潔癖症の松永先輩 スピンオフ 『星の光』


 松永先輩と見る三度目のオリオン座流星群。

 昨年と同じようにマンションの屋上でレジャーシートを敷き、並んで寝転び星空を見上げる。


 自然と触れる肩に、どちらからともなく繋いだ手を優しく握る。


「綺麗だね」


「はい。今年はいくつ流星を見れるでしょうか」


 三度目の正直とはこういうことを言うのだろうか。大学生の時も昨年も先輩とこうやって一緒に見ていたのに、こんなに穏やかな気持ちでいられるのは初めてだ。


「オリオン座の一等星のリゲルは850光年離れているんだ。850年前の星の光を見ていることになるんだよ」


「850年前……」


 ということは今見ている星の光は平安時代のものということだろうか。全く想像もつかないが、宇宙とはそれだけ壮大だということだ。


「逆に言うとリゲルが今の俺たちを見るのは850年後になるね」


「850年後なんてもう孫の孫の孫の孫の孫くらいの時代になってますよ」


 何代遡ったら850年になるのかはわからなかったが適当にたくさん孫と言ってみた。

 そんな私に先輩はいつものように優しくフッと笑う。



「俺たちは850年後も星の光に乗って一緒にいるかもしれないね」




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