異世界化した現実世界でただ一人
ken
第1話:プロローグ
「もし自分が異世界に行ったら何がしたい?」と誰かが言ってきたことがあった。 勇者となってハーレムを築く? 冒険者として大金を稼ぐ? のんびりスローライフ? 色々なイメージがあるが、いずれも当てはまらなかった。
いや興味がなかったのかもしれない。 普通の生活に普通の恋愛そういったものに俺は憧れていたのだ。 自分の好みを見て一目ぼれして結婚して、暮らしていくために金を稼ぐ。 多分それが一番ムズイけど幸せなのだろう。
・・・・・そう、決して少し遠出した場所にいるちょっと体の大きい怪物を倒すためではない。 断じてない!!
「はぁ・・・・・、疲れたぁ~~~~」
食料の備蓄が少なくなり、野菜の確保に行こうとして大型のトラックジープを走らせていたらまさか‘‘バーバリアンオーク’’に出くわすとは思わず、とりあえず肉確保目的で自作のアイテムボックスから太刀を抜いて首を刎ねた。
よく異世界物のライトノベルでは心臓付近にある魔核を砕けばアイテムを残して消える描写は多いが、実際はそんなことはないものだ。 おまけにこのバーバリアンオークは頭部と心臓部それぞれに魔核を有しているため、どちらか一方を残しておくとすぐに復活するのだ。 だからまずは頭部と心臓部を分離してから頭部の魔核、次に心臓の魔核を破壊するのだが解体するときは心臓の魔核を残して解体してから除去する。
完全に動かなくなったのを確認してから、荷台にオークを載せて大きな川まで運ぶ。 運び終えてから装備をはいで血抜きを行っていく。 少しの間吊るして、血を抜き、抜き終わったら解体していく。
「とりあえず当面の肉不足は平気だな。 後は野菜か・・・・・」
解体が終わった俺は魔核を取り除いてオークのブロック肉をアイテムボックスに入れてから寄り道をして帰宅することにした。 当初の予定よりコースは外れてしまっているが問題はない。
のんびり運転していると助手席の方から大きめのいびきが聞こえてくる。
「ったく、人の気も知らないでまぁ。 のんびり寝てやがんなぁコンニャロメ」
助手席には普通より一回り大きい白銀の毛並みをした狼が一頭、優雅に寝ている。 しかも氷枕を作って。
こいつの名は【ハク】。 俺の相棒である、はずだ。
昼前に出た俺たちだが畑に着いた時にはもう夕方だった、とりあえずついた俺はハクを起こして野菜畑へと向かった。
季節は夏、上質な夏野菜が採れる。 大きさは普通のトマトと同じなのだが、顔がついていて食ってきそうな勢いはまじでやめてほしい。 他にも純銀並みに硬いナスや、取り方間違えたら爆発するオクラなど、普通の野菜はいずこへ? となること間違いなし。 この中で勇逸まともなのがマンドラゴラって・・・・・なんか泣けてくる。
「ほんと・・・・・、なんでこうなっちまったのかねぇ?」
そんなことをぼやきながらゆっくり収穫していくのであった。
ところで誰も気づいていないようなので言っておくが、こんなファンタジー要素込々の未開の地っぽいけどここは地球だ。 というか現実世界というべきなのだろうか? そしてお気づきだろうか? 今のところ人っ子一人誰も見かけていないのだ。
この辺りもたくさんの人がいたのだが、今では人っ子一人誰もいない。 いや訂正、一人おれ【工藤 大和】が残っている。 いったいなぜこうなったかは俺にもわからない。
2年前ぐらいになるだろうか? ある日人間は忽然と姿を消したのだ、ウイルスによる絶滅でもなければ災害、戦争による被害でもなく突然音もなく姿を消したのだ。 いったい何が原因か俺にはわからない。 というかそれを気にしている余裕はない、今俺の中にあるのは明日を生きることなのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます