第131話 大逆転デカパイ裁判


 その後も、愛莉と二人で話していたら、徐々にウォータースライダーの順番が近くなって来る。


「……お、もうそろそろか。人気のスライダーなだけあって、結構待ったな」

「そう? 愛莉は諒太と話してたから、あっという間に感じたかなぁ」


 あっという間って……。

 愛莉と変な約束を交わした後は、だいたい愛莉が一人でカブトムシの今後の育成方針について語っており、俺は相槌を打っていただけなんだが。


「それじゃ、そろそろ瑠衣たちを呼ばないとな」

「りょーかいっ」


 すると愛莉は徐に、自分の胸元を見下ろしながらその爆乳の谷間に手をススッと入れ、そこからスマホを取り出して……んんんっっっ!?!?


「おまっ! なんでそこからスマホ出て来るんだよ!」

「え? だってバッグに入れて持ち歩くの面倒だし」

「面倒とかの問題じゃないだろ!」


 そんな峰不●子みたいなことリアルでするやつ初めて見たんだが……というか普通の胸じゃできない。

 まさに選ばれしものだけが持つ、爆乳袋デカパイポーチ


「ご……ごほん。その……アレなんだが、そのスマホ、ちょっと借りてもいいか?」

「え? 別にいいけど……あ、もしかして愛莉の代わりにみんなに連絡してくれるの?」

「お、おう! その通り! 俺がやる!」

「もぉー、いくらずっと一緒の約束したからって、そこまで愛莉に優しくするのは過保護だよぉ……でも、ありがとね諒太っ」


 愛莉はやけに照れながら何の抵抗もなく、俺にスマホを渡してくれる。

 よく分からないが、都合の良いように解釈してくれたみたいで助かる。


(すまない愛莉。これは優しさなんかじゃない)


 シンプルにその爆乳に挟まれていたスマホに触ってみたい、という童貞らしい欲望が抑えられなかっただけなんだ。

 俺は(一抹の)罪悪感を覚えながらも手を伸ばし、愛莉からスマホを受け取……んんっっ!!


(な゛っっ! 生暖かいっっっ!)


 ずっと愛莉の爆乳にサンドされていたから、スマホはすっかり生暖かくなっており、さらに愛莉の谷間でじっくりと蒸されたからか、愛莉の胸汗でじんわり湿ってる。


 爆乳の乳圧と爆乳の谷間でムレムレの汗を帯びていても、スマホは普通に動く。

 さすがAppl●の技術力だ。


 この技術力のおかげで、愛莉はスマホを遠慮なく爆乳に挟んで持ち運べるわけで。

 Appl●には最上級の感謝をしなければならない。サンキュー、スティー●。


「ちょっ、なんで諒太が愛莉のスマホ持ってんの?」


 俺が愛莉の爆乳スマホの感触をじっくり味わっていると、突然、優里亜たちが戻って来た。


 や、やべぇぇぇえええ!!


