真のカップル、偽のカップル

ザンコー

第1話 村瀬 晴太

俺たち2人はショッピングモール、その1番の大広間を見渡せる喫茶店に来ている。その理由は今日、ここに来ている例のカップルを見守ることにある。

御厨みくりやあおい』と『平田ひらたはるか』。昨年、高校1年生の時は同じクラスだったが、あまり目立つのを好む2人ではなかった。俺たちのせいで『アオハルカップル』なんて呼ばれて注目を浴びさせてしまったこともあったけどね…


「ねぇ晴太せいた。結構前から思ってたんだけどさ、ここで広間を眺めてたところであの2人が見えるとは限らなくない?」


「分かってないなぁ、いいか春華しゅんか?俺たちは別に尾行をしにきた訳じゃない。2人が仲睦まじくしてる姿を少しでも見られれば良いんだよ。それにお前だってその夏限定のスムージー?みたいなやつが飲めたんだから文句はないだろ」


「フラッペね。まぁ美味しかったからそれは良かったんだけど…でもかれこれ1時間半経とうとしてるんですけ…」


「あ!来た!」


「え!?どこどこ?」


「ほら、そこの靴屋の脇のベンチに」


「いたいた!しかも結構楽しそうにやってるじゃない」


様子を見るに結構な買い物をしてきて今は休憩中ってところか。あ、葵が出店に向かった。仲睦まじくしている姿が見れて何よりだ。


「それさえ分かれば今日は満足かな。にしても結構時間掛かっちゃったなー、退屈だったんだろ?1本飲み物奢ってやるよ」


「マジで!?実はもう1個飲みたいと思ってたやつがあったんだよね〜ごちになります!」


俺たちはカップルだ。『青春カップル』なんて呼ばれてる。だがこの関係は偽りだ。『アオハルカップル』を見守る為だけに作られた名目上のもの。

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