二〇一七年十月二十五日収録・社長面談 最終面接 南唯奈

 南唯奈です。十八歳の高校生です。横浜の学校に通っています。あとは、何か必要なことある?

――いちおう最終面接なんだ。座って話を聞かせてくれ

 はい。わかった、わかった

――申し訳ないが動画を撮っている。あとで、人事が確認したいらしいい。しっかりとした受け答えはできるか

 子どもみたいに扱わないでよ。できる

――君はこの会社で真剣に働く気はあるか

 ある。私に向けられる目は厳しいかもしれないけど耐えるよ。それに悠真に頼るつもりもない

――それは頼もしいね

 逆に聞いていい。悠真が私を見限ったとしても、私はこの会社にいてもいいの?

――良いに決まっているだろ。悪いが私は仕事とプライベートを別に考えている。君にバザールホールディングスの入社を勧めたのは、何も、君と特別な関係にあるのが理由ではない。南唯奈という人材を獲得したいと思ったから君を人事に推薦した

 ありがとう

――だからこそ、君に覚悟があるのかを聞きたいんだ。これはバザーラホールディングスの社長として聞いている。社会では君の考えている以上に理不尽なことや、苦悩が起るものだ。逃げるなら今のうちだ

 こんな良い話をもらったのに逃げるはずないでしょ。覚悟なんてできてるよ。知ってるでしょ

――そうだな。では、違う質問をしよう。この会社に入社することになれば、君は私に対する様々な話を耳にすることだろう。例えば、道徳的に堕落した人物とみなされることもある。私自身も非難の的にさらされる時がある。他者の人生を狂わせ、嘲笑しているとまで言われるんだ。

 それが何。企業の成長のためでしょ

――頼もしいな。なら、私の心の安らぎの話だ。この仕事というものは、ひどくストレスがかかるんだよ。私には、君の知らない遊び相手がいくつも存在する。君の耳にも届くことになるだろう

 それは、嫌な話だね。悠真は、私だけじゃ、ダメなの

――申し訳ないが、今は無理だな。心を保つためにも、ささやかな心の癒しは怠れないんだ。君は公私を混同せずに客観的に見ることはできるか

 わからない。たぶん、できないかな。私はそこまで寛容ではない

――なら、考えておいてほしい。私は君を重要な社員の一人として迎えようとしている。その決断をした時に、私にも覚悟はあったんだ

 つまり、私と別れる覚悟ということ

――そういうことになるな。考えてくれるか

 そっか。わかった

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