「そろそろかと思って戻って来てみれば……ちょい愛莉。なんで諒太にスマホ渡してんの?」

「え? だって諒太が愛莉の代わりにみんなに連絡してくれるって言うから」

「は?」


 優里亜の鋭い眼光が俺に向けられる。


「え、えとその、これは100%善意でありまして」

「善意ぃ?」


 クソ暑いのに冷や汗が止まらない。

 完全に逆転裁●の終盤で追い詰められた犯人みたいな状態。


「あれれー? おかしいなぁ諒太くん。わたしたちへの連絡なら、どう考えても愛莉にやらせた方が文字を打つのは早いんだから、それって合理的じゃないよね?」


 瑠衣が怖いほどニッコリしながら徐々に俺へ近づいて来る。


「それに確か……更衣室で着替えをしていた時、愛莉は胸にスマホ挟んで持ち運ぶー、とか言ってたような……」


 瑠衣は俺の耳元に近づくと、小声でそう言った。


「完璧でしょ? わたしの推理」

「あ、はい」


 完璧な推理をみんなの前で堂々と言わないのは、せめてもの救いに思えた。


「諒太くん。すぐにスマホを愛莉に返しなさい」

「は、はいぃぃっ!」


 耳元で瑠衣に言われ、俺は即座に愛莉へスマホを返す。


「ふふっ……諒太くんったらほんと優しいよね? 愛莉の指が汗で濡れてたから、代わりに自分がスマホで連絡してあげようとするなんてー」

「えっ?」


 さっきの雰囲気とは打って変わって、瑠衣は俺のことを擁護してくれるので俺は驚きを隠せない。


「あっ! だから諒太は愛莉の代わりに文字打ってくれようとしたの?」

「へー、そうなん諒太?」


 愛莉と優里亜が俺に向かって訊ねて来る。

 まさか、瑠衣は……俺を助けてくれて……。


「諒太くん優しいですね! 私はてっきり愛莉たんが普段から使ってるスマホを触って興奮してるのかと思いましたよ!」

「いや、そんなの考えるの田中くらいっしょ」

「ちょっ! 市之瀬さん酷いですよー!」


 結局その場は田中がイジられたことで事なきを得た。

 助かったには助かったが……瑠衣は、一体何を考えて。


 そっと横目で瑠衣を見ると、瑠衣も俺の方をジッと見つめていた。


「あの、ありがとう瑠衣。助かった」

「どういたしまして。でも諒太くん? これに懲りたら、少しは自分の性欲を抑えること」

「わ、分かってる……反省してるから」

「ふふっ……まあ、どうしてもエッチな気持ちが抑えられなくなった時は……わたしに対してなら、遠慮しなくていいよ?」

「そ、それって……」


 瑠衣はウインクすると、そのまま3人の話に入って行った。


 愛莉といい、優里亜といい、瑠衣といい……自分なら良いって、どんだけ献身的なんだよ。

 俺は嬉しさのあまり涙が出そうだった。


(瑠衣が遠慮しなくていいって言うなら、自撮りの数、増やしてもらうとしよう)


「諒太くん諒太くん! 良かったらですけど、このウォータースライダー、二人でチューブに乗れるので一緒に滑りませんか?」

「え、俺が田中とスライダー……?」

「な、なんですか? 貧相な身体の人間と乗っても盛り上がらないって言いたいんですか!?」


 そんなこと言ってないんだが……被害妄想が過ぎるだろ田中。


「へえ諒太くんはそんなこと思ってたんだぁ。今日は何回わたしを怒らせれば気が済むのかなぁ?」

「おっ、おい田中! お前のせいで瑠衣がキレちまったじゃないか!」

「ちょっ! 私のせいにしないでくださいよ! 確かに黒木さんは……まぁ、腹筋と身長以外はそうわたしと変わらないかもですが! あの完璧美少女の黒木さんがそんなことでショック受けてるわけないじゃないですか!」


 こ、こいつ! ナチュラルに煽りやがって!


「ふふっ……田中さんって、日頃からテストで唯一わたしに迫って来るからウザいと思っていたけど、ここまでウザいだなんて思ってなかったなぁ」

「あ、あはは……ポキポキ指の音が……い、市之瀬さん! 助けてください!」

「いや、なんであたし巻き込もうとすんの! 田中が瑠衣怒らせたんでしょっ」

「もー! みんな仲良くしないとダメだよ!」


 さっきまでコミュ障発動してた田中が会話に入ったせいで、めちゃくちゃカオスになっちまった。

 やっぱ田中こいつ……ヤバいな。


「とりあえず瑠衣、落ち着けって。お、俺は瑠衣のことはスレンダーで綺麗だと思ってるし、バカになんてしてないから」

「ふ、ふーん……じゃあ、田中さんは?」

「そりゃ田中は……小学生ガキだろ」

「はぁぁあああ!?」


 今度は田中がブチ切れて俺の背中を殴って来るが、田中なので全く痛くない。


「じゃあ話を戻すが、このウォータースライダーが二人で滑れるとして、そもそも人数的に2-2で分かれても一人余るだろ? 俺は一人で滑るから、お前ら4人でコンビ組めば良くないか?」


 そりゃ俺の本望は、愛莉の後ろに乗ってデカパイポロリを観てみたいし、優里亜の前に乗って伸びて来た足の太ももに挟まれるトラブルが起こって欲しいと切に願っているが、ここでその願望を口にするわけにはいかない。


「えー! それじゃ諒太に悪いよ!」

「わ、悪いってなんだよ」

「あたしも愛莉に賛成。あたしは別に諒太とでも抵抗ないし、瑠衣もそうっしょ?」

「うんっ、わたしは大丈夫だよ?」


 そう言って瑠衣は焼けるように鋭い視線を俺に送って来る。

 な、なんだよその目つき……こっちは男やぞ。


「だからここは、グッチョッパーで分かれれば良くね? 上手いこと2-2-1になるまで繰り替えす感じで」

「うん。わたしもそれでいいよ」

「愛莉もさんせー!」

「ちょ、お、おい」


 マジかよ……じゃあ、ワンチャン俺が……この3人+田中の中の誰かと一緒に……。


「じゃあ行くよ。グッチョッパーで……っ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る