入っているのだろう。
六人のうち三人は佩刀していた。銃刀法が整備されている現在では明らかに法に触れている出で立ちである。
しかし、彼らが捕まることはない。表社会でこそその存在を認知されていないが、彼らは鬼という存在から国を護る守護者だからである。
「皆様方が鬼斬機関と陰陽寮が選抜した新人の皆様ですね」
「お初にお目に掛かります、無縫殿。昨年、鬼斬養成学校を卒業した
「同じく、
「お久しぶりです。伯母がいつもお世話になっています。
鬼斬機関が選抜したのは、いずれも鬼斬養成学校を卒業して日が浅い鬼斬一年目の若人達だった。
その中でも特に腕の立つ三人を選抜したらしい。
おまけに同期である三人は鬼斬養成学校時代から仲が良く、チームを組んで任務を遂行した経験が豊富なため、連携も仕上がっている。
鬼斬の名門である桃沢家のエリート少女と、それに比肩する同級生二人――個々の強さも十分素晴らしいが、その力はチームを組んで任務を遂行する際に何倍にも高められることとなる。
既にこの時点でかなり完成されている三人だが、鬼斬機関のトップである真由美は異世界で体験を積ませることで更に上を目指して欲しいと考えているようだ。
「お会いできる日を楽しみにしておりました無縫様! 陰陽寮所属、
「芳房、無縫さんが困り顔になっているじゃない。全く、この暴走魔法少女ヲタクは……私は陰陽師二年目の
黒のピンヒールで的確に芳房の脳天に踵下ろしを喰らわせた美遊が芳房の首根っこを掴みつつ自己紹介をする。
その様子に春臣、愛莉、日和の常識人寄りの三人はドン引きしていた。ちなみに、こんな状況でもドルグエスはぐうすか鼾をかいて寝ている。……本当にこの怪人はどうなっているんだろうか?
「……ふむ、これだけ騒いでいるのに目を覚ます様子がないとはなかなか剛気じゃな。ロードガオンとやら、虚界の星じゃったか? そこに住む者は皆、こんな感じなのかのぉ?」
「飯綱ちゃん、彼が特別なんだと思うけどなぁ。……初めまして、陰陽寮所属五年目の
「儂の好物の説明は今必要なかろう! まっ、まあ、くれるというのであれば気持ちは無碍にする訳にもいかないからのぉ! 受け取るのも吝かではないが」
「いや、流石にピンポイントでドーナツかサーターアンダギーを持っている人なんていないと思いますよ。……しかし、陰陽師の方々ってキャラが濃い人ばかりですね。上司の方があんなんだからですか?」
「失礼なこと言うじゃない!! うちのニートと私を一緒にしないで欲しいわ! 私は至ってまともよ!!! 魔法少女ヲタの芳房と飯綱さんとコントばかりしている漫才コンビ擬きと一緒にしないで頂戴!!」
「美遊殿! 無縫様への悪口は許しませんぞ!!」
「……いや、飯綱ちゃんと漫才をした覚えは全くないんだけどなぁ」
個性豊かな陰陽師の三人に、「本当にチームワーク大丈夫かな?」と一抹の不安を覚える無縫。
まあ、あのニート陰陽頭が選抜した面々である。真面だった方が逆に衝撃的なのだが……。
◆
鬼斬三人と陰陽師三人に遅れること十分、科学戦隊ライズ=サンレンジャーの五人が到着した。
ちなみに、現在時刻は十時半、集合予定時刻は十一時である。科学戦隊ライズ=サンレンジャーの到着が遅いのではなく、早め早めの行動が行き過ぎた結果なので科学戦隊ライズ=サンレンジャーに咎はない。……というか、この中で前日の夜からスタンバイしていて現在爆睡中のドルグエスが全面的におかしい。
普段は地底の技術と科学技術を融合した特別なヒーロースーツに身を包んでいるレッドブライト、ブルーブライト、グリーンブライト、イエローブライト、ピンクブライトの五人だが、流石に任務外である今日はヒーロースーツを纏っていないようだ。
短めの茶髪に黒目で長身のいかにもリーダーっぽい熱血漢がレッドブライトこと、
ヒーローとして活動する時の武器は片手剣と銃のような武器を使い、戦闘では戦場全体を俯瞰して適切な対応を行うオールラウンダーとしての立ち回りをする。
黒髪黒目でレッドブライトよりも少し背は低め。冷静で思慮深そうな光を瞳に湛えた青年がブルーブライトこと、
ヒーローとして活動する時の武器は
メンバーの中で一番背が低い、緑掛かった黒髪が特徴的な眼鏡の少年と見紛う青年がグリーンブライトこと、
ヒーローとして活動する時の武器は爆弾で本来は敵の撹乱役や測距を担当する筈なのだが、地底の科学技術で作り出した力場を利用して盾を生成する場面が非常に多く、ヒーローチームのメイン盾のような立ち回りが主な仕事となりつつある。
メンバーの中で二番目に背が低く、最も身体が太ましい巨漢はイエローブライトこと
ヒーローとして活動する時には武器を持たず全身を包む鎧で身を固め、巨体を活かした格闘で敵の足止め役を担当する。また、ヒーローの顔の他に技術者としての顔も持ち、科学戦隊ライズ=サンレンジャーを陰から支える地底人対策機関の総司令官であり科学者でもある
そして、最後の一人が紅一点。腰まで届く黒髪と美しい目鼻立ち、そして美しいモデル体型が印象的なピンクブライトこと
ヒーローとしての武器は特殊な鞭で広範囲攻撃を得意としている。
「待たせちまったようだな!」
「いや、みんな早く着き過ぎなだけだよ。約束は十一時だからね。まあ、でも大体これくらいの時間じゃないかな? 昨晩から居て爆睡しているドルグエスは論外として……さて、揃ったことだし起こしますか」
「――ッ!? ちょっと待ってください! それ絶対死んでしまいますって!!」
躊躇なく膨大な覇霊氣力を手刀に乗せる無縫に春臣達が恐怖を覚えて全力で無縫を止めようと動くが、それよりも早く無縫の手刀がドルグエスの脳天を叩いた。
「ううむ! 爽やかな目覚めである! おや、無縫殿、揃ったのか?」
「とっくの昔に揃っているよ、寝坊助」
「「「なんであれだけの攻撃喰らって平然としていられるのよ!!」」」
並の妖怪であれば喰らっただけで消滅するほどの一撃を浴びてなお、たん瘤一つできないドルグエスに鬼斬達と陰陽師達が戦慄を覚えたのは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます