『ホームシック・イン・マイハウス』(358文字)

家の中にいるのに、帰りたくなる。

ベッドで、眠れないまま寝転んだ時、帰りたくなる。

どこに帰る。

どこに帰るんだ。

帰るとこなんてないのに。

もう帰ってるのに。

秒針の音が、大きい。

耳がもげる。

ぬいぐるみさんに抱きつこう。

白いアザラシの、赤ちゃんのぬいぐるみを、胸にぎゅっと抱こう。

撫でよう、サラサラかつフワフワかつシットリした、温度のない毛並みを。

そう。

でも、あったかい。

ここが家だ。

帰ってきたんだ、家に。

いいなあ、家。

インドア派だね。

インドア派だ。

アザラシはどうかな。

うん。

インドアかあ、よしよし。

そうこうしてる間も、秒針は大きい音。

耳はもうもげ落ちて、枕の横に転がった。

目も酷い寝不足。

手指には、ぬいぐるみの温度。

これでいい、よね。

うん。

アザラシがかわいいんだから、いいんだよ。

そうだよね。

違う、かな。

秒針は心臓を速める。

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