逆分からせへの期待

「さて、何か弁解はあるか?」


写真を見せながらも、腕を組んだまあ姿勢を崩さないということは一応俺の話を聞く気はあるということか。


でも、写真に写っていることが事実なのだから、これ以上言うことはない。

強いて言えば、桐乃さんに無理やり連れ込まれたとかか?


「私の目にはどうしてもお前たち二人が入っているこの建物がカラオケには見えないのだが」


「確かに、こ、これはカラオケじゃないですねぇ...」


ホテル付きのカラオケ!というのはいささか無理がある。


「で、この施設は何なんだ?お前の口から私に説明してくれ」


凛華もさすがにこれがラブホだということは気づいているんだろうなぁ。

気づいているのにあえて俺に言わせるということは、俺がカラオケに行ったと嘘をついたことにも腹を立ててるんだろうな。


「こ、ここは、ラブホと、言いますか...」


「言いますか、なんだ?私にはラブホテルそのものに見えるが?」


「はい、ラブホテルです」


無駄な抵抗をやめ、観念する。

本当だったらもう少し抗って、凛華の怒りゲージを溜めたかったが、本能が無理やり俺の口を動かした。


「お前とあの女の二人がラブホテルに入った。それで、その後は?中で何していたんだ?」


そこまで言わすかね...


でも、実際何をしたかは大雑把には分かるが細かい部分は記憶が飛んでいるため俺には分からない、

詳細に覚えているのは桐乃さんだけだ。


「こ、これはマジな話なんですけど、俺実は部屋に入ってからあんま記憶がなくて、それで後で桐乃さんに訊いてみたところ、まぁ年頃の男女がするような行為をしていたそうです」


「なるほど、つまりあの女が一方的にそう言っているだけでそれが本当かどうかお前には分からないんだな」


「ま、まぁ」


パンツが湿っていたから90%本当だと思うが...


凛華もさすがに今のを桐乃さんのただの嘘とは切り捨てられないらしく、あまり楽観的な表情をしない。


「本来ならばあんな女の言うことなんて信じるに値しないが、場所が場所だ。一定の信憑性はあると言っていいだろう」


一定と言っているが、凛華自身それがほぼ確定ということは心では分かっているだろう。


「お前は私との約束を破り、クラスの打ち上げに参加し、そのままあの女と二人だけで二次会をすることになりその会場がラブホテル。その一室で体を交じらわせていたと。

まとめるとこういうことだな」


「はい...」


改めて俺の行動を見てみるともうバッドエンド確定の主人公の立ち回りやん。


...俺、マジで今から殺されるんじゃね?


いや、凛華が俺のことを上書きしてくれるという可能性も残ってるな//


その場合、凛華も桐乃さんと同じようなことするのか。


完全に俺が拘束された状態のままするという点においては、桐乃さんを上回っている。


あ、でもまだ俺にも"初めてな部分"はあるぞ。

もうチェリーではないというだけで、まだ俺のしょ


と、俺が凛華のこれからの行動を予想していると、凛華がまたもやポケットから何かを取り出す。

あれは...鍵か?


「ほら、腕を出せ」


凛華に言われた通りに腕を前に出す。


すると取り出した鍵で、俺の手錠を解く。


え、なんで外すの?

てっきり今から拘束されたまま無理やり押し倒されて襲われると思っていたのに...


そして今度は、勉強机に置かれている筆箱からハサミを取り出す。


ハサミ...ということはまさか殴打プレイの上を行く気か!?


いや、ちょっと待て、確かに刺されるDVもシチュエーションとしてありだが、それは完全にヤンデレSSの中だけじゃないのか?

実際にそんなプレイしたら快感を得る前に出血多量で逝くと思うのだが...


凛華はハサミを持ったまま俺の足の方へと移動する。


そして俺の足首にハサミの先を突き立てる...というわけではなく、俺の足を拘束していた足を切っていく。


あれ?俺ってマジで解放されるの?


凛華の取っている行動の意味が分からず、思考と体が硬直する。


「よし、これで体の自由は効くな。立って少し手足を動かしてみろ」


手も足も少しまだ拘束されていた痕が残っていて、動かすと若干痛むが、ほぼ万全の状態と言っていい。


「どうやら痛みはするが、それ以外はいつもと変わらないといったところか。それならばいいだろう」


なんだ?今から鬼ごっこでもするのか?

そして捕まったらその場で逆レイプ的な?


ならば、最初からわざと捕まるのではなくしっかりと捕まる場所は選ばなくちゃ。


凛華が俺を襲いやすいように、前に歩歌にディープキスされた路地裏とかであからさまにスピードを落とすか。

まぁそれまでに俺が凛華に捕まらないで置けるかという大きな問題があるが。


と、そんな想像とは裏腹に、凛華はちょうど勉強机の横の、隠すように置かれていた二つの竹刀を持つ。


「ほら、持て」


凛華がそのうちの一本を俺に手渡しする。


???????


状況が一切つかめず、とりあえず渡された竹刀を眺めていると、凛華が今から試合するかのような体勢をとり、俺と向き合う。


「今から私に一本取ったら、お前を解放してやろう」

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