第27話


「誰……」


「私は、いや俺だったかな、だね」


「俺は、うそ。虚無の虚。だね」


「虚…?聞いたことない怪異だ」


「ああそうだ。私は、だった。だね」


「ダネダネいって……マカフシギダネ?」


「ペケモンの話しないで…」


「いや、それでいい。私は、空虚で、虚無な存在なのだから」


「怪異は基本的そんな感じですよ、虚さん」


「そうか。ところで、相方をしらないか?」


「知りません。どんな怪異なんですか?」


ほんとだ。実在の実。知らないかい?」


「知りません。では、これで」


扇くんが若干食い気味にそう言い残して、


私の手を引っ張って歩き出した。


少し強引な扇くんの力は、


思っていたより強かった。


***


「ねえ、夏ノ瀬さん。ほんとって知ってる?」


「___ううん、知らないー。なんで?」


「ううん、聞いたから。ありがとう」


「そうだー。『レトロ』に聞いてみたらー?」


「レトロ?」


「うん。この学校の情報屋なんだー。ほら、これー」


「サイト…、へえ、ありがとう。」


「なになに、レトロの話してんの?」


そう、私たちに声をかけてきたのは、


純白のようでくすんだ、灰色の髪をした男子だった。


確か……一年の時同じクラスだったような?


白灰しらはいくん____だっけ?


「うんー。レトロ、人気だよね。使ったことあるー?」


「うん、あるある。結構あるよ。俺レトロとめっちゃラインしてるし」


「ふうん、みんな使ったことある感じなんだ」


「知らなかったのー?ツキミちゃん」


「うん、全然」


「そうなんだ、月チャンは全然なんだ」


白灰くんは少し寂しそうな顔をする。


なんでだろう。


「で、昨日のは当たってたー?」


「え?うーん、どうだろう。当たってたかな…」


「ええ?!嘘!当たってなかった?!」


珍しく、大きな声を出す夏ノ瀬さん。


そんなに驚くこと?


まあでも、今まで必中の予言だからなのかな。


「あ、でも昨日…」


夜、扇くんとあったんだっけ、と言おうと思ったが、


誤解を生みそうなので、やめておいた。


そうだ、扇くんの目は赤色だったな。


じゃあ当たってるのかな。


「いや、当たってるかも____」


「いやいや、わざわざ考えなきゃいけないぐらい薄かったんでしょ、じゃあ当たってなかったってことだよ」


「そ…そう?」


「夏チャン、すげー焦るじゃん。どうしたの?」


「これは私の沽券に関わっちゃうからね。今日もあたってなかったら言ってね」





「今日は______白!!」





***


「やっほ、月チャン。一緒に帰らねー?」


「えっと…白灰なに君だっけ」


「忘れちゃったかー。まーいーけどね。俺は、露斗ろと。」


ああ、そうだった。


彼の名前は、白灰露斗。


「そうだったね。ごめん」


「いーよ。ところで、月チャンはレトロ使ってる?」


「ううん。というかレトロってなんなの?」


「レトロは、学校の内外の情報屋。なんでも知ってるんだぜ」


「へえ…なんでも、ねえ。」


じゃあ、虚のことも知ってたりして。


___なんてね。


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