首絞めプレイ

「...ただいまー」


そっと玄関のドアを開ける。


桐乃さんと二人で夕食を食べ、家に帰った時にはすでに22時を過ぎていた。


それにしてもインドカレーを食べたときの桐乃さんの顔は新鮮だった。

辛そうにしながら苦笑いをしている様子は一般男性が見たらその場で持ち帰りたくなるほどの衝動を引き起こすものだった。

俺としては自分が持ち帰られたいため、そういった興奮を覚えられなかったのが残念ではあるが。


「......」


足を忍ばせ階段に近づく。

奥のリビングの電気はまだついている。

明日も休みなため、二十二時だとまだ全員が起きていることだろう。


あわよくば、このまま気づかれずに二階へ上がれば...


「ずいぶん遅い帰りだな、清人」


良かったんですけどね...


凛華のその声が合図かのように、廊下の明かりがつく。

暗闇で気づかなかったが、凛華が階段の前に立っていて出待ちしていた。


うわ、目が完全に鞭状態に戻ってる。

もっと飴を俺にくれ。


「それで、今の時刻は分かるか?」


「えーと、二十二時です...」


「そうだ。二十二時過ぎだな?」


この事務的な会話の凛華はやばい。


「確かお前は今朝夕食はいらないと言い、私も納得した。であれば、いつものような時間帯に帰ってこないのは納得できる」


さすがにそこは納得してくれましたか。


「だが、二十二時に帰ってくるのは...いささか非常識だと、そう思わんか?」


「...思いません」


いや、思うわけないやん!

と口に出して言えるほど肝が据わっているわけない。


「まぁいい。二十二時に帰ってくるというのは、お前の常識が欠如しているだけのことだ」


その謎に納得するのやめてくれへん?

余計に怖いから。


「だが」


「ん?ぅあ!?」


当然首を掴まれ、反対の廊下の壁に叩きつけられる。


何これ?まさか俺の大好物なDV系女子?


「お前が私に嘘をついたのはそれだけの問題ではないがな!」


凛華の首を掴む力は締め上げるほど強いものではないが、かといって簡単に振りほどけるほど弱いものでもない。

逃げ場ないやん。


「う、嘘って何を」


ここまで行ってくるということは当然桐乃さんと出かけたことはバレているが、この状況でそれを認められるヤツおる!?


「今日私はお前に確認した。あの女と一緒に遊ぶわけではないだろうなと。その問いにお前はあの女がお前と遊ぶほど暇じゃないと言った」


そういえばそんなこと答えたような。


「では、なぜお前の服からあの女の香水の匂いがする?」


「え、香水?」


桐乃さんが香水をつけていたなんて俺も初耳だ。


「あの女はわが校の陸上部エースだよな。そうなると多少は汗をかくものだ。その汗のにおいを隠すために薄い香水をつけるのも無理はないだろう。現に前の合同の体育でのとき、あの女から少しではあるが香水の匂いがした」


ちょ、ちょっと...//

こんなときに俺得の話するなよ//


「なぜ少し顔を赤らめている?」


「いや、赤らめてなんていません」


すぐに妄想を取りやめる。


「話を戻すぞ。どうして今お前の服からあの女の香水のにおいがしている?」


「そ、それは。ちょ、ちょっと一緒に勉強したから...です」


ここまで来たらもう認めた方がいい。

もしかしたら、ここで認めたら少し凛華も怒りが鎮まるというあるあるの設定もあるかもしれな


「!?」


今度は首を掴んだまま、凛華の方に引き寄せられる。


「なるほど。お前はとんでもない愚かなことをしてしまったようだな」


言いながら、徐々に首を掴む手に力が入ってくる。


「ぐ...!」


って、もうこれ完全に首絞めてますやん!

これがあの首絞めプレイというやつか!


顔もあの同人誌で見る嗜虐的な顔をしているし。


「私はお前に飴を与えると決めた。だからこそ今日の外出だって許可した」


苦しい苦しい!

これはもう興奮している場合じゃない。


「だが、その結果がこれだ。私に嘘をつき、あの不吉な女に体を許した」


体を許しったって...まだそこまでは//


「どうやらお前に飴は必要なかったようだな。かといって、また鞭ばかり与えればお前が私の愛を実感するというわけでもなかろう」


なんかとんでもない告白されている気がするけど、今は首が苦しくてそれどころじゃない。


「まずはこのままお前を"落とす"」


それって気絶するまで首を絞めるってこと!?

下手すれば死にますよ!?


「安心しろ、目が覚めたら今度は私が口移しで飴を飲ませてやる」


その比喩表現めっちゃ気になるけど...そろそろ意識が...


だんだん視界がぼやけてきて、頭の中が白くなる。


「姉さん!何してんの!?」


もう意識を落とすと誘ったそのとき、リビングの方から歩歌の声がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る