転生したら落ちこぼれになったけど生まれて初めての努力が楽しいから問題無し

カイ氏

第1話 退屈

 俺は天才だ、自惚れや自賛ではなく、幼い頃から言われ続けてきた事実だ。

勉強は何もしなくても常に1位、スポーツも基本的にトップクラス、オマケに顔も良い。

 そんな俺の境遇を見て周りは口を揃えて言う。

「羨ましい」 「ずるい」 「才能が違う」


 


 俺を羨む人間は最初からLvMAXのRPGをして楽しめる人間なのだろうか、結果を出す時に努力を必要としないため達成感が無ければ、価値も感じない。俺にとって賞賛の声はただの雑音、寄ってくる人間はただの虫、こんなに退屈に苦しんでいるのに訳の分からない嫉妬まで受けるという仕打ち、

「あーー、生まれ変われないかなぁ」

 そう言って俺は太平洋の日差しを一身に受けて目を閉じた。


 ニュースの時間です、日本の近海にあった天翔財閥の所有するリゾート島に隕石が落下しました。島は沈んでしまい天翔財閥は約5000億円の損害を被ったとの事です。また、夏休みにこの島でバカンスをしていた長男の天翔一あまかけはじめさん(16)が行方不明となっており現在も海上自衛隊が捜査を続けています。


 目を覚ますと見覚えのない寂れた校舎の中で黒板に向かって授業を受けていた。

 (な、ここはどこだ?そして僕は誰だ?)

 自分の姿は見えないものの、明らかに低い座高そして視界に映っているメガネが、明らかに自分が天翔一では無いことを説明する。


 キーンコーンカーンコーン、


 チャイムが鳴り休み時間になった、周りの生徒達がガヤガヤと話し出す中、俺は自分が何者かを把握するために机の中のプリントやポケットに入ってたスマホを見ていた。


 その時、何者かに背後から小突かれた。振り返るとメロンパンの様な手をした大柄な男がいた。

 

髪は金髪に染めており、耳にはピアス、腹は出ているものの全体的に体格はガッチリとしておりどう見てもガラが悪い。この体の元の持ち主の友達なのだろうか?


 この男の名前なんぞ知らないため彼にぽっちゃり君と名を付け、「ここはどこ?」と話しかけようとした時。


 ぽっちゃり君が先に口を開いた、

「おい失敗作、お前今日のテストでも0点だったな。体力テストも堂々の最下位だったし、人間向いて無いんじゃねぇの?」

 と、いきなりのdisと共に笑いだし、それと同時に彼の隣にいたもやしも爆笑する。


 どうやらこの体の持ち主の友達では無さそうだが、馬鹿にされた事なんてどうでもいい。コイツは今、それ以上に重要な事を言った。その事を確認したくて、俺は気づいたらにこやかに聞き返していた、

「え?、今なんて?」


 彼の思った反応と違ったのだろう、彼は一瞬驚いていたしかし、すぐに意地の悪い顔に戻り、

「聞こえなかったのか? 向いてねえんじゃねえのかって。さすが、失敗作は耳まで悪いのか」

 ギャハハと笑う彼らにもう一度聞く


「その前は?」

「あ?その前?今日のテストも0点で体力テストも最下位つった。」

「マジで!」

 思わずその肉まんのような手を握ってしまい気まずい空気が流れた。その直後


「じゃあ毎日のように勉強して、体力作りもしないとね!」

 そう言って俺は机の上の教科書を開いてみて驚いた。

「1ページを読むのが2秒以上かかる、次のページに行くと前のページの記憶が曖昧だ!」

 デブはブツブツ言いながら嬉しそうに教科書を読む俺に呆気に取られていたが、思い出したかのように


「おいコラテメェ、何勉強したんだ?」

「え?」

「購買でいつもの買ってこい!」

 この体の前の持ち主ならそれで伝わるんだろうが、あいにく中の人は別人のため、聞き返す、

「いつものって?」

「いつものはいつものだよ毎休み時間買いに行かせてただろうが、あんぱんと牛乳だよ!」

「張り込みでもするの?」

「良いから、黙って買ってこい!」

「はい,,,」


 軽い冗談だったのに顔を真っ赤にしながら怒鳴ってくるため少し落ち込みながら走り出す。


 が、走ってる途中で重大な事実に気づいた、この問題を解決するためにはやむを得ないが引き返すしか無い。俺は来た時同様に小走りでクラスまで戻って来た、デブはものの数秒で戻ってきた俺に心底困惑しているようだ、だがこちらの事情だって譲れない。


 俺は戻ってきて開口一番

「購買って何処にあったっけ?」

 と聞いた。そう、そもそもここには初めて来たため購買の場所なんて分からないのだ。

 デブはプルプル震えながら、

「テメェはどこ行く気で走ってたんだよ!」

 と、怒鳴って来た。

「いやー、ちょっと忘れちゃってさそこの細い人道を教えてくれない?」

 後ろでニヤニヤしていたモヤシはまさか話しかけられると思わなかったのか、目を丸くする、

 そしてデブが、

「細川行ってこい」

 と言うためしぶしぶ着いてきてくれた。


 道中で話を聞くとデブは大太と言いこの辺りでは有名な不良らしい、そんな話をしているうちに購買に着いた。

 おばちゃんに

「あんぱんと牛乳下さい。」

 と言ったところでお金を貰ってない事に気が付いた俺は


「細川君、大太君にお金貰って来るの忘れちゃた。」

 そう自分の失態を正直に報告すると、

 細川は何言ってるんだ?という表情で

「いや、いつも通りお前の財布から出せよ!」

 と声を荒らげる、どうやらコレはお使いではなく奢りだったらしい、

しかし自分の財布がどこにあるかなんて俺も分からないため、

「財布どこにあるか分からないんだ。」

「は?そんな訳ないだろ!」

「いや、本当にどっか行っちゃって」

「じゃあ戻るしかないだろ」

細川は不機嫌そうにそう言った。

「おばちゃん、ごめん財布忘れちゃった。」

 それだけ言って教室へ2度目の帰還を果たすと、


「財布無くしちゃっただぁ、くだらない嘘ついてんじゃねぇよ!」

「いや、本当にどこやったか分からなくて」

「お前、俺の事舐めてるよな!」

 その言葉と共に胸ぐらを掴まれた直後、、

キーンコーンカーンコーン

 チャイムがなり先生が入ってきたため、大太は舌打ちをしながら離してくれたが、去り際に耳元で、

「お前、放課後覚悟しとけよ」

 と不吉な未来を示唆しされた。

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